東京・上野公園に西郷隆盛の銅像があります。1898年(明治31年)に薩摩出身の吉井友実(よしいともざね)の発案により立てられました。彫像は高村光雲、犬の彫像は後藤貞行、鋳造は岡部雪聲、西郷さんの愛犬は「ツン」という名のメスの薩摩犬でした。この犬は、兎狩りのお供にと、薩摩の前田善兵衛からやっと譲り受けた犬です。薩摩川内市にはツンの銅像があります。明治初期のある日、明治天皇が、西郷の肥満を心配し、東京大学の教授であったお雇いドイツ人医師、テオド-ル・ホフマンを西郷邸に派遣しました。医師は食事療法と散歩を勧めました。西郷は散歩を天皇の指示と思い、日課に散歩を取り入れました。今日でいうダイエットです。西郷は、渋谷を出発して代官山から駒場に至って渋谷にもどる合計4キロメ-トルを散歩しました。愛犬は西郷どんの散歩のお供でした。ところが、西郷どんの愛犬はツンの他にもいたと、作家の柿川鮎子氏が取材して発表しています。それは洋犬で、元徳川将軍家で「お虎」と呼ばれていたメス犬です。徳川将軍家の犬が西郷どんの愛犬になった経緯は残念ながら私には不明です。また、犬の彫像を作るにあたり、洋犬より薩摩犬がふさわしいとされ、急遽、彫像のモデルが探されて、オスの薩摩犬が選ばれました。それが薩摩藩士の子弟で、後に海軍中将になった仁礼景範(にれかげのり)の娘、春の愛犬の「サワ」でした。西郷どんと関係のある犬は、ツン、虎、サワの3匹がいたことになります。春は、後に総理大臣になった斎藤實(まこと)に嫁ぎましたが、訪れた賓客に愛犬を披露したそうです。
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