手術には、執刀医、麻酔医、外回りをする助手、術者を手伝う滅菌助手。4名以上いることが望ましい。
そう言っていると、手術室、麻酔器、人数がいなくて、開腹手術ができる施設は限られているのが現状だ。
しかし、私たちは二人で開腹手術を始めることもあるし、手術時間は早ければ2時間かからない。
昔、静脈麻酔で腸管手術に成功した話も聞いたことがある。
開腹手術しか救うすべがないなら、完全な条件がそろわなくても、獣医師にスキル(技術)があれば開腹手術に踏み切るべきかもしれない。
術者は腹腔臓器の位置、触感、正常・異状を熟知していることが望ましい。
余談だが、小腸にヘモメラズマと呼ばれる出血班ができていることがある。
これは、寄生虫による病変と考えられていて、腸閉塞を起こす直接の原因にはならず、外科的な処置は必要ない。
しかし、ヘモメラズマを知らず、「こういう病変があり、腸管切除したのだけど・・・・」と、たしかヨーロッパの獣医師がインターネット上で相談していたことがあった。
それなどは、術者に知識と経験がなかった例だ。
本題に戻ろう。
腹腔の左側には、胃、左腎、脾、左側結腸、小結腸がある(左図)。
右側には、肝、十二指腸、右側結腸、盲腸がある(右図)。
図はN.A.Whiteの名著 Equine Acute Abdomen から。
解説には「馬を仰向けにしたときでも、臓器は比較的固定されている」とある。
比較的 relatively というのが興味深い。
とんでもない位置に変位していて、何がどうなっているのか把握するのに時間がかかる症例の経験があるが故の記述かと考えるのは、深読みしすぎだろうか?
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1月末。某獣医師団体で、開腹手術実習が行われる。
興味がある方はこちらへお問い合わせください。
http://homepage2.nifty.com/uma-vet/index.htm
参加される方用に、急性腹症馬の腹腔探査 exploration を紹介していこうと思う。