古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

日本経済黄金期前夜?

2015-10-13 | 経済と世相
本屋で立ち読みをしていて、『日本経済黄金期前夜』(永浜利広著、東洋経済新報、2015年10月刊)なる本を見つけました。 パラパラページをめくっていて、「交易条件」がよくなっているから、1914年~15年の日本経済はバブル直前の1986年と同様恵まれた状態にあり、黄金期前夜だと書いてありました。
「これは面白そうだ」と衝動買いしました。
 というのは、小生の卒論(1911年3月、放送大学修士課程)のテーマが為替政策と国民福祉の関係でしたが、結論は「交易条件を有利にする為替政策がもっとも国民の福祉に貢献する」というものでした。
そこで、「交易条件」から日本経済を見ている、この著者の意見は面白そうだと思ったのです。
 著者は1995早大理工学部卒、2005東大大学院経済学研究科修士課程修了。第一生命経済研究所、主席エコノミスト。著者の主張は楽観的にすぎる感がありますが、原油の値下がりが、日本の「交易条件」を改善し、「交易利得」を増やし、日本経済にとって神風になるという論は、傾聴に値します。
著者による「交易利得」とは、「国際貿易における商品の交換比率が変化して起きる利得,換言すると、貿易で価格の変化で生ずる収入の増加です。
 2014年、約20兆円の日本の所得が、貿易の結果流出しました。
2005年ごろから所得の海外流出が始まったのですが、これはこの頃から新興国の経済発展が加速し、需要が増えた上、投機マネーも加わって原油や穀物の価格が上がってしまったためです。
 リーマンショック後に一度、流出額が減ったのですが、その後拡大し、直近の2014年には20兆円を超える水準に達した。これが2015年は12兆円。つまり海外に流出するお金が8兆円も少なく済む。これは8兆円の減税と同じです。
因みに、2014年の消費税の5%から8%の引き上げは、増税規模が8兆円でした。
原油価格の下落は日本経済にとって、「大減税」と同じく、とてつもなく大きなプラス要因であったことがわかります。
 2014年は、アジヤをはじめとした新興国やヨーロッパ諸国の景気が芳しくなく、原油の需要が伸び悩む傾向にありました。需要が減っているのですから、供給量を落とさなくては価格が下落します。そこで、産油国は需要の動向に合わせて産油量を減らし、価格を維持するのが過去に見られたパターンでした。 しかし、今回サウジアラビヤは減産による「価格維持」ではなく、「市場シェアの確保」を重視し、減産政策をとりませんでした。その背景には。ここ数年、急激に生産量が増えてきたシェールオイルの存在がありました。
サウジアラビヤが「価格維持」から「シェア維持」へと舵を切ったのが、今回の原油安の要因です。
 なぜアメリカは、原油価格の低下を放置しているのか。原油価格とアメリカ経済には負の相関関係がある。つまり、原油かかぅが下がると成長率は確実に上がる。原油価格が下落すると、他の先進国の経済にもプラスに働きますが、アメリカほど顕著ではない。
 アメリカ国民一人当たりのガソリン消費量は年間約350ガロンと世界一、ちなみに、日本は一人当たり年間100ガロン程度、アメリカ人は日本人の3倍以上のガソリンを使う。人口を考えると、アメリカ国民が使うガソリンの量は日本の6倍。 アメリカ人は消費性向が高いので、ガソリン代が安くなると、財布に余裕の出来た分他の消費に回すので、経済が潤うのです。
2014年から2015年にかけての経済を取り巻く環境が、バブル前夜の1986年から1987年に似ている。放っておけば、景気が過熱しかねないほど経済環境が整っている。こういう好環境は、歴史上でも稀です。 好環境の最たるものは原油価格の大幅下落ですが、原油価格も下がり続けるわけではない。そろそろ下げ止まり感もでています。
2014年から2015年の経済の好環境を利用して、成長戦略と財政破たんを避ける施策に成功すれば、日本経済の黄金期が来るだろうと筆者は力説しています。