レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

『仮面の陰に』

2022-03-02 15:53:58 | 
 図書館の「新着案内」は毎日チェックして、読みたい本をメモしておく。それらをたまに再確認して、予約者状況を見る。貸出「可」になったので先月読んだのが

 ルイザ・メイ・オルコット『仮面の陰に あるいは女の力』ルリユール叢書 幻戯書房
 『若草物語』が知られるオルコットの「煽情小説」。自伝的要素のある『若草物語』で小説家志望のジョーが作者自身がモデルであることは有名な話。ジョーが通俗な話も書いていることは確かに出てくる。
 オルコットはアメリカ人だけどこの小説の舞台は英国。お屋敷に新しく来た若い家庭教師のジーン。家の次男が彼女に熱をあげ、当初は警戒していた長男もやがてはご同様。
 話の始めごろで読者の前には、ジーンの腹の内はけっこう怪しいのではと思わせる描写があり、それでも中々スリリングにひきこまれるものがあった。
 解説によると、作者はシャーロット・ブロンテに敬意を持っていたそうで、この話は『ジェーン・エア』の影響が明らかである、もっともジェーンよりはるかにしたたかで腹黒だ。
 
 『若草物語』のアニメは少しだけ見たことがある。ジョーが新聞社に小説を持ち込み、青年記者にけっこうバカにされる。あとでこの青年がジョーの家に、体験談をきく取材で訪問し、ジョーの語りを誉める。小説についても、身の回りのことを飾らない言葉で書くことを勧める。(手本としてマーク・トウェインの作品を紹介する) でも編集長はジョーの作品を気に入ったので採用された。
 ―――思うにこの青年はインテリで、こしらえものめいた小説なんか通俗だというタイプなのだろう。編集長のおじさんは大衆的な趣味で。
 このへん原作にあったろうか?ジョーはわりに年上のドイツ人ベア教授と結婚するが、彼がジョーの俗な小説を批判するのは映画にあった、これが原作にあったか記憶にはない。
 「もういいわ あんた(ジョー)の小説ってきまって最後にはみんな死ぬんだから」は『ガラスの仮面』の劇中劇のセリフ。
  価値を低く見られる「煽情小説」にも、表の作品と通底する要素はやはりあるだろうし、それなりに作者も楽しんだと思いたい。
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