レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

男装in学年誌マンガの思い出

2007-04-15 06:56:16 | マンガ
『少女マンガジェンダー表象論』で、この本で触れられていない「男装」モチーフの作品はどんなのがあったかな、と考えると五指に余るくらいは出てくる。
 
 まずは、学年誌、「小学○年生」の類から。
 
 私は学年誌をいちどに何学年ぶんも買ってもらっていた。年子の弟もいるので一つ下のぶんまで、自分が1年生のときに「小4」まで買っていたかもしれない。次の2年生時には5年生まであがり、弟のぶんも入れて5学年ぶん読んでいたことになる。3年生で「小2」から「小6」。小学館では中学生用の雑誌は出しておらず、女の子向けには「女学生の友」通称「ジョトモ」が勧められていたが、さすがに私もそこまでは手を出さなかった。でも、4年生で「小3」から「小6」、5年生で「小4」から「小6」、というぐあいだったので、思えば小学館には貢献したもんだ。
 だから、下記のサイトのリストを見れば、懐かしい名前がずらずらと。
「学年誌のまんがリスト70年代」
男装といって真っ先に思い出すのは、71年「小3」、72年「小4」に連載された『オトコの子ちゃん』by大岡まちこ(原作辻真先)。主人公ミツル(この名は覚えていたのではない、上記サイトに書いてある)の父はわりに旧家の人で、結婚を反対されていたので生まれた子を男児と偽っているという、思えばムチャな設定だった。ミツルの自意識はしっかり女で、別に男っぽいという要素はなかったと思う。きれいで優しいので、女の子にモテたりもしていた。もちろん最後には真相は明かされたはずだけど覚えてない。むしろ、ミツルと仲良くなる威勢のいい男の子「木下藤吉」のキャラのほうが印象に残っている。こいつはミツルが女だと知ったけど、友達としての態度は変わらなかったな。
 当時まだ「てんとう虫コミックス」はなく、学年誌のマンガが単行本になることはめったになかった。だから、知らない間にこれがよそから出ているのを偶然見つけたときには驚いたものだ。
 同じ大岡まちこが73年に「小4」に連載した『あべこべ子ちゃん』は、男装ではないけど、おとなしい気弱な男の子と、強い女の子という設定なので関連はある。彼がいじめられそうなところに現われた彼女が、「わははは 売られたケンカをかわないヤツは男じゃないや」と自分がやっつけてしまう初登場だった。この二人はイトコだったかな?そんなふうに「男らしさ」「女らしさ」が「あべこべ」なことを身内には隠している状況だった。

いまはすっかり大ベテランの青池保子が、75年に「小学5年生」に連載していたラブコメ『キュートなニッキー』。西部育ちのオテンバ少女ニッキー、父が事故で死ぬ間際に、実は親子でなかったことを告げる。祖母だと知らされてニューヨークに会いにいった相手はガンコな女社長で、ニッキーを孫と認めない。社長は、娘夫婦が事故死した西部の土地を所有しているが、そこは石油が出るので石油会社の社長の息子リックーーギャンブル好きでプレイボーイーーはなんとか売ってもらいたいと説得中。そこで、ニッキーをダシに賭けを申し出る。本当に孫だったら土地を売る、偽者だったらリックはギャンブル一切やめる、と。こういう不純な動機で、ニッキーにちょっかい出し始めるリック。
 もちろんこれはハッピーエンドで、後半は西部に舞台が移る。保安官助手を努めるニッキー、そこに現われた空手家の日本人青年の名前が山田隆夫だったのは時代を感じる(当時そういう名の芸能人がいたのだ)。かわいいオカマ青年が出てきたりするのは、76-79年の『イブの息子たち』の萌芽といえようか。
 特に「男装」というほどのことはないけど、オテンバという点で。

 当時、『変身ポンポコ玉』という子供向きテレビドラマがあった。私は見たことないが、そういうのをマンガ化して学年誌で連載することが多かったので、見てなくても一応知っていることが多い(同じ話を各雑誌で違う作家が手がけているとかね。バレエもの『赤い靴』を私は3種類読んでたな)。 女の子と男の子が「ポンポコ玉」を手に入れて、その玉で体を交換できるという設定だった。この、男女が入れ替わる「ポンポコ玉」は、サトウハチローの少女小説『あべこべ物語』が元ネタだと思うが、両方ともさほど知られていないようだ。
 こういう物語があったことは、変身願望、性別越境への関心がやはりあったことの証拠だろう。
 そして、男の子のような女の子、その逆、という設定がしばしば見られることは、「らしさ」というカセがいまよりも強固だったことの表れか。
 どういうニュアンスで扱われていたのか記憶にないが、仮に作り手の意識が旧弊な「女の子らしさ」に傾いていたとしても、読者はそれに反した楽しみ方をして、「オテンバ」にこそ魅力を感じていたということも充分にありうる。少なくとも私はそうだった。
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