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グローバル大国としての中国 アフリカ

『中国が世界をリードするとき』より グローバル大国としての中国

中国にとってアフリカの魅力は一目瞭然である。経済成長を続けるにはさまざまな資源が必要なのだ。二〇一〇年の全世界の原油消費のうち、中国が占める割合は一〇パーセント、亜鉛では四三パーセント、鉄鋼四二パーセント、鉄鉱石四四パーセント、鋼三九パーセントであった。第6章で述べたように、中国はレアメタルを除いては天然資源に乏しいため、海外からの輸入に頼らざるをえない。これに対してアフリカは資源がひじょうに豊富なうえ、近年さらに石油や天然ガスが発見された。さらには、米国は中東に多大な関心を寄せるいっぽう、どちらかといえばアフリカを軽視し、あまり注意を払わなかった。

二〇〇六年、胡錦濤のアフリカ諸国歴訪によってアフリカ・中国関係の新たな時代が公式に幕を開け、一一月にはアフリカ四八カ国の首脳・政府高官が訪問して北京で開かれた最大規模の首脳会議が実現した。温家宝はこのとき、中国・アフリカ間の貿易額を二〇一〇年までに倍増させると表明した。ほかにも中国は、三年間のアフリカ支援倍増、中国企業のアフリカ投資促進・支援を目的とする五〇億ドル規模の「中国アフリカ開発基金」設立、後発発展途上国から中国への無関税品目を一九〇から四四〇以上へ拡大すること、今後三年間で借款三〇億ドルとバイヤーズ・クレジットニ○億ドルを供与すること、○五年以前に返済期限を迎えた無利子債務の帳消し、今後三年間でアフリカ人専門家一万五〇〇〇人に研修をおこなうこと、中国人農業専門家一〇〇人のアフリカ派遣、三〇の病院建設、一〇〇の学校建設、中国政府奨学金アフリカ人学生枠の四〇〇〇名への倍増を約束した。会議中には、エジプトのアルミエ場建設、ザンビアの銅開発プロジェクト、南アフリカの鉱山開発をはじめとする大規模契約が結ばれた。その後これらの目標は実現をみた。中国・アフリカ間貿易額は二〇〇〇~○八年の間に一〇億六〇〇〇万から一〇六八億四〇〇〇万ドルヘと一〇倍に拡大し、○九年には温家宝が三年間で一〇〇億ドル(すなわち○六年の倍にあたる)のさらなる低利借款を約束した。そしてまたもや多くの契約が結ばれた。

現在、アフリカの対中輸出品目のうち半分以上を占めるのは原油である。アンゴラは中国にとってサウジアラビアに次ぐ第二の原油供給国であり、三位のイランを大きく上回り、中国の原油輸入量の一六パーセントを占める(二〇〇九年)。中国はアルジェリア、アンゴラ、チャド、スーダン、赤道ギニア、コンゴ、ナイジェリアにも石油権益を持ち、とくにアンゴラ、スーダン、ナイジェリアでは採掘権を獲得した。スーダン産原油の半分が中国向けに輸出され、中国の原油需要の六パーセントを担っている。中国はすでに輸入原油の三〇パーセントをアフリカに依存しており、この数字はナイジェリアのニジェール川デルタ地帯での採掘権獲得によってさらに拡大する見込みだ。

過去一〇年というもの、中国のアフリカからの輸入額は、鉄鉱石と金属を除く主要一次産品すべてにおいて、ほかのどの地城よりも速いペースで拡大した。例えば中国の輸入木材のじつに二〇パーセントをアフリカ産が占める。二○○八年、アフリカにおける中国の主要な貿易相手国は順に、アンゴラ、南アフリカ(アフリカ大陸最大の経済国)、スーダン、ナイジェリア、エジプトであった。二〇〇九年、中国は南アフリカの貿易相手国第一位となり、また最大の輸出市場ともなった。二〇一〇年、アフリカの対中国貿易額は計一二六九億ドルで、いまだEUには及ばないものの、かつてひじょうに大きかった対米貿易との差を縮め、近年はほぼ並ぶまでになった。こうした急速な拡大ぶりにもかかわらず、中国貿易全体にアフリカが占める比率は三パーセント以下にすぎない。

二〇〇五~一〇年、サハラ以南アフリカは中国の対外投資先の一三・八パーセントを占め、アジア、中南米、中東(北アフリカを含む)向けよりは少ないものの、米国、∃-ロッパ、オーストラリア向けを上回った。中国の対アフリカ投資はアフリカが受け入れた海外投資ストック(累積)のたった三パーセントともいわれるが、別の統計ではすでに九パーセントに達するという見方もある。フロー(一定期間の投資額)では、EUには遠く及ばないものの、一国としては米国に次ぐ第二の対アフリカ投資国である。中国がアフリカ最大の貿易相手国にして最大の投資国となるのは時間の問題と思われる(ただしそのライバルとしてインドが名乗りを上げる可能性はある)。二〇〇五~○七年の三年間、世界銀行の対アフリカ支援・融資は一七四億ドルにのばったが、これに対して中国輸出入銀行のそれは一六〇億ドル近いと推定されている。
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