馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

ステロイドと筋間膿瘍

2006-07-20 | その他外科

Photo_115 左の馬は、フレグモーネから化膿した。

腫れているだけではなく・・・・・・ブヨブヨ、グチュグチュ。

Photo_116 全身麻酔して、切開した。

クリーム状の膿があふれ出た。

肢がシュークリーム、いやエクレアかな?

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上の症例のようにフレグモーネ(皮下織の感染・炎症)が化膿することもあるし、筋肉の中に膿瘍ができることもある。たいていはエコー(超音波画像診断装置)で位置と大きさ、内容を見当を付けておく。針を刺して膿を吸引する。で、たいていは切開することになる。

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 気になっているのは、原因だ。半数以上の例では、副腎皮質ホルモン(ステロイド)が使われていた症例だった。

ステロイドは、腫れを引かすには有効だが、免疫能を抑制する。感染性の炎症に使うと、一時的にすっきりするが、うまくいかないと長期化、膿瘍化する。

競走馬の背筋、腰にステロイドを分注した後が膿瘍化した例。

育成馬の頚部に抗生物質とステロイドを筋注した部位が膿瘍化した例。

フレグモーネにステロイドを使い膿瘍化した例。

速く治す、見た目を良くすることが本当に大事か、害がないか、リスクがないか、良く考えるべき薬だと思う。

私はショック以外でステロイドを使うことはない。