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組織運営体制の設計

『リーダーシップ構造論』より ⇒ 組織は「意思の力」で維持される。「存在の力」が発揮されると、組織は変わる。

同じリーダーとフォロワーの組み合わせであっても、どのようなタスク特性の業務に取り組むのか、またどのような活動と交流のスタイルをとるのかによって発生・発現するリーダーシップの強度が全く異なることについては、これまで解説してきた通りである。

前節でリーダーシップが発生・発現しやすいようなタスク特性を実現するための施策について説したのに続けて、本節では、リーダーシップが発生・発現しやすいようなリーダーとフォロワーの活動と交流のあり方を実現するための組織運営体制について説明する。どのように組織体制を設計し、どのような制度・ルールを制定すればリーダーシップが発生・発現しやすいのか、即ちリーダーシップ促進型の組織体制と運営ルールについて具体的施策を挙げて説明していく。

(1)組織サイズと階層構造

 リーダーシップの発生・発現は、リーダーとフォロワー間のコミュニケーションの豊かさと仕事におけるクリエイティピティースペースの大きさによって左右されるが、第H章第5節で示したように「組織ユニットの人数(組織サイズ)」と、組織全体の「階層構造」は、これら二つのファクターに密接に関係している。

 具体的には組織サイズが小さければ、リーダーとフォロワー間のコミュニケーション量は当然多くなり、豊かな交流が発生しやすくなる。また全体組織として階層が少なければ少ないほど一階層当たりの担当業務の抽象度の範囲、言い換えるならば組織図における〝タテの幅〟か大きくなるため、その担当者の受け持つ業務の創意工夫の範囲は大きくなる。全体組織の階層が少ない方が、そこで仕事をする者が担う業務の抽象度の幅(タテの幅)が拡がり、クリエイティビティースペースは大きくなるのである。

 このようにコミュニケーションの豊かさとクリエイティビティースベースの大きさというリーダーシップの発生・発現を左右する二つのファクターと、組織サイズと階層構造という二つの組織設計マターを突き合わせて考えてみると、基本的には答えはシンプルである。リーダーシップを発生・発現させやすくするためには、「一つひとつの組織ユニットのサイズ(人数)を小さくし、全体組織の階層を少なくすることが有効」なのである。

 ■小サイズ、少階層のジレンマ

  ただし、リーダーシップ型の組織運営を実現するためには組織サイズをより小さくし、階層をより少なくすればそれだけでよいかというと、単純には答えを出すことができない組織設計hの留意点も存在する。組織サイズ、階層構造と、そこで求められるリーダーシップの強度の関係である。

  論点を分かりやすくするために、総人数四〇人からなる組織を仮定して事例的に説明してみよう。

  組織サイズが小さければリーダーとメンバー間にリーダーシップ関係が成立しやすくなり、また同時に階層を少なくした方がリーダーシップ関係の成立に有効であるから階層も極力少なくするという、公式通りの組織設計をまず考えてみよう。組織成員の数を四〇人とすると、一チームの編成を三人という最小ユニットとし、階層構造については最少の二階層、つまり一人のトップと三人編成のチームが一三個という全体組織骨格が考えられる:ケース①(この編成は組織図的には万人のトップと一三個の末端組織ユニットという二階層構造であるが、ポジション数の観点からすると、一人のトップー一三人のチームリーダー--二六人のチームメンバーという三階層という見方もできる)。

  このケース①の場合、ここに示した組織体制はリーダーシップの観点から解釈すると、一体どのような特性を持つ組織であろうか。

  一三個の末端ユニットは三人という少人数の編成であるため、チームリーダーは特別に強力なリーダーシップコアを保有していなくとも、チームメンバーとの間にリーダーシップ関係を発生・発現させやすい。しかしその一方で、トップと一三人のチームリーダーとの間ではトップに余程強力なリーダーシップコアが備わっていなければ、リーダーシップ関係を構築するのが難しいのである。つまり、一つの組織ユニットのサイズを極力小さくして三人としたために総組織ユニット数が多くなってしまったこと、また同時に階層も可能な限り少なくして二階層としたためにトップと末端の組織ユニットを仲介する階層が存在しないために、組織全体を率いる一人のトップに強烈なリーダーシップコアを要求するタイプの組織構造となってしまっているのである。

  つまり、この状態は一三人のチームリーダーについては強いΥリーダーシップコアは必要とされないが、トップ一人にだけは極端に強力なリーダーシップコアが求められる組織構造になっており、組織全体としてリーダーシップ型の組織運営を実現させるための最適な組織構造になっているかというと疑問の残る形態である。極端に強力なリーダーシップコアを持ったトップが存在している場合にはこの形でもよいかもしれないが、そうしたカリスマ的なトップが存在しない場合には、スムーズなリーダーシップ型の組織運営が難しい形態なのである。

  では翻って、チーム編成は極力少人数とする一方で、トップのリーダーシップ上の負担を軽減するために中間階層を設ける組織としたらどうなるか。

  同じ総人数四〇人の組織でも一人のトップの下に三人の部長を置き、またその下に九人の課長を置き、その下の末端組織ユニットを一チーム三人で九個編成する形にすると、階層が先はどの例の二倍の四階層になってしまうがトップも部長も課長も直接の部下の数は三人となる:ケース②。こちらの組織体制であれば、トップは部長に対して、部長は課長に対して、課長は末端チームのチームリーダーに対してリーダーシップを発揮しやすくなり、一見すると組織全体においてスムーズにリーダーシップ型の組織運営を実現することができるように見えるかもしれない。

  しかしこのケース②でもまた別の問題が発生してしまうのである。このケース②で発生・発現するリーダーシップは決して強いものにはならないのである。階層を多くしたために各組織ユニットが担当する業務のクリエイティビティースベースが小さくなり、強いリーダーシップが発生・発現する余地が小さくなってしまっているのである。言い換えるならば、このケース②で実現する組織運営はリーダーシップ型というよりも、むしろマネジメント型の組織運営スタイルになってしまうのである。
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