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政治コミュニケーション

『政治コミュニケーションを理解するための52章』

社会建設に不可欠の要素

 どの政治システムにおいても、支配機構と国民との間で行われるコミュニケーションは根幹である。とりわけ民主主義国家では、政治コミュニケーションは、社会建設に不可欠の要素となっている。政治コミュニケーションによって、国民は、国家と結びついていると考えるようになる。それ故、政治コミュニケーションは、人々に積極的に働きかけなければならない。しかし、それは、エリートや支配集団が描く社会を人々に伝えるだけであってはならない。社会からのフィードバックを可能にし、人々の政治参加を促進しなければならない。定期的に選挙が行われていれば、その国を民主的と見なすこともできるが、その状況を期限つきの独裁とも捉えることもできる。現代の民主主義国家では、国民の意見に応答することが求められており、応答の核心に対話がある。政治コミュニケーションの古典的な定義は、情報の発信者とその動機に焦点をあてる。政治コミュニケーションは、何らかの政治的な目的で始められると考えられてきた。しかし、この定義は、多くの民主主義国家では適切なものでなくなっている。メディアの役割を考えるなら、問題は一層明らかとなるであろう。

政治コミュニケーションを理解する

 政治コミュニケーションを、当事者として操作するにせよ、外側から研究するにせよ、非常に複雑な作業である。進化が激しい現状において、コミュニケーションの種類と形式は多様である。さらに伝達者とコミュニケーション状況によっても、多様な機能を有している。様々なメッセージが、あらゆるメディアを通じて、自律的で強制を嫌う視聴者のもとへ運ばれる。私たちは、コミュニケーションの形成に文脈(コンテクスト)が非常に重要であることを発見した。したがって、政治コミュニケーションの研究者は、コミュニケーションの機能と役割を真に理解するために伝達者、様々なメディア、伝達される人々を理解しなければならない。政治コミュニケーションの理論の多くは、アメリカのH.ラズウェルが博士論文で扱った政治宣伝研究を基礎としている。彼の中心的な問いは、「誰が、何を、誰に、どのチャネルを通じて話したのか、その効果は何か」であった。

 これら4つの要素はどれも研究対象となってきたし、時には個別的に扱われ、またある時は全ての要素を一連のものとして議論することもあった。この本は、このモデルを明確に適用しているわけではない。しかし、この本の議論が、このモデルに沿ったものであることは容易にわかるだろう。私たちは、政治コミュニケーションの情報源を、とりわけその信頼性という観点から眺め、その情報源が後に続く三つの連鎖をどのように操作しているのか、つまり視聴者が抱く認識をどのように操作しているのかを見ることで議論,を進める。同時に私たちは、メッセージの構築、それが伝えられる方法、独立したマスメディアの役割について必要な議論も扱う。最後に、実際に政治コミュニケーションの中心にいる受容者、つまり視聴者について、特に彼らが政治コミュニケーションをどう受け取り、どのようなプロセスを通して、どのように行動するのかという観点から議論する。ここでの議論は、最新の研究4・紹介するとともに、21世紀という変化の時代における、政治コミュニケーション領域の全体像を示す。
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