晴れ時々スターウォッチング

昔の出来事もたま~に紹介

ムーンボウのこと

2009年09月28日 | ムーンボウ(月光虹)
  月かげの虹
           堀口大學
天女の帯でした
昼の虹よりやや淡く
ほんのり ものうそうに
青い月明にてらし出された
黒い山のひだをたよりに
たよりない 五色の蛇の
ぬけがらでした

詩集「月かげの虹」あとがき(1971)
(堀口大學全集1 小澤書店 1982)

詩人の堀口大學(1892~1981)は二十歳のとき
ハワイで見たムーンボウの体験があったために
第一詩集「夕の虹」に続く第二詩集を「月かげの虹」と
名付けたそうです。
*「虹 その文化と科学 西条敏美著」より



私が初めてムーンボウのことを知ったのは約10年前…
科学雑誌に小さく載っていた外国で撮影された月光虹の写真、
それは夜の草原をバックにかすかに見える白い虹、色のない
白い虹は、まさに五色の蛇のぬけがらのようでした。

月光はたしかに太陽光ではあるが、満月といえども虹がでることが
あるのだろうか? 月夜の晩に虹が見える? 聞いたことがないなぁ~
などと考えたことを覚えています。

ところがムーンボウは実はかなり古くから知られている光学現象だったのです。
以下、前出の「虹 その文化と科学 西条敏美著」より抜粋

「古い記録としては、アリストテレス(前384~322)が「気象論」
第三巻、第二章の中で、「月による虹」として書き記している。

 虹は昼間生じるが、夜にも月による虹がある。もっとも、昔の
人々はそのようなものがあるとは考えていなかった。だがそれは、
夜の虹が希にしか起こらないためである。すなわち、起こっても
希であるので彼らは気づかなかったのである。
 そのわけは、暗闇のなかでは色が見えないこと、またその他多
くの条件が一致しておこらなければならないが、全部が一致する
のは一月のうちでもただ一日、すなわち満月の日でしかないこと
によるのである。そしてそれは、月が昇るときとしずむときに起こる
のである。それゆえ、われわれは50年以上の長い年月のあいだ、
ただ二回それに出会っただけである。
*「気象論」アリストテレス全集5 岩波書店 (泉 治典訳)

 アリストテレスは、二千年も前の時代にあって、これだけの
記述を残していることに驚く。ムーンボウは満月の日にしか見
えないということはないが、その日を挟む数日間に限られる。…」
ふむふむ、さすがアリストテレスですね~。分析が鋭いです。
「虹 その文化と科学 西条敏美著」は文化と科学の両面から
虹にアプローチしているので虹に興味のある人にはおすすめの本です。



時に我々は経験や知識と照らし合わせて物事を見ていることが多い。
夜の景色にとけ込むように広がる白色のアーチが目の前にあっても
ムーンボウのことを知らない人は、それがムーンボウだと気づくことは
ないだろう。私も初めてムーンボウを見たとき、すぐには気づかなかった。
目の前にある現象は何だろう?はて…、とそのとき科学雑誌で見た小さな
写真がフラッシュバックして現象のすべてを理解することができた。写真を
思い出さなければ、たぶんそのまま通り過ぎていたことでしょう。

*上記2枚の写真は2006年に撮影したムーンボウです。実は2006年10月8日は
1日に2回(2カ所で)ムーンボウを見たのです。それをカウントすると5年で3回見た
ことになるので…!? (わお!アリストテレスを超えちゃった~!?)

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