チムどんどん「明石通信」&「その後」

初孫との明石暮らしを発信してきましたが、孫の海外移住を機に七年で区切りに。現在は逗子に戻って「その後」編のブログです

数字の読み方

2011-05-21 11:56:02 | ことば・あれこれ
5月21日(土)

 先日京都へ行った時のことです。北野白梅町から西大路通りを下がるバスに乗りました。「次は七条(シチジョウ)通りだな」と思っていると、下の動画のように車内案内放送が流れました。「七条(ななジョウ)」??

  

  バスを降りて、バス停を見ると
  

  堀川通りを過ぎたところで振り返ると
  
 道路の看板は「西大路七条(シチジョウ)」になっています。このほうが正しいと思うのですが。

  京都駅から北へちょっと歩いたところの「烏丸七条」では
  
 東本願寺のすぐ手前です。信号には「烏丸七条(シチジョウ」と表示されていますが。

  ここでもバス停は「烏丸七条(ななジョウ)」と
  


 「4」と「7」の読み方では、こういうことがよくあります。

 例えば、テイクアウト専門のお寿司屋さんに「三条、四条、五条・・・」というメニューがあって、「四条(シジョウ)一つお願いします」と言うと、「はーい、四条(よんジョウ)ですね。少々お待ち下さい」という声が返って来たりします。京都で「四条」を「よんじょう」という人は誰もいないでしょう。

 日本語で漢字を読む時には「音読み」と「訓読み」の二通りがあるので当たり前のことですが、数字の読み方も二通りになります。
〔音〕 イチ ・ ニ  ・ サン ・ シ ・  ゴ  ・
    ロク ・ シチ ・ ハチ ・ ク ・  ジュウ
〔訓〕ひ(とつ)ふ(たつ)み(っつ)よ(っつ)いつ(つ)
   む(っつ)なな(つ)や(っつ)ここ(のつ)とお

 日本人は無意識のうちに二通りの読み方を使い分けているのですが、どうも「4」と「7」の「音読み」を嫌う傾向があります。
 「マンションの4(よん)階、7(なな)階」・「45(よんジュウゴ)才、72(ななジュウニ)才」等々。

 説得力があるとは思えないのですが、一説に、「シ」音が「死」を連想させるので、いわゆる「忌み詞」として「シ」と「シチ」が避けられたという見解を目にしたことがあります。
 でも、「四月」「弦楽四重奏」「七分袖」「七面鳥」などを「よん・なな」と訓読する人はいません。一方で、「四死球」などと「シ音」に全くこだわっていないかのような野球の世界でも「四回表(よんカイおもて)」と訓読したりします。

 二つの数字のこのような読み方について、私は、どうも数学の世界での言い方が強く影響しているのではないかと思って来ました。例えば「4x+3y」の「4(よん)」、「7の3乗」の「7(なな)」。
 数学の世界では、「3+5(サンたすゴ)」のように、数字は音読みが原則ですが、「4」と「7」だけは訓で読みます。誰でも小学校の時から「4+7=(よんたすななは?)」と言われて勉強しているので、漢字を読む時にこの二つの数字が出てくると混乱してしまうのも無理はありません。
 そういえば、昔、数学の教師に「あんた方の言い方がおかしいから国語の教師が困るのだ」と冗談を言ったことがありました。

 それはともかく、若い人が、壺井栄の小説を「二十四(ニジュウよん)の瞳」と言ったり、赤穂浪士が「四十七(よんジュウなな)士」になったりした時に、ある意味では仕方ないのかなという思いがよぎってしまうのです。

 なぜ数学の世界で「忌み詞」のように「シ」や「シチ」と言わないのかということは、頭のどこかに引っかかって来たのですが、特にこれだという答えを持たないままになっていました。
 ところが、先日「七条通り」の読み方について、京都のバス会社に問い合わせたところ、妙に説得力のある回答が返って来たのです。

 「『一条(イチジョウ)』と『七条(シチジョウ)』・『四条(シジョウ)』と『七条(シチジョウ)』は発音が似ているので、お客様がお間違えにならないよう、当社では『シチジョウ』と言わずに『ななジョウ』と御案内しています」

 本音は「『シチ』だって『なな』だっていいじゃないか、なんでそんなことにこだわるのか」というところかもしれません。でも私は、それなりの理由があるにしても、由緒ある固有名詞の地名をわざわざ誤読するのはやめてほしいと思った次第です。

 ところが、バス会社の「誤解しやすい発音」という理由を、合理性を重視する数学の世界に当てはめてみると、「4」と「7」の読み方に「なーるほど、そんなところから来ているのかもしれない」と、つい納得してしまったのです。

 しかし、やっぱり音訓の区別を踏まえておかないと困る場合もあるのです。実は、KAZU君に数字を教えているのですが、幼児には「音訓」なんて分かりませんから時々混乱します。「7」を「なな」という時と「シチ」という時があるからです。

 KAZU君の数字の絵本。

  「1」は「いちご」が「イッコ」
  

  「2」は「にわとり」が「ニワ」
  
 以下、「さんま」「ゴリラ」「ろうそく」・・・などが登場してくるのですが。

  「4」は「しか」が「シトウ」とはなりません
  

  「7(シチ)」では「なす」が「ななこ」となってしまいます
  

 やはり「7」は「シチ」ではなく「なな」と読んであげないと訳が分からなくなってしまいそうです。でも、そうすると「もうすぐ『七五三』だね」という時に、もし漢字が出てきたら戸惑わないかなと心配です。

 小学生になると掛け算九九を覚えますが、九九は全部「音読み」です。「シシチニジュウハチ」という具合です。つまり、「シ」・「シチ」は「よん」・「なな」のことと気づくまではいくら覚えても役に立たないのです。そんなことは、たぶん自然にわかっていくのでしょうが、頭ごなしに覚えさせられるほうも大変で、九九の暗記から逃げ腰になって、算数嫌いになる子どもの気持ちもわかるような気がします。

 たしかに、自分の意思で勉学に取り組むようになるまでは、いろいろな言い方を機械的に覚えさせるしかないのでしょうが、段階的にそういう教え方も仕方ないとはいえ、ちょっぴり寂しい感じもします。

 そう、KAZU君の誕生日は7月4日です。「シチガツよっか」と言える日も遠くないはずなのですが、子どもはそういうふうに教えておけば、それで済んでしまうのでしょうか。


    三才になる七月が近づけり   弁人



 京都の話に戻ります。下京区の、京都駅から西のほうに「西七条○○町」という地名がいくつもあります。絶対に「ニシシチジョウ・・・」と言ってほしいのに、実際に地元の人に聞いてみると、「ニシななジョウ」と思っている人がけっこう多いのです。バス会社の利用者への配慮が染み込んでしまったのでしょうか、やはり納得できません。


 【補足】
 紛らわしい発音から生じる混乱を避けるということも、状況によってはやはり必要なようで、意図的に「七月」を「ななガツ」と言ったり、「27日」を「ニジュウななにち」と言ったりもします。
 小学生の頃、そろばんを習いましたが、「足すことのォー、『ふたジュウなな円』ではーッ」とかいう声が今でも耳に残っています。「読み上げ算」ということで、聞き間違いのない発音が大事だったのでしょうか。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする