山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

友あり遠方より来る

2009-10-15 05:47:51 | くるま旅くらしの話

今日(10/15)は嬉しい日である。「友あり、遠方より来る、亦(また)楽しからずや」の日なのだ。これ、何の文句だったか出典を忘れてしまった。意味は、親しき友人がいるのだが、遠く離れて住むその友人がやってくるのだ! こんな楽しいことがあるのだろうか!もう、浮き浮きしてたまらない!というような意味だと思う。私は今、その古事の箴言(しんげん)と全く同じ心境である。

大阪美原区在住のTさんご夫妻が、北海道のくるま旅くらしを終えて、帰途の途中に拙宅に寄って下さるという。いつもだと首都圏の交通事情等を勘案して、フェリーや日本海側を通るコースを選択されるので、寄って頂けなかったのだが、今年は川越の祭りの見物を予定されており、ようやく念願が叶うこととなった。嬉しい。

関西方面へ出向いたときには、いつもといって良いほどTさん宅をお邪魔しており、その都度大変お世話になっている。この頃は、関西への旅の楽しみの一つが、Tさん宅に立ち寄らせて頂くことになってしまったようだ。というのも、ご主人の木工クラフトの作品と奥さんの手芸工作の作品を見せて頂きながら、お互いの旅の思い出などのあれこれを語り合うことが無上に楽しく、嬉しいのである。

Tさんご夫妻と知り合ったのも、数年前の北海道の旅先である。旅先での人との出会いはたくさんあるけど、それが更に発展してお互いの住いを訪ね合うところまで行くというのは少ない。知り合いのどなたとでもそのようなお付き合いが出来れば、これはありがたいというべきだと思うが、現実にはなかなかそうはならないものである。無理にそうなろうとしても、何かが足りない場合は、実現が難しいのである。それが何なのかは良く判らないけど、お互いの心の琴線に触れるものがないと、このようなお付き合いは出来るものではない。

Tさんは私とは全く違う世界で人生を過してきた人である。鉄工所経営という物づくりの世界で苦労されて来ておられ、私のような口先だけ(?)の世界でサラリーマンをやって来た者とは、その暮らしの中身が異質だった。同じなのは、くるま旅の中に人生の本当の楽しみを見出そうと、還暦を過ぎた頃から旅くらしを本格化させたということだろうか。

普通は似たような経歴、経験を持つ者同士の方がお互いを理解しやすく、仲良くなり易いのかも知れない。しかし全く違うが故にお互いを尊敬できるということも、世の中にはあるようで、人間関係というのは不思議である。私は勿論、Tさんのものづくりに対する魔法の頭脳と手(技術・技能)に心底敬服している。Tさんは今、木工クラフトの世界でその魔法の実現に取り組んでおられるのである。

木工クラフトや手芸といえば、家の工房や部屋に籠もって一心不乱に創造の世界に時を忘れるというイメージがあり、旅とは無関係のように思われるかも知れない。でもTさんご夫妻の場合は、違うのである。旅が重要なのだ。木工や手芸の世界を、くるま旅をすることによって育てておられるのである。旅の中でその創作のネタや材料を集める楽しみ、それを旅の中でつくる楽しみ、更には家に持ち帰ってじっくりと創造する楽しみ、そして作ったものを通して近隣や子どもたちなどとの交流を楽しむという、楽しみの拡大循環を図っておられるのである。旅を通して、ここまで人生を楽しんでいるご夫妻を、私は他には知らない。

Tさんは昨年北海道の旅先の体験工房に1ヶ月以上籠もって、SL模型の大作に取り組まれた。その作品は、実に精緻を極めた見事な出来栄えだった。木工クラフトを始めてからまだ経験の浅い人の作品とはとても思えない。長い間金属加工に取り組まれていたという物づくりの精神が活かされているのは間違いないと思うけど、金属とは異質の温かさのようなものが木材にはあり、Tさんはそれを引き出そうとされているのが良く解る。SL模型の部品を作るにあたっても、どの木材で何を作るかに工夫が籠められており、材質や木目などに相当に気を使っておられるのが判るのである。いわば木と対話しながら、材料と対話しながら製作に取り組まれているのだ。

   

Tさん製作のSL模型。時には、実物を見学に行ったりされて、図面も実測に基づいいるほどの熱意をこめて作られている。(10.16.2008 Tさん宅にて)

   

奥さんの手芸作品の数々。この他にも古布のリメイク作品や布地草履の製作など、広範囲の手芸工作に励んでおられる。(10.16.2008 Tさん宅にて)

今年は旅の途中で、その時は単身だったご主人に会うことができ、持参された幾つかの作品を見せて頂いたのだが、益々腕を上げられ、作品に温かさが加わっただけではなく、作品そのものが静から動へと変化していることに驚かされた。ただの置物ではなく、人が力を加えれば、それに反応して動くという作品に変化していたのだった。お会いしたのは8月半ば頃だったから、あれから1ヶ月以上かけて幾つかの新しい作品が生まれているに違いない。

今日はとにかく楽しみである。友あり遠方より来る。亦楽しからずや。である。

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2 コメント

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Tさん製作のSL模型に感嘆 (nobu)
2009-10-15 09:28:01
おはようございます。

Tさん製作のSL模型に感嘆しました。木工クラフトと云えば、オモチャの列車や電車、動物の模型、小家具程度に思っていましたが、写真を拝見して驚きました。世の中にはすごい人がいるもんですね。改めて木工クラフトの世界を見直しました。

余計なことですが、「友あり、遠方より来る、亦(また)楽しからずや」の出典を、小生も気になって調べてみました。
孔子の言葉で、論語の最初にある「学而篇」の一部で原文
は 「有朋自遠方來、不亦楽乎」だそうです。
論語・学而篇は中国語原文でわずか32文字で、日本語の書き下し文例は以下の通りだそうです。
『子曰(のたまわ)く、学びて時に之を習う。また説(よろこ)ばしからずや。朋(とも)あり、遠方より来たる。また楽しからずや。人知らずして慍みず(うらみず)、また君子ならずや。』……朋は学問の友のこと

全く勝手なおせっかいで失礼しました。小生も気になって、折角調べてみましたので追記しました。




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ありがとうございました (馬骨)
2009-10-16 04:52:39
nobu様 
出典、横着して後回しにしてしまいました。やっぱり論語だったのですね。書棚の直ぐ手の届くところに本があるのに、です。友なのか朋なのかで迷った挙句、Tさんの場合は友が相応しいと、この字を使いましたが、孔子様の場合は、朋が正しいのだと思います。(朋には嘗て学びを一緒にした友人という意味があるそうで、孔子様ご自身がそうおっしゃっているのですから)出典も確認もせずに、そのようなことにこだわっている自分は、やっぱり少し変な奴なのだと思います。
コメントに気づくのが遅くなり失礼しました。昨日新しい作品を見せて頂いたので、今日(10/16)のぶろぐで紹介します。
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