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アマゾン 未来に向けた戦略

『ITビッグ4の描く未来』より
アマゾン 多彩な取り組みはすべて「モノを売るため」 未来に向けた戦略
小売業界で頭角現すアマゾン
 アマソン アマゾン史上、最大の買収
  アマゾンは常に話題の多い企業だが、とりわけここ最近、注目を浴びているのは実店舗展開だ。2017年6月、アマゾンが米高級スーパーマーケットチェーンのホールフーズ・マーケットを買収するというニュースが世界を駆け巡った。
  世界を驚かせたのは137億ドル(約1兆5000億円)という買収金額だ。アマゾンはこれまで、ゲームプレイのネット実況を手がけるトゥイッチ・インタラクティブや、アパレルの電子商取引企業ザッポス、倉庫内の自律型ロボットシステムを手がけるキバ・システムズなどを買収しているが、それらの買収金額はいずれも10億ドル(約1130億円)未満。ホールフーズの買収金額はそれをはるかに上回り、アマゾンの歴史の中で最大規模となる。ホールフーズは、米国やカナダ、英国に約460店舗を持ち、売上規模で全米10位のスーパーだ。規模では中堅だが、自然食品などの商品を扱い、ライフスタイル提案型の高級志向店舗を展開し、顧客には高所得者層が多い。
  同社は2007年から、生鮮食品の会員制ネット販売「AmazonFresh」を展開している。同社の食料品売上高は現在、87億ドル程度で、8000億ドル規模と言われる米国食料品市場の約1%にとどまっている。食料品は、書籍や家電製品のようにネットヘの移行が進んでいない。こうした中、アマゾンは食料品事業を長期的な成長戦略と見据え、この分野に力を入れている。
  投資会社のコーエン・アンド・カンパニーによると、アマゾンとホールフーズを合わせた市場シェアは約2・8%で、ウォルマート・ストアーズ、クローガー、コストコ・ホールセール、アルバートソンズ/セイフウェイに続く、第5位の食料品小売企業となる。こうした状況についてウォールストリート・ジャーナルは、「アマゾンはホールフーズの買収により、一夜にして、食料品業界の巨人になる」と伝えている。これは同時に、ネット販売からスタートした同社が、実店舗ビジネス界のメジャープレーヤーになることも意味しており、業界にとって脅威だという。アマゾンは今後もホールフーズを、独立事業とし運営する方針だ。だが今後同社は460ある店舗を、アマゾンの実店舗展開、プライペートブランド展開、あるいは配送ネットワークの拠点として利用するのではないかと見られている。
 全米2位のアパレル小業企業に
  アマゾンはここ最近、アパレル事業に注力している。前述したように2017年6月に返品の概念を変える衣料品販売サービス「Prime Wardrobe」を米国で始めたほか、同年4月には音声アシスタント機器回回の新シリーズとして、ファッション用途の機器「Echo Look」の販売を開始した。この機器はカメラとLEDフラッシュライトを搭載しており、利用者の全身画像を撮影できる。これにより、姿見に映したような画像を撮ることで日々着て出かける衣服の見栄えやコーディネートを確認したり、友人と画像を共有したり、専門家の意見に基づく着こなしアドバイスといったアマゾンのサービスを受けられるようになる。
  実は、同社がこの機器を市場投入した具体的な狙いは分かっていないのだが、米メディアは、アマゾンがアパレル事業の拡大を図っていると伝えている。例えば将来は、アプリを通じて、顧客にお薦めアイテムを提案することもできる。オンラインによるバーチャル試着といったサービスも、Echo Lookを使えば実現できそうだと、AIの専門家は話している。
  またアマゾンは2016年に「Lark & Ro(ラーク&ロー)」や「North Eleven(ノース・イレブン)」といった衣料品プライベートブランド(PB)を立ち上げているが、その背景には、同社のeコマース事業に占めるアパレルの比率が拡大してきたことがあると言われている。例えばモルガンスタンレーは2017年4月に出したレポートで、アマゾンのeコマース事業におけるアパレル商品の売上高はすでに、米ターゲットや大手百貨店のそれを上回っており、同社はウォルマート・ストアーズに次ぐ全米第2位のアパレル小売企業になったと報告している。またコーエン&カンパニーは2016年、アマゾンのeコマース事業におけるアパレル商品の売上高はすでに、コンピューター機器と非アパレルのそれを上回ったと報告した。
 世界小売業ランキングで初のトップ10入り
  同社はこうして、小売事業の強化を図っている。その戦略が奏功したのか、同社の売上高は増大している。デロイトトーマツコンサルティングの「世界の小売業ランキング2017」によると、売上局上位250社のトップ3は前年と同様、ウォルマート・ストアーズ、コストコ・ホールセール、クローガーの3社。だがアマゾンは同調査開始以来、初めてトップ10入りした。
  このレポートは各小売企業の2015会計年度(2016年6月末まで)の売上高をまとめたもので、アマゾンの場合、2015年12月末までの1年間の売上高が集計されている。しかし同社が2017年2月に発表した翌会計年度の売上高は、前年比で27%増加した。次回のレポートでアマゾンは、さらに順位を上げているかもしれない。
リアル店舗展開を加速
 書籍の対面販売店舗
  アマゾンは2017年5月、米国で7店目となる書籍の対面販売店舗をニューヨークでオープンした。この店舗は「Amazon Books」と言い、約3000タイトルの書籍をそろえている。店内のすべての本は表紙を正面にして棚に立てる面陳方式で陳列している。それぞれに説明書きの札を付けており、アマゾンのオンラインストアに寄せられた顧客の評価やバーコードを表示している。このバーコードをスマートフォンのアプリで読み込むと、その書籍に関する追加情報が表示される。またこの店では現金は取り扱わない。顧客が購入する書籍はすべて、モバイルアプリやクレジットノデビットカードで精算する方法を採っている。
  アマゾンが書籍販売の実店舗を初めて開いたのは2015年1111月。その1号店は、同社の本社があるシアトルだった。その後同社はカリフォルニア州サンディエゴ、オレゴン州ポートランドなどにも展開し、1号店のオープンから1年半で7店をオープンした。同社は今後さらにこのAmazon Book店舗を増やしていく計画で、米メディアは2017年末までにその数は合計13店舗になると伝えている。
 ネットで注文、店で受け取る、新業態の食料品店
  こうしたアマゾンの実店舗展開はここ最近加速している。同社は2017年5月、ワシントン州シアトルで、「AmazonFresh Pickup(アマゾンフレッシュ・ピックアップ)」と呼ぶ店舗を2店開設した。これは、顧客がスマートフォンなどで商品を注文し、希望の受け取り日時を指定した後、車で店に行くと、商品を受け取れるサービスを提供するものだ。店には、屋根付き駐車スベースがあり、顧客はそこにクルマを乗り入れる。すると、あらかじめ注文商品を袋詰めして用意していたアマゾンの従業員が、車のトランクまで運んでくれる。同社のeコマース同様、ネットで決済処理が行われるため、その場での支払いは不要。顧客はそのまま車を出して、家に帰ればよい。このサービスは、PrimeやAmazonFreshの会員に向けたものだ。
  ネットで商品を注文し、車で受け取りに行く形態のサービスは、「カーブサイドピックアップ」や「クリック・アンド・コレクト」と呼ばれ、ウォルマート・ストアーズやクローガーなども展開している。米メディアによると、ウォルマー卜は2018年の年末までにこうしたサービスを全米の1000店舗に拡大する計画で、アマゾンが新業態の店舗を始めた背景にはこうした現状があるようだ。
 最先端技術の導入でレジ精算を不要に
  同社は2016年12月、シアトルでレジ精算が不要のコンビニエンスストア「Amazon GO」の試験営業を始めた。店舗面積は約1800平方フィー卜(約50坪)と、日本のコンビニエンストアよりも少し広く、店内では、シェフがその場で調理した朝・昼・夕食、スナック類のほか、パン、チーズ、チョコレートなどの食品や飲料を販売している。この店にはレジがなく、あるのは駅の改札口のようなチェックインレーンのみ。客は専用アプリが入った自分のスマートフォンをこれにかざして入店する。あとは買いたいものを棚から取って、そのまま店から出ればよい。
  アマゾンによると、この店舗では、自動運転車にも利用されている「コンピュータビジョン」「ディープラーニング・アルゴリズム」「センサーフュージョン」といった技術を採用している。これらの技術は、どの買い物客がどの商品を手に取ったかを認識し、その客の仮想ショッピングカートに商品を入れる。また客が手に取ったものを棚に戻した場合、ショッピングカートから商品を削除する。客は商品をそのまま自分のバッグに入れても構わない。こうして必要なものを手にした客は、チェックインレーンを通って店から出る。すると代金は客のアマゾンアカウントで精算される。
  ただ、同社はこの計画の延期を余儀なくされた。同社は2017年初頭にこの店舗を一般公開する予定だったが、その期日に間に合わなかったのだ。詳細は明らかになっていないが、米メディアはこれについて、一度に20人以上の顧客が店に入ると、システムが顧客の動きを追えなくなるなどの不具合が見つかったと伝えた。

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