古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

偽薬効果

2014-09-20 | 経済と世相

『アベノミクスの終焉』(服部茂幸著、2014年8月、岩波新書)なる本を読みました。「偽薬効果」という面白い言葉がありましたので、紹介します。
 【えらい医者が良く効く薬だと偽って、薬でないものを患者に与えても、患者がよく効く薬だと信じていると、本当に病気が治ることがある。そこまでいかなくても、症状が改善することがある。これが偽薬効果である。
 証券市場や為替市場における偽薬効果はもう少し複雑で、ケインズがそれを美人投票に例えたことは良く知られている。ケインズのいう美人投票では、得票の多かった女性を選んだ投票者には賞品が与えられる。賞品がほしい投票者は、自分の好みではなく、みんなの好みに従って投票をしなければならない。しかし、他の人々も同じことを考えているかもしれない。その場合、みんなの好みではなく、「みんなの好みだとみんなが考えているもの」に従って投票しなければならない。
 株式や外貨の投機によって利益を得ようと考える投資家たちも、アベノミクスに本当に効果があるのかどうかではなく、他の人々がアベノミクスに対して、どのように考え、行動するかを考えて、投資するかどうかを決める。
 アベノミクスそれ自体に効果がなくとも、投資家たちが(間違って)効果があると思い込めば株価上昇と円安が生ずる。本当は効果がないとみんなが知っていても、自分以外の人々が効果があると信じているとみんなが誤解していれば、株価上昇と円安がが生じる。】

 昨日、東証株価が今年の最高値を更新したそうです。材料は、円安で1ドル108円をつけたこと。
これは「偽薬効果」だと私は考えました。
「円安になれば日本の企業は利益が上がる」と、投資家が誤解したのか、あるいは、他の投資家は誤解するだろうと考えた投資家が先回りして日本株を買ったと思うのです(東証の株価を決めるのは、外人投資家です)。
でも、 円安で日本企業が利益を上げられる段階は過ぎたとおもうのです。
円安になれが、材料費が上がりコストアップで、逆に利益が圧縮されます。
円安で販売数量が増えれば利益が上がりますが、最近の統計は、円安にもかかわらず、輸出数量は増えないことを示しています。
 日本にとっては、今や円安より、円高がのぞましいのですが、いったん、円安になったら円高に変える手段はありません。
日本経済は受難の時代になると、愚考します。
cf:
http://blog.goo.ne.jp/snozue/d/20140328