goo

南北新指導者の立場

『二つのコリア』より

かつては(そして現在もある程度)極度に保守的で、男性中心の社会であった韓国において、女性が大統領に選出されたことは、注目すべき変化の兆しだった。そして、それは素哨らしい勝利でもあった。朴槿恵は韓国で民主的に選出された大統領としては初めて、過半数の得票を得て当選した。しかし、当選はしたものの、朴槿恵のお祝い気分は長続きしなかった。彼女はあらゆる面で、五十年以上前に父親も直面した深刻な国内の社会的、政治的、経済的な諸懸案と向き合うことになった。しかも彼女はこうした懸案に取り組んだ父親と同じように長期間、権力の座にとどまることはできず、父親が持っていたような権力も持ち合わせていないのだ。

朴槿恵は一九六一年より何倍も繁栄した韓国を引き継いだ。北朝鮮に対する立場ははるかに強くなり、国際社会で重要な役割を担う国としての地位は確立されていた(その役割は六一年の朴正煕のクーデター当時とは格段の違いに見える)。しかし今や、過去数十年来、韓国人の自信の基盤となってきたもののほとんど全てが危険にさらされているように見える。「奇跡」の経済成長と、一世代前に実現した独裁体制から民主主義体制への素晴らしい平和的な移行に対する自賛は次第に色あせてきた。

韓国内でも国外でも、政治家や評論家たちは絶えず一様に韓国と北朝鮮の実力を比較したがる。だが比較したところで、これまでの三十年間、韓国が常に優位にあるという事実しかますます示せなくなっているのだ。南北格差はほとんどニュースにもならず、(平壌の指導層を含め)誰もが、その差が拡大していることを知っている。しかし、南北格差に焦点を当てることはかえって真の問題への注目をそらし、韓国で全てがうまくいっているわけではないという現実を覆い隠すベールとなっている。悲惨な事例を一つだけ挙げれば、韓国の自殺率はOECD加盟国の中で飛び抜けて高いのだ。この不快な統計値については、さまざまな説明が加えられているが、真の意味は数値自体が物語っている。

韓国の憲法では大統領の任期は五年と規定されており、朴槿恵は二〇一八年初めまで大統領として在位する。言い換えれば、彼女は就任するや否やわずか六十ヵ月の間に、切迫し深刻化しつつあるさまざまな難題に対処しなければならないのだ。それらは出生率の低下や伝統的な家族形態の急激な衰退から、高齢化と貧富の格差拡大に対応する堅実な社会保障制度の欠如まで、長期にわたり積み重なった膨大な懸案である。これらの難題は韓国に限られたものではないが、この国を一気に襲い、急速に深刻化したため、その衝撃に国民が激怒しないうちに対処するだけの猶戸はほとんどなくなっている。

山積する懸案だけでは十分ではないというかのように、南北分断という絶えざる影が社会を覆っている。現在のところ、軍事境界線以北のもう半分の国家と二千四百万人の国民にどう向き合うか、という核心的な問題は解決困難のように見える。韓国民は北朝鮮に対して憎悪、軽蔑、哀れみ、反発、そしてある種の倦怠感を抱き続けてきた。しかし以前にも増して明白なことは、ビジョンと関与、持続力、そしてもちろん多額の資金を組み合わせた国家政策への取り組みなしには、何も動かないということである。韓国の国家と指導者たちが、そのような取り組みの方策を編み出し持続させていけるかは、なお定かでない。

朴槿恵が相対的に少ない機会しか持っていないのとは対照的に、金正恩は向こう三十年、さらには四十年でも、権力の座にいることができるだろう。たとえ彼の寿命が祖父(八十二歳)ではなく父(六十九歳)と同じくらいであったとしても、二〇五〇年にも彼は依然として政策を決定し、影響力を行使しているだろう。もちろん現時点では、金正恩体制は初期段階にあり、外部から彼の生涯を予測しようとするのは妥当ではない。しかし差し当たって、北朝鮮の最高指導者として二年目に入った金正恩は、権力を確実に掌握したように見える。これまでのところ、金正恩は政治的にも外交的にも機敏に立ち回る能力を示してきた。この機敏性は朝鮮戦争の休戦以来、北朝鮮の行動を特徴付けてきた。もし彼が年を取ってから世を去る場合でも、この若い後継者は祖父や父と同じように、韓国で四、五人、もしかすると六人の大統領が次々と現れては去る姿を見ることになるだろう。

朴槿恵と同様、金正恩は父親が最高権力を掌握した二十年前よりも強力になった国家を引き継いだ。外部の専門家たちが長年、北朝鮮社会の内部で変化への圧力が増していると吹聴してきたにもかかわらず、そして平壌が直面している経済的、政治的な問題を全て考慮に入れたとしても、北朝鮮は一致団結し機能的な存在として生き抜く能力を示し続けている。体制の政策と国民の扱い方がどれほどひどいものであっても、北朝鮮は「破綻国家」ではない。もしかすると先端技術の導入は体制の権力掌握力を弱めるのに最終的には重要な役割を果たすかもしれない。北朝鮮ではパソコンや携帯電話、デジタルカメラ、電子書籍などの利用が国民の間でかなりの広がりを見せている。だがこれまでのところ、この国はそうした状況を受け入れて適応することができている。金正恩体制は、科学技術力が高いというイメージを利用し、北朝鮮が近代的で未来志向の活力ある国家であることを誇示しようとしている。そのことが明らかに体制維持にとって危険な要因となる可能性があるにもかかわらず、である。北朝鮮では依然として厳しく制限されてはいるか、インターネットにアクセスする国民の増加が、(体制崩壊への)決定的な一撃となるかどうかはまだ分からない。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 元町のスタバ... 満鉄弘報〝宣... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。