goo

IoTでサービスの概念が変わる

『IoTという衝撃』より 新たな産業革命 ⇒ 未唯空間では、サービスの高度化

では、人がつながり、モノがつながり、データを共有できる世界で何ができるのか。新たな環境をつくり上げるためには、ビジョンが必要になる。現時点で、このようなビジョンに最も適合する言葉はサービスだろう。人、モノ、データ、サービス。この四つのキーワードでインターネットの未来は見えてくる。IoTは我々の生活にどのようなサービスをもたらすのであろうか。

フィリップスは最近、利益率が低い、韓国や中国との家電分野の競争から撤退すると発表した。安価な家電づくりからヘルスケアの分野に注力し、健康をモニターする機能を備える、いわゆる「医電」に切り替えるというのだ。こうした動きは加速すると思われる。

たとえば、洗濯機はどのように変わるのか。洗濯する時、まずは洗剤を出さずに、水を入れてかき混ぜる洗濯機がある。水の中に汗などの成分が染み出るため、それをバイオ分析すれば体調を知ることができる。継続的にやれば、家族一人ひとりの体調をトラッキングできるようにもなる。掃除機も同様だ。掃除機で吸い込んだゴミからバクテリアの状態を見て健康への影響を判断したり、吸い込んだ髪の毛を自動的に分析して、体調を判断したりすることもできる。

ただし、それらの分析は洗濯機や掃除機で実行するわけではない。クラウド上に専用のコンピュータ機能があり、そこにデータを送るのだ。クラウドのインフラがあってこそ可能になるサービスであり、まさにIoTの成果である。

家電メーカーが消費者の健康管理を行うなど、昔は考えられなかったことだが、将来的には不思議なことではなくなるだろう。インターネットによってモノがつながり、そこから抽出した膨大なデータの計算や分析、既存データや他人のデータとの参照はクラウド上で行う。「あなたの部屋にこんなバクテリアがいる。それを除去するためにはこの装置をつければいい」などというアドバイスも、IoTで初めて実現できるサービスだ。

家電に限らず、ITがさまざまな産業に大きなインパクトを与え、新たなサービスを誕生させることになる。農業はどうだろうか。稲を収穫する機器のコンバインにセンサーをつけ、収穫時に水やタンパク質の成分、土の質など、米の昧を決める因子を分析できるようになれば、おいしい米か否かを収穫した時点で判定できる。この技術が実現すれば、農業ビジネスに革命を起こすことになる。

果物の糖度などを計測する時、いまは果物に検査器具を刺している。また、その器具は高額である。IoTによってそれが手軽に安価でできるようにもなる。作物を非破壊検査する技術を使い、その検査結果をインターネットでクラウド上に送り、過去のデータと比較するのだ。これによって、たとえばイチゴの甘さを即時に判断することができる。

実は、そのために必要な技術はすでに存在する。検査機器から正確な波長の色を出し、反射した光を分析して分子構造を判断することは、小惑星探査機「はやぶさ」に搭載された、言わば三〇年前の技術でもある。現在、正確な波長の発光や繊細な受光は、スマートフォンのディスプレーやカメラで驚くほど安価に実現できるようになっている。

サービスとは、社会の要求から生まれてくるものだ。家電から医電へという流れを見ると、高齢社会や高額な医療費、医師不足などの問題を解決するために創造された新しいサービスだといえる。農業へのITの活用も、コストダウンを実現し、最終的には価格の低下につながる。サービスの多様化はいまも進んでいるが、今後は、サービス・サイエンスとしての学術モデルの確立も進み、まったく新しいサービスの誕生を期待できる環境が次々と整っている。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« インターネッ... 世界史 イス... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。