新・遊歩道

日常の中で気づいたこと、感じたこと、心を打ったこと、旅の記録などを写真入りで書く日記です。

大学主催「市民カレッジ」・・・・映画『善き人のためのソナタ』

2013年11月14日 | 映画

ほど近いところに学生数2万人の巨大な大学があります。次々に新しいお洒落な建物に建て替わり、常に「増殖」している生き物のようです。
その大学の運営方針として、地域住民とのコミュニケーションをはかるべく有料無料の「市民カレッジ」が企画されています。

今回は、3か月間の「映像にみるヨーロッパ文化」に参加して、10月11月で4本の映画を観ました。レジメが準備されており、教授の解説があってから映画が始まります。
我が家には関係なかった大学ですが、若い人たちであふれるキャンパスを歩くのは実に快適で、この雰囲気が好きで毎回の映画鑑賞会を楽しみにしています。

先ずは開始前に学食で腹ごしらえ。快適な空間で快適な料金で老夫婦は「学生」を追体験しています。400円しなかったカツカレー。
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『善き人のためのソナタ』  壁崩壊直前、盗聴と密告により体制を維持していた東ドイツが舞台。
社会主義の敵を暴くことだけに使命を感じているシュタージのヴィースラーの任務は、著名な作家ドライマンを24時間体制で盗聴すること。しかしドライマンの人間的な生活を盗聴するうちに任務への疑いが生じ始めます。・・・・・・・
壁崩壊後に、ドライマンは初めて監視されていたことを聞かされ愕然とします。シュタージ博物館で見つけた自分の監視記録の報告書。しかし途中から内容が事実と異なり始めたことに気づき暗号名「HGW XX7」の存在を知ります。それにより自分が救われたことを知ったドライマンは、HGW XX7(ヴィースラー)を探し出します。しかし背中を丸めカートを引いて配る郵便配達の姿をただ遠くから見つめるだけでしたが、この時ある思いが胸を貫きました。
それから2年後、ヴィースラーは本屋でドライマンの本を見つけます。本の扉には「HGW XX7に感謝をこめて捧げる」と献呈の文字が記されていました。かつて完全に対立する関係だった二人が、本という形を通して融和が完成したのです。ホッと胸を打つ瞬間でした。1冊の本の存在が、直接に対面しなくてもお互いの心と心を繋ぐ・・・、素晴らしいことです。心を打たれるラストシーンでした。



『魔笛』  オペラの舞台を映像化したもの。いくつかのパートに分割して、教授によるモーツァルトの楽譜の分析、見どころの解説、物語の展開の説明があってから映画に移ります。素人には実に丁寧でわかり易く、「オペラってこんなに楽しかったのー?」と思ってしまいました。
馴染のある夜の女王のアリアでは、あのコロラトゥーラの場面で女王がアップされ、その表情が迫ってきて舞台よりも迫力がありました。


『サラの鍵』  フランスのユダヤ人迫害は、ナチにより強制されたものでなく、フランス警察や憲兵の積極的な協力がありました。1995年、シラク大統領はホロコーストにおけるフランス国家の責任を認めました。フランス人には「時効の無い負債」があったのです。胸をつくストーリーでした。
時は1942年、パリで一斉検挙を受けた少女サラはとっさに弟を納戸に隠し鍵をかけてしまいます。両親とは離れ離れ、サラは鍵を持ったまま収容所に送られます。ここから物語が始まるのです。


『ロングエンゲージメント』  第1次大戦中にフランスで、銃で自分の手を打ち抜くなど除隊を狙った行為をした5人の兵が処刑を受け、武器も食料もないままに仏・独の中間地点に放置されます。当然それは死を意味します。その中に生き残った者がある…という噂から物語が展開していきます。
足に障害を持つマチルドは、婚約者マネクを含む5人は処刑されたことを告げられます。しかし処刑の事実に食い違いがあることを見出して、不屈の精神でマネク探しが始まります。消えた婚約者を探しての長い道のり・・・・。
記憶を失い名前も変わっているマネクをやっと見つけ、会いに行く瞬間が実に象徴的でした。石段をゆっくりと一段ずつ上って、逆光の戸口に立ったマチルドの後ろ姿。ワイエスの絵にあったような芸術的な印象的な場面です。その先には緑の庭の真ん中にマネクが座っていました。愛情と信念を持ってついに探しだした婚約者。これがまさにタイトルの『ロング・エンゲイジメント』の「長い婚約」なのでした。

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