ビアンカ・ピッツォルノ『ミシンの見る夢』
イタリアの作品。19世紀~20世紀、語り手の主人公(名前は出てこない)は両親がなく、祖母に育てられる。祖母は腕のいいお針子で、「私」も仕込まれる。祖母の死後も仕事は順調に続けていく。
大きな雇い主の一人であるエステル嬢がとても素敵。金持ちの父を持ち、美しく積極的なエステルは侯爵夫人となって、激しく相思相愛だと思われたが、お産が難産となり、母子ともに助けられない可能性が見られる。その際、跡継ぎを優先して妻を捨てることを選んだ夫を許さず、女児を連れて家を出てしまう。離婚はできないので夫はエステルの望み通り、跡継ぎを得ることはかなわなかった。(彼は先に死亡し、エステルは再婚した)
金持ちの父親が頼りになるおかげであるのだけど、エステルはなにかと「私」の力になってくれる。娘の被雇用者にすぎないお針子に弁護士等貸してくれるこの父親も太っ腹だと感心する。
「私」と同じアパートの友達が病気になり、その娘を結局はひきとることにする。
「私」に貴族の子息が好意を示していて、「私」も本心ではひかれているけどそう易々と受け入れられない。そして彼の祖母である傲慢な老婦人は卑怯な妨害を加えてきたりする。
たくましく堅実に誠実に生きる「私」、多少の少女マンガ風味(『エマ』?)。コミカライズされても似合いそうだ。
同じ作家の『あたしのクオレ』(岩波少年文庫)も面白かった。女の子コンビが理不尽な女教師(という言葉は好かんけどこの際適切)に立ち向かい、でも結局先生に打撃を与えることにあまり成功していなかったことはものたりなく、でもたぶんリアル。
図書館で「乙女の本棚」というシリーズを知った。正方形に近くやや横長という変則的なサイズで、日本近代文学の短編や詩を絵本にしてある。わりに耽美調のイラストレーター。
私は実をいうと、いわゆる「耽美」タイプの絵はさほど好みではないのだけどね。このシリーズは既刊全部読んだ。
海王社から出ている「海王社文庫」は、日本近代文学を扱って、BL寄りのマンガ家の挿画で、(全部ではないけど)声優の朗読CDをつけるという趣向。こちらもこれから活用してみよう。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます