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グーグル 未来に向けた戦略

動画配信で市場リード、次のターゲットはテレビ
 ユーザー数と利用時間が増加
  グーグルは2017年2月、同社の動画共有サービス「YouTube(ユーチューブ)」における全世界の視聴時間が1日当たり延べ10億時間を超えたと発表した。ニューヨークタイムズなどの米メディアによると、YouTubeの視聴時間が1日当たり延べ3億時間を突破したのは2014年12月、5億時間を達成したのは2015年半ば、同社は、決算発表でYouTubeの業績を切り離して公表していないが、そのユーザー数と利用時間は着実に増えているようだ。eマーケターの推計によると、2017年における米国のYouTubeユーザー数は約1億8000万人で、ネットフリックス(Netflix)の1億3500万人、アマゾンの8000万人、フールー(Hule)の7300万人をしのいでいる。
 テレピ視聴者を取り込む戦略
  圧倒的なシェアを持つべ呂日呂りは、ここ最近、テレビ視聴者を取り込む戦略を推し進めている。2016年8月には、テレビ用のべ呂H呂Qサービスでユーザーインタフェース(UI)を改良し、テレビ画面で動画を見やすくした。動画サービスはパソコンなどのウェブブラウザーやスマートフォンのアプリで利用する人が多い。だがYouTubeは、大手メーカーが販売するスマートテレビや、グーグルの「Chromecast」、アップルの「Apple TV」といった映像配信端末、さらにマイクロソフトの「Xbox」やソニーの「プレイステーション」といったゲーム機でも利用できる。こうした状況を背景に、最近はリビングルームの大画面でYouTubeを見る人が増えており、同社はこれらの利用者をさらに増やしたいと考えている。
  またYouTubeのは2017年4月、従来のケーブルテレビに対抗する月額制のテレビ番組配信サービス「YouTube TV」を米国で始めた。これに先立ち同社は、動画を広告なしで視聴できる月額9・99ドルのサービス「YouTube Red」を提供していたが、新たなサービスは、そのオリジナル映画、ドラマに加え、「ABC」「CBS」「FOX」「NBC」「ESPN」「Fox Sports」「NBCSN」といった全米ネットワーク、スポーツチャンネル、主要ケーブルテレビ局でも配信される人気チャンネルなど、合計40超のチャンネルを用意。料金は月額35ドルと、月額60ドル以上する従来のケーブルテレビの半額程度にした。
  従来のケーブルテレビのチャンネル数は数百に上るが、ほとんどの人は一部のチャンネルしか利用しないと言われている。そうした中、米国ではここ最近、「コードカッター」と呼ばれるケーブルテレビ契約をやめる人や、「コードネバー」と呼ばれるケーブルテレビ契約を一度もしたことがない若者が増えている。こうした若者は、インターネットを介して映像を配信するオーバーザトップ(OTT)と呼ばれる、ネットフリックス、フールーなどの映画、テレビ番組配信サービスを好むようになっている。これらは、従来のケーブルテレビとは異なり、料金が安く、好みのチャンネルだけを利用できるといった点が若者に受けており、YouTube TVはこうした需要を狙っている。
 広告撤退の連鎖を食い止めろ
  YouTubeで最も多く見られているのは、従来の広告付き動画だ。その広告付き動画をめぐって、同社は増え続けるテロ関連動画の問題に悩まされており、対策を急いでいるという状況だ。
  この問題のきっかけは、2017年3月に英紙タイムズが、ヘイトスピーチや過激な内容を含むユーチューブ動画に、大手企業の広告が掲載されていると報じたことだった。これを受け、英政府や英小売大手のマークス・アンド・スペンサー、ドイツのアウディなどが相次いで、グーグルとべ目H呂のから広告を引き上げたのだ。さらにこの問題は米国にも飛び、AT&Tやジョンソン・エンド・ジョンソン、ベライゾン、スターバックス、ウォルマー卜・ストアーズといった企業も広告の引き上げを表明した。
  そして、この事態を重く見たグーグルは謝罪声明を出し、対策の第1弾として、総視聴回数が1万未満のチャンネルの動画には広告を表示しないという方針を明らかにした。しかし、その3ヵ月後、英国のロンドン橋などを襲った3人の襲撃犯の1人が、YouTubeに投稿された過激派動画の影響を受けていたことが分かり、グーグルとYouTubeに対する批判がいっそう高まった。
  同社は同年6月、新たなテロ関連対策を打ち出している。そのうちの一つが、アルファベット傘下のシンクタンクであるジグソー(Jigsaw)が考案した「Rediorect Method(リダイレクト・メソッド)」と呼ぶ手法。これは、ターゲット型広告の技術を用いて、過激派組織IS(イスラミックステート)に共鳴する利用者を把握し、ISへの参加を思いとどまらせるよう、利用者を反テロリズム動画に誘導するというもの。今後同社はこれを、欧州の広範な地域に導入する計画だ。これがどの程度の効果があるのかは定かではないのだが、これまでのところ一定の成果が出たとグーグルは説明している。このほか同社は、画像解析の精度向上や、第三者機関と協力する問題コンテンツの特定のための取り組みに50のNGO(非政府組織)を追加すること、問題のありそうな動画に警告を表示したり、コメント投稿を不可能にしたりするといった対策も行うと説明している。
  グーグルにとっては、企業の広告撤退の連鎖を食い止めたいところだ。同時に、同社は社会的責任も感じており、こうした事態を一刻も早く解決したいと考えている。ただ、これらの対策は今のところ、その実現に向けた第一歩にすぎないといった状況だ。
自動運転車で他社を大きくリード
 自動運転車の技術を開発しているテクノロジー企業として、度々海外メディアに取り上げられる企業には、配車アプリのウーバー・テクノロジーズやリフト、マサチューセッツエ科大学(MIT)の研究者が立ち上げたヌートノミー(nuTonomy)、バイドゥ(百度)、アップル、そしてグーグルなどがあるが、この中で他社を一歩リードしていると言われているのが、グー・グル(アルファベット傘下のウェイモ)だ。
 米国の市場調査会社IHSによると、自動運転車を実現するための重要な鍵となるのはソフトウェア。ソフトウェアは各種の車載センサーからの情報を分析したり、熟練ドライバーの運転技術や経験を学習したりする役割を果たすが、グーグルはこの分野で強みを持つという。例えばグーグルは、ロボットエ学やドローンなどのプロジェクトに投資をしてきた。これら事業の技術は、自動運転車に必要なAI(人工知能)やマシンラーニング(機械学習)、コンピュータービジョン(視覚情報処理)の開発を促進させているのだという。
 自動車メーカーとは異なる開発アプローチ
  グーグルのアプローチが特徴的なのは、大手自動車メーカーのようにドライバーの運転操作を補助する自動運転機能を段階的に導入するのではなく、ドライバーの運転操作が一切不要の完全自律走行車を初めから目指している点だ。同社は2014年5月に試作車を発表。その試作車は開発コンセプトに沿うように、ハンドルやブレーキなどはついていない。グーグルが目指しているのは、例えば、視覚障害者が自動運転車に乗って昼食に出かける、あるいはI人暮らしの高齢者が行事に参加するために利用するといった用途。また、都市部のオフィス街でスマートフォンアプリを使って車を呼び寄せる、といったシステムも同社が取り組みたい分野の一つだと説明している。グーグルの当初の取り組みは、時速25マイル(約40キロ)以下で走行する近隣移動用の自動運転車であり、高速道路を時速100キロで長距離走るといった大手自動車メーカーの車とは異なるコンセプトだ。
 FCAと提携し、完全自動運転車を開発
  グーグルは、2009年より取り組んでいた自動運転車開発プロジェクトの技術を商用化する目的で、2016年12月に持ち株会社アルファベットの子会社として「ウェイモ(Waymo)」を設立した。これに先立つ2016年5月、同社は、欧米自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)と自動運転車の分野で提携すると発表。また研究開発拠点を自動車の町として知られるミシガン州デトロイトに設けることも明らかにしていた。
  同社はそれまで、本社があるカリフォルニア州マウンテンビューや、テキサス州オスティン、アリゾナ州フェニックスなどで、トヨタ自動車の「レクサス」を改造した車両や、自社の小型プロトタイプ車両などを使って公道走行試験を行っていた。そして同社は、FCAとの提携で、クライスラーのハイブリッドミニバン「パシフィカ(Pacifica)」にウェイモが開発した自動運転用センサーやコンピュータービジョンシステムなどを組み込んだ完全自動運転車を開発した。
 市民参加の公開テストプログラムを開始
  2017年4月、同社はフェニックスで完全自動運転車を使った「Early Rider Program」と呼ぶ公開走行試験プログラムを始めた。これは一般住民がモバイルアプリを使って、ウェイモの自動運転車を呼び、目的地までの移動に利用するというもの。ウェイモはこれにより、市民の交通ニーズや公共交通機関としての自動運転車の使い勝手などを調査している。
  ウェイモは今後、同プログラムを大規模展開していく意向で、その車両を500台追加し、合計600台導入する計画だ。これに伴い同社は、レンタカー大手のエイビス・バジェット・グループと業務提携している。この提携により、エイビスが自社施設の一部をウェイモの自動運転車専用に改造し、そこで車両の保管、清掃、オイル交換、タイヤのローテーション、部品の取り付けといった保守点検業務を行う。
  ウェイモが設立時に掲げた使命は、世界で毎年120万人が命を落としている交通事故をなくすこと。これはグーグルが、フォード・モーター、ウーバー、リフト、ボルボカーズと設立した企業連合の目標とも一致する。この企業連合設立の狙いは、自動運転車を米国の公道で走らせるための統一したルールの策定や法整備を連邦政府に働きかけること。5社はこれらのロビー活動に加え、自動運転車の啓発活動も行う計画だ。
  米国では1年間の自動車事故による死亡者数が3万人超と、日本の約10倍に上る。その94%は人為的ミスによるもので、自動車事故は若年層(15~29才)の死因の第1位となっている。5社によると、自動運転車は重大事故や事故件数を大幅に減らす効果がある。また道路交通や高齢者・障害者の移動手段の安全性を高め、渋滞も緩和し、さらに自然環境の改善や輸送の効率化にも貢献する。企業連合は、このビジョンを米国の公道に反映させるべく、市民団体や地方自治体、企業などと連携していくとしている。

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