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日本企業はパラサイトかガラパゴス化

アメリカ企業のエコシステム戦略

 エコシステムとは生物学でいう生態系のことであるが、近年、ビジネスの世界でも使われることが多い。要するに、一企業の利潤最大化ではなく、複数の企業がお互いの競争優位性を代替、補完させながら、産業全体の収益構造をどうやって維持拡大していくかという考え方である。

 Googleのエコシステム戦略はどのようなものであろうか。GoogleはAppsという沙弥や、APP Engineという2弥で競争優位性を持っている。その背景にあるのは、Googleの検索エンジンによる集客力である。

 Googleはパソコン・インターネットで既に世界を制した。日本の検索市場でシェアトップを誇るYahoo!が、肝心の検索エンジンでGoogleに喉元を抑えられたわけだから、まともな勝負ができるはずがない。いざとなれば、Googleは検索エンジンのライセンス料の上げ下げでYahoo!の収益をコントロールできる。もっとも、その時は、独占禁止政策上の提訴を受けるリスクをはらむが。

 Googleが次に狙うのは携帯電話のインターネットである。Googleがいかに優れた検索エンジン、ネット広告ビジネス・モデルを持っていても、多くの場合、消費者が実際に消費をするのは屋外であり、消費の現場で欲しいものを検索できなければ、宝の持ち腐れである。もしもGoogleが携帯電話の世界でエコシステムを構築できれば、消費者がどこにいるのかという口ケーション情報を利用して、製品・サービス情報をプッシュできる。盛り場で焼酎好きなユーザに、空席のある焼酎の豊富な隠れ家的な飲み屋を紹介すれば、喜んで利用してもらえるだろう。

 Googleの最大のライバルはMicrosoftではなく、アメリカ政府そのものであろう。Googleの描くビジネス・モデルは、ロケーション情報や購入履歴など個人情報を基にして、顧客から聞かれたら答えるという受け身の姿勢から、顧客が欲しくなるものを聞かれもしないのに紹介するという攻めの姿勢に転じつつある。Googleのビジネス・モデルは、消費者主権という市場経済の大前提を覆しかねないのだ。今でこそ、Googleの自由な営業を認めない中国に対する戦略で、Googleとアメリカ政府は蜜月関係にあるが、アメリカはもともと個人の権利に敏感な国であり、両者の仲はいずれ決裂するかもしれない。

日本企業はパラサイトかガラパゴス化

 さて、そのようなグローバルな情勢にあって、日本企業はどう生き残ればいいのだろうか。難しい質問だが、ヒントは二つある。一つは支配者にパラサイトすることである。支配者といえども、全てのレイヤでサービスや製品をまかなえるわけではない。日本の緻密なものづくり力を活かせば、支配企業の貴重なサプライヤーとして、相応の製品需要を期待できる。しかし、下請けとしての限界は明らかであり、価格設定権を持たない以上、利益の分配を受ける立場に過ぎない。また、模倣が得意な新興国の追い上げを受けやすく、価格のたたき合いに巻き込まれてしまうだろう。

 もう一つの道は、アメリカ企業が見向きもしないようなニッチに活路を見いだすことである。開き直って自らガラパゴス化しようというわけである。死中活を見いだす戦略とも言えるし、敗北主義とも言える。

 いずれにせよ、規模の経済性とネットワーク効果がものをいう世界だけに、日本企業が今さらプラットフォーム・レイヤでGoogle、Microsoftに互角の勝負を展開することは不可能である。当面、パラサイトかニッチしか道はないだろう。もっとも、私はその先にまだ可能性が残されていると信じる。

 第一に、世界一の日本のインフラである。アメリカのインフラは日本に比べて一〇年遅れであり、どれほどアメリカのクラウド企業が優れていても、広大なアメリカで大規模に展開するには後一〇年はかかるだろう。

 第二に、日本の消費者は世界で一番厳しい。優れた品質が安い価格で提供されなければ、日本の消費者は納得しない。日本のメーカーは、日本の消費者の識別力をもっぱら技術の善し悪しに利用してきた。これからは、サービスの善し悪しに利用していくべきである。

 第三に、今の携帯電話やインターネットは便利な道具ではあるが、本当の意味で、我々人類の生活を豊かにしたと断言できるような付加価値を生んでいない。現状ではまだ高級な遊戯品に過ぎない。このままでは、いずれ飽きられるのではないか。利活用が生む真の付加価値。これを実現できている国や事業者はまだどこにもいないのだ。チャンスは日本にもある。
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