yoshのブログ

日々の発見や所感を述べます。

江頭に哀しむ

2010-10-01 06:29:52 | 文学
杜甫の「哀江頭」を紹介します。この詩は有名な「春望」と同時期に賦され、白楽天の長恨歌につながる滅亡の悲歌といわれます。唐王朝の滅亡に立ち会った杜甫ならではの生々しい迫力が感じられます。最後の二句は城が胡軍に占領され、土埃のために杜甫が方角を見失って呆然とした様が見事に表現されています。かつてこの詩を象徴する文字、即ち詩眼は「哭」であると教わりました。


哀江頭

少陵ノ野老聲ヲ呑ンデ哭シ           「野老」は、田舎おやじ
春日潜行ス曲江ノ曲(くま)
江頭ノ宮殿千門ヲ鎖シ
細柳新蒲誰為(たがため)ニカ緑ナル
憶フ昔 霓旌(げいせい)南苑ニ下リシ時
苑中ノ万物顔色ヲ生ズ
昭陽殿裏第一ノ人              楊貴妃のこと
輦ヲ同ジウシ君ニ随ツテ君側ニ侍ス
輦前ノ才人弓箭ヲ帯ビ
白馬嚼囓(しゃっけつ)ス黄金ノ勒(くつわ)
身ヲ翻シ天ニ向カヒテ仰ヒデ雲ヲ射ル
一箭 正ニ墜(おと)ス双飛翼
明眸皓歯(めいぼうこうし)今何(いず)クニカ在ル
血ハ遊魂ヲ汚シテ帰リ得ズ
清渭は東流シ剣閣ハ深シ
去住彼此(きょじゅうひし)消息無シ
人生情有り 涙憶(むね)ヲ沾(うるほ)ス
江水江花豈(あ)ニ終(つひ)ニ極マランヤ
黄昏(こうこん)胡騎 塵(ちり)城ニ満ツ
城南ニ往(ゆ)カント欲シテ南北ヲ忘ル

    石川忠久著 「NHK漢詩紀行」NHK出版
コメント
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