レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

道化と王 イタリア捜査 荒野のホームズ

2016-08-23 17:55:53 | 
『道化と王』 ローズ・トレメイン
 図書館の新着図書。
 チャールズ2世の時代、この設定は私は初めて読んだ。
 主人公メリヴェルは職人の子で医者。父の作った手袋を王が気に入っていたことから、その息子に王から声がかかる。愛犬の病を治療したことで宮廷に出入りするようになる。「道化」とタイトルにあるけど、楽しませる存在ということであってそれが職業ではない。
 名だたる女好きの王は、愛人の一人であるシリアを、別の愛人の嫉妬からかばうために、カムフラージュとしてメリヴェルを名目上の夫にして屋敷等を与える。しかしシリアに彼も恋してしまい、それでクビ(?)。旧友ピアスの働いている精神病院で人助けに尽くすけど、そこでもまたやらかしてしまう。
 根が善人だけど失敗もくりかえすメリヴェルはあちこちで女遊びするし恋もするけど、真に愛した(恋ではなく)のはたった二人だと言っていて、それが、医学生時代以来の友ピアス、ストイック過ぎてうっとうしくもあるが誠実な人間、そしてもう一人は国王陛下、オーラをまとった気まぐれな遊び人、まるで逆の二人であるところが面白い。


「アジアミステリリーグ」
 上記サイトを参考にして、英米(+仏)以外のミステリーをあれこれ読んでいることはたびたび書いている。
 ドイツはもちろんとして、北欧はかなり読んだ。南欧をチェックしてみると、スペインは、数年前の「スペインイヤー」の際に、ミステリーに限らず図書館で手にできる範囲はほぼありったけ読んだので、未読のタイトルがほとんどない。それでいまリストにたくさん挙がっているのはイタリアである。


『8017列車』 アレッサンドロ・ペリッシノット
 地元図書館の棚にある。「イタリア捜査シリーズ」という肩書のついた別作家のものもある。歴史的な時代背景を持つものというくくりなのだろうか。
 本書は、終戦後の1946年が舞台。戦時中に起きた列車事故、多くの死者が出た惨事でありながら顧みられなかったこの事件に、元鉄道公安官アデルモが踏み込む。
 アデルモは、ファシストではなかったし悪事もやっていないが、その時代になまじ出世していたので戦後「パージ」にあっているという身の上。「イタリア捜査シリーズ」の『デルーカの事件簿』でもそういうのは出てきた。
 トリノの人間であるアデルモがナポリに来て、ドリノでは当たり前の、控えめとか静かにするとかいうしつけがここでは全然ないことを感じる(でも不愉快ではない)、初めてピッツァを食べて感激する、--そういう場面がかなり面白い。トリノといえば、イタリアの北西部、フランス占領下だった歴史もある。イタリアもいろいろ。
(かつてハプスブルク支配下で、と書いたけど、それは「トリエステ」だった、混同していた。)


スティーブ・ホッケンスミス『荒野のホームズ』『荒野のホームズ、西へ行く』  ハヤカワ・ミステリ
 アメリカ産。たしか、『文士、ホームズを愛す』という本で知ったのだった。
 カンザス出身のアムリングマイヤー兄弟、グスタフとオットー(ドイツ系)。病と洪水で家族を亡くしていまは二人きりのカウボーイ。赤毛の彼らに仲間が冗談で読ませた『赤毛連盟』、グスタフはすっかりハマってホームズ礼賛者になり、己も名探偵を目指してしまう。
 ユーモラスな語り口が楽しい。 
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