山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

アジサイの季節

2010-06-26 05:30:29 | くるま旅くらしの話

梅雨時の花の中で、この季節に一番似合うのは、何といってもアジサイの花だと思います。散歩の途中の道端や、家々の庭にはアジサイの花を見かけることが多く、時々思わず立ち止まって見入ってしまうことがあります。アジサイの花の色は、千変万化の感じがします。一般に紫や赤の混ざり合ったものが多いようですが、場所によっては品種が別なのか、純白のものもあります。梅雨時の憂鬱な雰囲気の中で、アジサイの花はその季節を好むがごとくに生き生きと咲いており、ちょっぴり慰められるような気分となります。

  

アジサイの花。見かければ何の変哲もない花だけど、虫眼鏡で覗き込むとこの花に対する固定観念が吹き飛ぶ。

アジサイを虫眼鏡で覗いてみると、実に不思議な感覚に捉われます。アジサイによらず、すべての花は虫眼鏡やカメラの接眼レンズで見てみると、いつもの姿とは全くといって良いほど違った神秘な世界がそこにあるのですが、アジサイにはそれを強く感じるのは、私だけなのでしょうか。

アジサイには大形の花を咲かせているセイヨウアジサイと、日本原産のガクアジサイとがあるとのことですが、セイヨウアジサイはガクアジサイを改良した品種であるとのことです。日本が西洋を作り出したというのは、アジサイの世界だけではないでしょうか。西洋に次第に蝕まれてゆく日本の現状を見るにつけても、アジサイの世界をもう少し見習うべきではないか、などと考えてしまいます。私は大形の花もガクアジサイも好きですが、やはりガクアジサイの方に心を惹かれるのは、日本人だからなのでありましょう。とにかくアジサイにはたくさんの仲間があり、花の色も様々なので、見て飽きることがありません。

   

ガクアジサイ。今頃のガクアジサイは、園芸種の改良が進んだのか、だんだんと花の大きさが膨らんできている感じがする。

ところで、学術的にはアジサイの花と我々が思っているものは、花ではなく、本物の花はガクに取り囲まれた小さな粒々のように見えるものがそうであるというのですから、驚きです。このような植物の花は他にもかなりあるようで、それらを厳密に識別するのは、難しいので、私の場合は学術的なことは無視して、トータルで花ならば、それを花と呼んでも構わないのではないかと思っています。アジサイのようなタイプの花を装飾花というのだそうですが、それがどのようなものであれ、見た瞬間に花だと思ったものは、花であっていいように思うのです。

アジサイを見てると思い出すのは、青春時代にちょっぴり傾倒した萩原朔太郎の詩のことです。

     

        こころ

     萩原朔太郎「愛憐詩篇」より

こころをばなににたとへん

こころはあじさいの花

ももいろに咲く日はあれど

うすむらさきの思ひ出ばかりはせんなくて。

 

こころはまた夕闇の園生のふきあげ

音なき音のあゆむひびきに

こころはひとつによりて悲しめども

かなしめどもあるかひなしや

ああこのこころをばなににたとへん。

 

こころは二人の旅びと

されど道づれのたえて物言うことなければ

わがこころはいつもかくさびしきなり。

 

千変万化というよりも、拠り所なくさ迷うこころの世界を、懸命に捉えようとして、詩人はことばを捜すのですが、その一番先に浮かんだのがアジサイの花だったということなのでしょうか。

アジサイは漢字では紫陽花と書きます。紫はこの花のベースの色のようです。陽という字は、太陽の光が当たる山の南側の場所という字義だそうですから、紫陽花というのは北向きの花ではなく、南側の斜面のような場所を好む紫系統の花という印象から、先人が名づけて、これらの字を用いたのかも知れません。

紫陽花の花の色が変わるのは、それが植えられている土地の酸度と含まれているアルミニュウムの量によるだとか。科学というのはすごいなと思いますが、詩人の心の働きよりは小さいような気もします。

私が一番好きなアジサイの仲間は、サビタの花です。これはノリウツギのことで、北海道の随所に見られる花です。純白の一見何の変哲もない只の花ですが、北海道を訪ねることの多い7~8月には、この花を見かけると、何だかホッとして、ああここにも咲いているなと安心するのです。

   

サビタの花。北海道の原野などにひっそりと咲いていることが多い。目立たないけど、よく見ると愛情の湧いてくる花である。

ところで、我が家には紫陽花がありませんでした。ずっと植えるのを忘れていた感があります。家内が今頃の季節になると、思い出したように紫陽花を植えようと、忘れているのはあなたのせいよといわんばかりにの給(のたま)うので、守谷に越してきてから6年目にして初めて、小さな苗を買ってきて植えました。ほんとに小さな小さな山アジサイの苗です。勿論これはガクアジサイの仲間で、これが日本アジサイの原種と言っていいのではないかと思っています。子供の頃、裏山に幾らでもあったアジサイに思いを寄せながら、ゆっくり大きくなれよと、時々庭先の新参者に声を掛けているこの頃です。

   

我が家の庭に今年植えた山アジサイの花。まだ30cm足らずの大きさだが、どういうわけか花はしっかり咲いている。少しずつしっかり育って欲しい。

コメント
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