古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

。『ケインズの逆襲 ハイエクの慧眼』

2018-01-22 | 読書

松尾匡さんの本は面白い視点が述べられていました。『ケインズの逆襲 ハイエクの慧眼』(PHP新書、2014年11月)です。近年の各国政府の経済政策を総評し、今後の経済政策を論じているのです。

 70年代まで先進資本主義国では、ケインズ型国家介入体制が採られていたが、スタグフレーシヨンの壁にぶつかった。

北欧諸国では高度福祉国家を目指したが、財政赤字が壁になった。

 資本主義国でないところは、もっと強烈な国家介入システムがとられた。たとえば、ソ連や東欧では、「共産党」など、マルクス・レーニン主義をかんばんを掲げる政党が独裁政党になって、企業は原則すべて国有化し、政府が運営する経済体制だったが、最終的には1989年ソ連体制は崩壊します。

こうした流れの中で、「小さな政府へ」という動きが出てきた。しかし、筆者は「小さな政府」はこれらの問題を解決できないとして「転換X」を提唱します。

「転換X」とは何か。キーワードは、リスクと決定と責任さらに予想は大事です。

ハイエクの説いたところは、要するに「リスク・決定・責任の一致が必要だ」ということです。そこで、国家の役割は民間人の予想を確定することだと言います。民間人の経済的営みがスムーズにいくためには、」ただでさえリスクのある彼らにさらなるリスクを課さない。不要なリスクが軽減出来るようになるべく不確実性を減らさねばならない。これこそが国家の役割だというのです。

 結論として、どういう国家体制がのぞましいのか。あとがきでこう記述する。

転職や、協同組合の起業や、再学習がいつでも可能な、自由な人生を万人に補償するため、充実したベーシックインカムを導入します。

 転職や、医療、教育、子育て支援などの分野では、現場の利用者、従業者の自治に基づく協同組合などの活躍で、万人のニーズが満たされるよう、公財政などで手厚くサポートする。

 失業ゼロをめざし3±1%ノ」インフレ目標を約束する。不況のときは財政支出を通貨発行で賄い、インフレのときはお金持ちや大企業中心に課税強化する。最低賃金やベーシックインカムはインフレ目標と整合するように引き上げる。

 労働基準、環境基準などのルールを厳しくする世界中の人々の闘争を支援する。金融規制も世界的に統一する。国際通貨取引に課税するトービン税を実現する。

 外国人労働者の移入を自由化すると同時に労働ダンピングにならないよう、労働運動を支援し規制強化に努める。

どうでしょうか。私は、少なくともベーシックインカムの強化導入と、トービン税の慈雨源には大賛成です。

ベーシクインカムについて一章を割いて(第6章)詳述しています。

仮ベネーシックインカムを金額で固定するなり、あらかじめ決まった律で引き上げることにする。税収から一般の政府経費を引いた残りでベーシックインカムが賄えなければ足りない部分はお金を発行する。逆にベーシックインカムを払っても税金に余りが出ればその分は中央銀行が吸収する。

 そうすると、自動的に景気が安定する仕組みができる。なぜなら不況時にどれだけ失業者が出てもベーシックインカムの分は需要を下支えする。しかも不況なら税収が減るので、足りない財源を賄うお金の発行が増えて景気を刺激する。

 逆に好況が過ぎてインフレがひどくなれば税収が増えて吸収されるお金が増える。それは需要を冷やします。

 さらに、ベーシックインカムがあれば「逃げる」だけで世の中が良くなる。

例えば、ひどい労働条件の「ブラック企業」に勤めていてもやめることが出来る。ひどい労働条件では人が集まらなくなるから、ある程度は労働条件が改まる。

あるいは、ベーシックインカムがあれば、たとえ住民税を払わない人でも住んでくれれば需要が発生し、経済にプラスになる。サービスが行き届かない地域からは住民が出て行き、地方政府同士、住民サービスを競うことになると言うのです。