古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

アベノミクスは失敗

2013-10-15 | 経済と世相
もしかしたら日本はとても豊かな国だったのでは?と最近思うようになりました。本屋の立ち読みで、「国家の成熟」(榊原英資著、新潮新書13年9月刊)を手にし、前書きの中の以下の文を見出しました。

『平均的日本人はおそらく平均的アメリカ人より豊かで、大国の中では世界で一番豊かだといって間違いありません。豊かさがこのレベルに達すれば、成長率が鈍化するのは当然です。人口が減少する中でも毎年1%前後成長しているという現状は、決して悲観するようなものではないのでは・・・
もちろん格差は拡大しているし、特に若年層での貧困が問題になりつつあるのは事実です。これには所得の再分配政策を強化することで対応すべきでしょう』
『日本は1987年には一人当たり名目GDPでアメリカを抜いて世界のナンバーワンになっています。その後、為替レートの変動等で若干順位は変化していますが、2011年のデータでも日本の一人当たり名目GDPは46108ドルと人口4000万以上の国ではアメリカの48328ドルに次いで世界のナンバーツーにランクされています(ただし、2013年5月時点での円レートは2011年に比べて20%以上円安になっていますから、現状ではドルベースの日本の一人当たりGDPはアメリカより大分低くなっていると思われます)。』
十分豊かになっていたのに、円安にしたり(ガソリンや食料価格を上げる)、物価を2%上げるなど、何をバタバタしているのでしょう。
デフレを避けようというのが、アベニミクスの思想ですが、・・・
『デフレは先進国共通の現象で、グローバリゼシヨンに伴う構造的なものです。とすれば、「デフレ脱却」は決して容易ではありません。というより、そもそもその必要はないのではないでしょうか。・・・インフレ率を無理やり2%にする必要が一体どこにあるのか、少なくとも筆者は理解に苦しみます(このくだり、全く同感。物価を上げてなぜ国民が豊かになるのか?企業が成長を必要とすることは分かりますが、成長率の高い国で事業展開すればよいだけの話)。
物価はグローバルな状況の中で変化し、一国の金融政策だけでは決定できなくなっています。』
円安にして輸出企業を助けようとしても、輸出企業は海外展開をすすめているので、国内の国民にはメリットがない。
『円ドルレートは2011年10月31日に75円32銭をつけ、その後円安に推移しています。安倍晋三政権はその声を強く意識しているようです。しかし、実質実効為替レートの指数(物価変動を考慮した指数)でみると、2010年以来の円高は決して円高ではありません。
2012年12月の製造業の就業者は、51年ぶりに1000万人を下回って998万人となり、全体の雇用に占める比率は16%まで低下しました。就業者全体に占める割合が最も高かったのは1970年代前半で、そのシェアは27%超でした。・・このシェアの減少は労働人口全体の減少に加えて、多くの企業が生産拠点の海外移転を積極化した影響が大きいようです。』
更に格差の拡大が日本経済を弱める
『成長の時代を支えたのは、中産階級でしたが、今や、中産階級は二極分化しています。水野和夫はその原因をグローバリゼーシヨンだとして次のように述べています。
「近代は国民に均質であることを要求したが、グローバル経済の時代には国家単位の均質性は消滅する運命にある。日本に即して言えば『一億総中流意識』の崩壊であり、格差拡大の時代の到来である」
堤未果は著書『ルポ貧困大国アメリカ』(岩波新書)の中で、アメリカは既に貧困大国になってしまったと述べています。二極化はまず、アメリカで急速に顕在化していった。
「国境、人種、宗教、性別、年齢などあらゆるカテゴリーを超えて、世界を二極化している格差構造と、それをむしろ糧として回り続けるマーケットの存在、(それは)私たちが今まで持っていた、国家単位の世界観を根底からひっくり返さなければ、いつの間にか一方的に飲み込まれていきかねない暴走型市場原理システムだ。」
日本の農家と勤労者世帯の所得は、1972年以降、農家の所得が後者を上回るようになりました。つまり高度成長は、都市と農村の格差を拡大せず、むしろその格差を縮小したのです。これは現在の中国等には見られない、かつ歴史的にもほとんど例のない現象です。成長と格差の縮小の両立は本来の意味での豊かさを日本にもたらしたのです。
以下、「格差の是正は国の役割」とし、そうした国になるべく「信頼に足るリーダー層が必要」なのだが、「日本の政治家は「素人」がほとんど」と嘆いています。
採るべき施策は、デフレの解消や企業の成長でなく、グローバル経済にふさわしい格差是正策、すなわち所得の再分配策。消費税で国民から取り上げたカネで企業の法人税を下げるなど、アベノミクスは国民を貧しくさせる。取るべき施策が逆方向だ。
アベノミクスは、「企業を成長させれば国民を豊かにさせる」と錯覚しているのです
。グローバリゼーシヨンが進展する中で、中産階級は分裂し、社会の格差、相対的貧困率は大きくしようとしています。マーケットだけに任せておいたら、社会は分裂し、混乱は加速度的に拡大していくでしょう。
最後に著者は教育を論じています。
『初等中等教育の教員免許制度は廃止すべきではないでしょうか。大学と同様、公聴あるいは選考に携わるスタッフが書類審査をして、面接をして採用すればいい訳ですから、別に免許は必要ないでしょう。・・・文科省の既得権益化して囲い込まれている初等・中東教育の教員制度を解放することによって、日本の教育の質は大きく改善できるのではないでしょうか。』
アベノミクスは失敗だった。と思います。
当然のことです。
第一に、円安にすることは、国際収支が黒字の場合は、稼いだ外貨を円に換えると金額が大くなるからよいのですが、近年貿易が赤字傾向です。
赤字の場合、海外に支払う円貨が大きくなります。
だから、貿易で稼いでいた時に、円安政策を採ればよかったのです。
第二に、円安になれば、ガソリン代が上がるし海外から購入する食料の価格があがります。
つまり物価が上ります。日銀総裁は2%物価を上げると言っていますが、良い物価上昇と悪い物価上昇があります。
良い物価上昇とは、賃金が上がることによって、物価があがること、それは国民の購買力の上昇を意味します。
悪い物価上昇とは、国民の購買力が減少する物価上昇です。
 かねてからそう思っていましたが、この本を読んで、このことを一層確信するようになりました。