山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

九州・山陰他エリアくるま旅でこぼこ日記:第19日

2010-04-24 04:52:23 | くるま旅くらしの話

〔これは6年前の記録です〕 

第19日:12月05日(日)

行程:山香町里の駅:風の郷~熊野磨崖仏~真木大堂~冨貴寺~長安寺~両子寺~あかねの郷温泉〔泊〕  <45km>

人騒がせな一夜が明けると、何と快晴のいい天気だ。昨夜は九州よりもむしろ関東地区に大風が吹いたらしく、千葉や都心では風速30mを超えるほどだったというニュースを聞いた。それなのに何人かから心配のメールを頂いたのは嬉しい。ありがとうございました。遠く離れていても自由に交信が可能な時代に生きていられることは幸せである。

今日から国東半島を廻ることにしているのだが、実は何を訪ね、どこを回るかについては何も決めておらず、よく分からないのである。昔熊野の磨崖仏と真木大堂だけは訪ねたことがあるが、大忙しだったのでよく覚えていない。里の駅の案内パンフレットなどを見て、やはりお寺や石仏など国東は御仏巡礼の里かなと思った。それで思いつくままにお寺などを見て歩くことにした。

先ずは近くにある熊野磨崖仏を訪ねることにする。5分で駐車場へ到着。ここは昔買いたてのビデオカメラを肩に担いで(当時はハンディタイプなどなく、今から見ればバカでっかい機材だった。子供のたちの姿をVTRに納めようと考え大枚をはたいて、思い切って1セットを購入したのだった)、充分に充電した筈のバッテリーだったのに、長い坂を登って磨崖仏を撮りかけていたら2分足らずでバッテリーがなくなって撮影不能になり、悔しいやらがっかりするやらの思いをしたことだけを覚えている。さて、今日は大丈夫かな? 今は動画はやらないことにしており、専らデジカメだけである。

昔のことを思い出しつつ坂道を登り、急な古い石段をゆっくり登ってゆくと2体の磨崖仏があった。昔のまんまだったが、大日如来像の方は何か黄色いペンキのようなものがお顔にかかっているようで、心配した。しかしその表情はペンキをかけられようと何をされようと微塵の揺るぎもない深い深い想いの中にあるように見えた。

   

熊野磨崖仏:大日如来。お顔の所々が黄色っぽく汚れているのが残念である。

ここの不動明王は実に優しい、親しみ易い表情をしておられ、とてもあの恐ろしげな顔の多い不動明王さんとは思えない。国東の里で彫っていると、彫り手は優しい気持ちになって、いつの間にかこのような作品をつくってしまうのであろうか。国東は剥き出しの岩山などがたくさんあって、厳しい地形の場所も多いように思うのだが、トータルしてみれば、穏やかな風土環境にあるのかもしれない。今回は昔と違って、じっくりと仏像に思いを馳せることが出来た。

   

熊野磨崖仏:不動明王。ここの不動明王は、慈悲顔の表情で造られているとか。人が本当に畏敬を感ずるのは、慈悲顔の方でなければならないのかも知れない。

真木大堂へ。ここにはその昔この辺一帯のお寺(六郷満山65ヶ寺)では最大のお寺があったとか。平安時代に栄えたらしくその後大伽藍を火災で焼失し、江戸時代に大堂のみが再建されたということである。有料なので、中に入るのは邦子どのに任せて拓は周辺を徘徊(?)する。田んぼの畦道にスミレの花が咲いていた。暖かい里なのであろう。

   

真木大堂に参詣する善男善女。どちらかといえば、善女の方が多いのは、女類の方が元気で、心豊かなのかも。大堂とは言い難い規模となってしまっているのは淋しい。

次は冨貴寺へ。山の中といってもさほどに急峻ではなく、丘を少しきつくした感じの地形が続く。冨貴寺も由緒ある寺らしい。ここも有料なので拓は外でウロウロしながら待つ。いい天気だ。ジンマシンがまだ完全に消えてはおらず、拓の調子は今一で、お寺さんの見聞もあまり積極的ではないが、邦子どののエネルギーは見上げたものだ。小さな寺を1時間近くも歩き回って見聞を深めて来たようである。 (後での話では、富貴寺は国宝であり、邦子どのは国東といえば何事をさておいてもこのお寺だけは訪ねたいと思っていた所だとか。なるほど。了解。)

   

富貴寺山門。名刹の風格のある造りで、自ずと歴史の重さを覚える。

   

富貴寺境内の大堂。数少ない平安時代建築の一つで、国宝となっている。古の人びとの静かな仏への思いが籠められた建物である。

次は両子寺へ向かうことにしたが、途中長安寺の案内板があったので、そちらへも回ってみることにした。国東は地図では遠いように見えるが、車だと隣のお寺まですぐに着いてしまう。自転車で廻った方がベターかもしれないなと思った。但し季節はやっぱり春が良かろう。

長安寺はお寺専用らしいかなりの急坂を登った所にあった。ここも如何にも歴史を感じさせる雰囲気のお寺だった。無料なのがありがたい。大黒さんらしい年配のご婦人が、石楠花の苗木を育てて販売されているらしく、境内にたくさん並べてあった。ここは花のお寺として有名なようだ。石楠花のほかにもつつじ、つばき、アジサイなどの木々がたくさん境内を埋めていた。

   

長安寺の鐘楼。背景の紅葉が晩秋の国東の風情を静かに彩っている。

本堂の外れにまだ幼さの残るワン公が寂しそうに繋がれていたので、近づいて頭を撫でてやったら、嬉しくて嬉しくて全身を挙げての大騒ぎだった。暫くして離れようとすると大泣き(鳴くではないのだ)して、行かないでくれと懇願()されて参った。犬にこんなに情愛を感じたのは久しぶりのことである。邦子どのは彼方の方を歩き回っており、拓の世界とは無関係。

坂を降りて両子寺へ向かう。国東の山中の道は四国の巡礼の道に似ている。なだらかな曲線の多い細道だ。いいなあと思いながら暫く行くといきなり脇道から車が飛び出してきた。驚いて急停車。見ると50歳代のおばさんが運転している。一時停止など全くするつもりはないらしい。あまりにひどいので向こうも反省して頭でも下げるのかと停まっていたら、全く反省の考えなどないらしく、手で先に行ってくれという合図である。一体どういう感覚なのであろうか。旅に出ていろいろな地方でいろいろなドライバーに出会うが、地方へ行くほどこのような人が多くなるようだ。しかしこのオバサンはその中でも極めつけの低レベルである。この人は、これから先必ず車での事故事件を起こすのではないかと思った。仏の里には、その陰に仏顔をした鬼が住んでいるのかもしれない。

   

子寺(ふたごじ)の景観。国東のお寺の中では中心的な存在であるらしい。それなりの雰囲気を持ったお寺である。

両子寺に到着。このお寺は国東半島の最高峰両子山の麓にあって、一番上の位のお寺らしい。「六郷満山総寺院両子寺」とあり、参観は有料である。他の寺より少し参詣者が多いようである。しかし拓にはこのお寺は勿体ぶってケチな印象を受けた。寺の私有地に入るなとか、エンジンを切らない車は下山させるとかの警告板が目立つ。勿論そのような違反行為をする奴は言語道断だけど、お寺さんが頭ごなしにやたらに警告を発しているような雰囲気は、やだねえ。従って邦子どのだけが参詣する。坊さんたちはケチらしいが、境内にいた1匹の太ったトラ猫は妙に愛想があり、駐車場に入ってきた車から人が降りるたび近寄って挨拶を続けていた。それをじっと観察していると、猫という奴もちゃんと人を見て行動しているらしく、変な奴にはそっけなくしているのがわかる。こいつの品定めでは、一体俺はどういうレベルなのかな、などと考えている拓であった。

   

駐車場の下の方に参道があり、車を置いて戻ってここに来ることとなった。来た甲斐がある景観である。ここでもむきだしの石造りの阿吽像が、橋の向うで迎えてくれている。国東は石と関連の深い仏像が多い。

邦子どのが戻って、近くにある「あかねの郷」という温泉施設がある所へ行くことにして出発。ここを今日の宿として考えている。この辺は結構標高があり、道もかなりの山道が続いている。あかねの郷は両子山を取り巻く道の、両子寺の反対側にあり、地図では赤根温泉と記されている。左回りの方が少し近道だと思って行ったのだが、これがとんでもない山道で、普段は一般の車は殆ど通らない道らしい。それを知らずに入ってしまった。台風などで荒らされた樹木が倒れ掛かっていたりして、前途を危ぶみながら辛うじて難に会わずに通り抜けることが出来た。急がば回れというが、その通りだった。しかし、初めての人には、もっと分かり易くガイドしてもらいたいものだと思った。

あかねの郷は、山香温泉のあった風の郷に似た施設のようだ。急峻な山の中腹に湧き出た温泉をもとに施設を造ったらしい。駐車場も平らの箇所が少ない。受付で駐車泊のことを聞くとOKして頂いた。よかった。鄙びた山の湯へゆっくり浸かる。風邪薬の薬禍の発疹も殆ど治まって、やれやれという感じだ。小さな露天風呂からの眺望も素晴らしい。磨崖仏を彫ってみたくなるような剥き出しの岩崖が木々を分けて何ヶ所か見える。外国からの青年が二人風呂に入っていた。声はかけなかったけど、いい旅をしているなと思って少し嬉しくなった。日本の若者も、どこかでいい旅をしている奴がいるに違いない。その様な若者がもっともっと増えて欲しいと思う。風呂から出て、一杯やって、今日も少し早めに寝ることにしながら、それでも世界遺産のVTRなどを見てしばし時間を過ごす。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 九州・山陰他エリアくるま旅... | トップ | 馬骨桜咲く!  »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

くるま旅くらしの話」カテゴリの最新記事