yoshのブログ

日々の発見や所感を述べます。

都ぞ弥生

2012-01-04 06:04:20 | 文化
名歌「都ぞ弥生」は明治45年4月の北大予科の記念祭で発表された寮歌です。恵迪(けいてき)寮は札幌農学校開設時に設置された寄宿舎を前身としています。明治40年に予科が設置された時に、「書経」の「迪(みち)に恵(したが)うは吉(よ)し」を出典として命名され、開寮されました。
「都ぞ弥生」の作詞は予科二年生の横山芳介、作曲は予科三年生の赤木顕次です。横山と赤木は喧嘩をしながら推敲し、それに熱中し過ぎて六月の学年末試験に落第し留年となりました。他の多くの寮歌は七五調ですが、「都ぞ弥生」は、当時はまだ少なかった八七調の雄大な歌詞です。以下にそれを記します。

都ぞ弥生の雲紫に 花の香漂ふ宴の筵
尽きせぬ奢りに 濃き紅や その春暮れては移らふ色の
夢こそ一時青き繁みに 燃えなむ我が胸想ひを載せて
星影さやかに光れる北を 
人の世の
清き国ぞとあこがれぬ

豊かに稔れる 石狩の野に 雁音(かりがね)はるばる沈みてゆけば
羊群声なく牧舎に帰り 手稲の嶺 黄昏こめぬ
雄々しく聳ゆる 楡(エルム)の梢 打振る野分に破壊(はえ)の葉音の
さやめく甍に 久遠の光
おごそかに
北極星を仰ぐかな

寒月懸かれる 針葉樹林 橇の音氷りて 物皆寒く
野もせに乱るる 清白の雪 沈黙(しじま)の暁 霏々として舞ふ
ああその朔風 飄々として舞う
荒(すさぶ)る吹雪の 逆巻くを見よ
ああその蒼空 梢聯(つら)ねて 
樹氷咲く 
壮麗の地を ここに見よ

牧場の若草 陽炎燃えて 森には桂の新緑萌(きざ)し
雲ゆく雲雀に 延齢草の 真白の花影 さゆらぎて立つ
今こそ溢れぬ 清和の光 小川の辺(ほとり)をさまよひ行けば
美しからずや 咲く水芭蕉 
春の日の 
この北の国 幸多し

朝雲流れて 金色に照り 平原果てなき 東(ひんがし)の際
連なる山脈 玲瓏(れいろう)として 今しも輝く 紫紺の雪に
自然の芸術(たくみ)を 懐かしみつつ 高鳴る血潮の 迸りもて
貴とき野心の 訓(をし)へ培ひ
栄え行く 
我等が寮を 誇らずや


下道氏曰く、「八七調は重苦しいと言われていましたが、この歌では重々しい北海道の情感を表現するのに成功したとも評されています。美しくも雄大な北海道の四季を描いたこの詩は、北海道の魅力をあますことなく詠い上げています。」

下道 郁子 学士会会報U7 2011年12月
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする