馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

馬の臨床での「体力」

2009-09-21 | How to 馬医者修行

馬の臨床をやる上での「体力」について考えている。

「体力」とはあいまいな言葉で何を示すかわかりにくい。

                         -

トライアスロンの大会に出ていた頃、カーボパーティ(大会前夜に行われるパーティー。カーボローディング;炭水化物を食べて体にグリコーゲンを溜め込むことが目的なのでこう呼ばれる)で挨拶する地元のお偉いさんは、

「細い人が多くて驚きました・・・・あの体のどこにトライアスロンをする体力があるのかと・・・・」

などと言うが、超長距離スポーツをする上では余分な体脂肪や、ときには筋肉さえも重りにしかならない。

一般の人が体力がありそうとか、スタミナがありそうと思うのと実際は、ずれている。

                         -

大動物の臨床で言われる「体力」には「体格」のことも含まれているかもしれない。

身長が10cm20cm、体重が10kg20kgちがうと当然筋力も違ってきて、小柄な女性には8kg前後あるx線撮影装置をしっかり持ったり、ずっとぶら下げて仕事をするのは辛いかもしれない。

直腸検査や難産介助などで腕が届くかどうかは単純に腕の長さと関係する。

しかし、届きさえすればできるとか、どうにかなるというものでもない。

                         -

瞬発的な最大筋力ではなく、同じ運動を繰り返せるかという筋持久力が要求される作業もある。

一般的な作業ではないが、関節鏡手術で両腕を挙げていると腕を支える三角筋が辛いこともある。

スクリューを何本も捻じ込んだり、抜いたりしていると握力が萎えることもある。

筋持久力は鍛えることができる。同じ作業も毎日のようにやっていると慣れて楽になる。

                         -

1日中仕事をする「スタミナ」と、フルマラソンやトライアスロンのような持久力は重なる部分があるかもしれない。

日ごろ歩かない人は朝から晩まで立ったまま診療するのは辛いだろうが、3時間以上走り続けられるとか、8時間以上ハーハーゼーゼーやってられる人は大丈夫だろう。

マラソンやトライアスロンは年齢や才能よりも練習量がタイムを左右する。

ただし、アスリートは代謝亢進しているので空腹には弱いかもしれない(笑)。

食べないで競技するとか、寝ないで競技するなんてスポーツはほとんどない。

                         -

つまるところ、獣医師になる年齢には、いまさら身長は伸びないのだから、あとは鍛えられる部分を鍛え、衰える部分を衰えないように維持するしかない。

馬の臨床には「体力」は必要だし、長く続けるためには健康でもなければならない。

                         -

結局、体力、能力の3原則はここでも有効なのだろう。

  使えば、鍛えれば、発達する。

  使わなければ、鍛えなければ、衰える。

  使いすぎれば、鍛えすぎれば、壊れる。

それぞれ、「体力」維持しなきゃいけないし、鍛えておかなきゃっていうこと。

そして、壊れないように仕事しましょっていうことかな(笑)。

                          -

P9200865「体力」維持とこころの健康のために、P9200860

この山に登って、

こんな風景を見てきた。

P9200861