レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

英国紳士群像

2006-12-08 11:09:49 | 
「白水社の本棚」というお知らせペーパーが送られてくる。新刊案内に、国書刊行会で
「ウッドハウス・コレクション 第6回配本  サンキュー、ジーヴス』
と書いてあった。
 まえにここのコメントで、Aki君が推薦していたシリーズだ。英国貴族のボンボンのバーティが、うるさいおばさんたちや、迷惑な友人たちの騒動に巻き込まれ、有能執事のジーヴスに助けられる事件簿。あのあと、別シリーズの『エムズワース卿の受難録』も含めて、図書館で読めるものは全部読んだ。さしあたって、坂田靖子の絵を思い浮かべながら。無敵の執事ジーヴスは、年齢設定がどうなっているのだか忘れたが、うやうやしい言葉遣いを読んでいると、どうしても私の耳には『ちびまる子ちゃん』の花輪邸の執事「ヒデじい」の声が浮かんできてしまう。
 もっとも、このジーヴス、ファッションセンスについては主に対しても譲らず、たぶんクラシックな趣味と思われるが、バーティの服装などが気に入らないと、始めはやんわりと反対し、しかし静かな拒絶に移行し、そしてジーヴスの知恵によってバーティが危機から逃れると、若い頼りない主はその褒美のように執事の指示に従うというのがお約束になっている。 バーティも反抗を試みる
ことがあるが、結局は折れるのだ。
 そういえば、『エムズワース卿』ーー田舎暮らしの善良な紳士、愛読書は豚の飼育本、静かな生活を望んでいるのに、不肖の息子その他にかきまわされているーーでも、庭師にむしろ威張られている。
 なにしろ特殊な階層の人々の物語なので、極東の現代庶民が虚心坦懐に味わっていいのだろうかというためらい(つまり、エリートの世界をシモジモの者が覗いているようなものなので、先方では冷笑するのではなかろうかというような警戒心)は実のところあるのだが・・・でも楽しい。読んで損はない。作者自身がよく知っている世界を扱っているらしいので、現実味は相応にあるのだろう。
 
 英国紳士つながりで。

 まえに、『ホームズ』コミックアンソロジーに言及した。その2巻目が出た。
だいたいは原作通りだろうが、『赤毛連盟』、カモにされた質屋のおっさんに可愛げを付加したのはマンガでのアレンジ。

 坂田靖子の『バスカビルの魔物』という文庫新刊が目に入ったので買った。「ミステリマガジン」掲載の短編集だという。表題作は、ホームズと関係はないけど当然読者は連想するだろう。別の話で、配管工のコンビがにわか探偵を気取っていて、物好きな依頼人との会話で「父はみごとな赤毛でした」(中略)「犯人はまだらの紐だな」「全巻読み直せ!」なんて出てくる。
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