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公立図書館と地域との結びつき

『図書館がまちを変える』より いま、図書館に期待が高まっている

近年、図書館を取り巻く状況は大きく変化しています。地方分権の推進に伴い、県と市町村の役割を明確にすることが求められています。市町村の役割で住民への直接的なサービスを行い、県はその活動を支援し広域的なサービス・事業を行うものとされています。取り組みの例として、市町村によっては夜遅くまで図書館を開館し、常時サービスできる体制をとっているところもあり、人びとの生活スタイルを考えれば理にかなっているようです。それだけに、図書館にかかわる人々に、頭が下がる思いです。一方、運営者にとって、スタッフの勤務条件等を考えれば、こうしたサービスの提供は実際問題としては厳しいところでしょう。これらの課題を抱えたまま、市民の図書館に対する期待に応えようとスタッフは苦心しているのです。

住民の要求する「本」を貸し出すという行為は、住民がその自治体から間接的でなく直接に恩恵を受ける大きなサービスでもあります。結果として自治体と住民の深い信頼関係が生まれ、ここに住んでよかったと思える結びつきが生まれるといえるでしょう。

これからの図書館には、住民の読書を支援するだけでなく、地域の課題解決に向けた支援も期待されます。そのための具体的な取り組みに必要な資料や情報を収集する必要があります。

すでに消滅した伝統文化資産を、古い図書の中から当時の作品をよみがえらせたグループがあります。「今町べと人形」は、新潟県見附市に古くから伝わった土人形ですが、時代とともに消えてしまった郷土伝統伝承工芸です。地域の女性たちが、古い文献から作品を研究し、これを復元するとともに、今日的な創作作品まで創り上げました。図書館に幅広い資料収集機能があることによって、こうした伝統文化を継承し、新しい地域文化を創造、発掘することが可能なのです。図書館には、蔵書構成にもよりますが、このように地域特有の機能を持たせることも極めて有効です。

また、住民の課題解決支援には、行政支援、学校教育支援、ビジネス(地場産業)支援、子育て支援等があります。そのほか、医療、健康、福祉、法務等に関する情報や地域資料など、地域の実情に応じた情報提供サービスが必要です。こうしたサービスは、生活において、情報の側面からますます比重が高まっていくものと思われます。これこそ、図書館がまちづくりの中で大きな役割を果たすという証左といえるでしょう。

図書館とまちづくりとの関わりでは、図書館の命である資料の課題があります。例えば蔵書構成などは、まちづくりに影響することが考えられます。そこで地域に関する情報コーナーは、他の自治体の図書情報などを研究し、選書のなかに意図的に整備することも必要でしょう。市民活動に関する的確な情報は、市民の活動をより活発にしてくれるでしょう。タウン誌コーナー、団体等の機関紙、各学校の学校新聞、PTA新聞、企業のパンフレットなど、スペースの問題もありますが、出来る限りそろえておくことが必要です。

やすらぎと活力を支え、市民とともに成長する図書館

筆者は、常々、「図書館は人を育てるし、人は図書館を育てる」ものだと考えています。「図書館」を「まち」に置き換えても同じです。

千葉県市原市中央図書館の資料によると、図書館の基本理念として、「やすらぎと活力を支え、市民とともに成長する図書館」と表現されています。図書館は、「市民に身近であること」、「活力を与える場であること」、「市民とともに育つということ」、「図書館は常に躍動している機能体であること」を示しています。さらにこれらを基本目標という項目で見ると、およそ次のような項目が見られますが、他の自治体でも、同様な表現が見られます。

 ア.町の情報拠点として市民に役立つ

 イ.市民が集い、ともに触れ合い親しむ

 ウ.地域や学校との連携を進め、豊かな心をはぐくむ

 エ.全ての市民に優しい

など、以上のような点が挙げられる例が多いのですが、これに「まちづくりに役立つ」という項目を加えることもよいのではないかと思います。

四項目の全てがまちづくりに含まれるのですが、やはり、まちづくりにおける図書館の位置づけを明確にし、まちづくりと関係者の意識を変えるためにも、「まちづくりに役立つ」という項目を加えることは必要かもしれません。次の表は、これらの目標が具体的にどのような活動に結びついているか、取り組みの例をまとめてみたものです。
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