レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

人名の呼び方

2006-09-07 12:59:23 | 歴史
「名前」とどちらに入れたものか迷うところ。歴史上のことなのでこちらで。

『神曲』の解説で、イタリアでは知名の士は姓でなく名で呼ぶ慣習があると書かれているのを読み、いろいろと合点がいった。なーるほど、だから、「ガリレオ」だし「ミケランジェロ」だし「ラファエロ」なのか。だとするとなぜ「レオナルド」だけ「ダ・ヴィンチ」という誤りが絶えないのだろう。
 古代ローマの男の場合、3つ並んだ名前のうち、最後の「家族名」をだいたいいまの姓のような感覚で使うことが多いけど(「カエサル」「キケロ」)、なぜ「プブリウス・ウェルギリウス・マロ」は「ウェルギリウス」が使われるのだろう?

 姓でなく名で呼ばれるのは王族である、だからナポレオンを成り上がりとして見下す人々は「ボナパルト」と呼んでいたという。
 私はハンパなフェミニストなので、女が下の名前(日本人の場合。姓でなく名前の意味)で呼ばれがちな傾向をけしからんと思っている。なるべくならば、「○○夫人」なんて言い方はしたくないのだが、昔の特に身分のある人の場合、男性名だってどこからどこまでが個人名なのか肩書きなのか、短くするならどこで呼べばいいのやらよくわからん。
 「○○夫人」と言われる有名人といえば、「自由よ汝の名のもとに~」のロラン夫人、美女の誉れ高いレカミエ夫人ジュリエット、『クレーヴの奥方』のラ・ファイエット夫人、『アンクルトム』のストウ夫人、『ドイツ論』のスタール夫人。有名の極めつけは「キュリー夫人」か。 せめて、わかりやすく短いこの人の名前くらいは「マリー・キュリー」で呼ぼうよ、と言いたい。ポーランド名で主張したい向きもありそうなのでそれはそれでいいけど。

 先日の「世界ふしぎ発見」はアイスランドとグリーンランドだった。あずみさんの紀行本などではお馴染みの、間欠泉とかサガ博物館とか登場。天地創造の場面のロケで使われたという巨大な滝、まるまる温泉だという湖(?)、壮観だ。
 ひっかかる点。「赤毛のエリク」の息子のレイヴが、のちにアメリカと呼ばれる大陸に行っていることは一部ですでに有名だけど、この男を「エリクソン」と称していたこと。「レイヴ・エリクソン」は、エリクの息子レイヴ であって、○○ソンは「父称」、(ロシア人の名前で名と姓の間にある○○ヴィッチ、○○ヴナみたいなもの) これは姓じゃないんだってば。修辞として、本人の名の代わりに「○○の子」なんて書くことは詩の上であるけど、この際それはへんだし。

 名前の習慣も文化圏で違いがあるから、よその国の人のことには思わぬマチガイや失礼があるかもしれない。寛大さと謙虚さがお互い必要だ。
ーーと、なんとなく教訓のようにシメてみた。
コメント
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