古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

中野先生の仮説(3)

2012-06-01 | 経済と世相
6.金融資本主義に変わる新たな資本主義では、政府が積極的に投資する。

新たな政策レジームは、デフレに終止符を打つと同時に、

金融資本主義に変わる新たな資本主義を形作るものでなければならない。

デフレとは、民間企業や消費者が融資を受けて投資や消費を行うことを控えることで生ずる需要縮小の悪循環です。

物価の下落=貨幣価値の上昇という局面で投資や消費を控えるのは、経済合理的な行動で、

民間主体が経済合理的である限り、貨幣価値の上昇が予測されるにも関らず、

負債を増やしたり投資を拡大することはありえない。ここに政府の出番があり、政府支出の拡大と金融緩和策が登場する。

需要が不足するデフレ期には、政府が投資を拡大するしかないのだが、これについて誤解もある。

政府が旧来型の産業である建設業が潤うような公共事業ではなく、

将来成長が期待される新たな産業分野に投資すべきだという意見です。

しかし、実際のところ、将来的に成長しそうな産業を見つけることについては、政府の能力は甚だ心もとない。

そんなことより、政府がやるべきはとにかくデフレを止めるべく、需要と供給のギャップを埋めることです。

 デフレ期の政府支出の拡大は、増税でなく、国債の発行で賄うべきだ。

なぜなら、デフレは需要の減少に起因するから、需要を減らす増税でなく、

国民の貯蓄を借り上げて政府需要に引き当てる国債発行がのぞましい。

7.自国通貨建てで国債を発行する国の財政破綻はない。

 国債増発に関しては国の財政破綻を心配する向きもあるが、財政破綻は、デフレ下の日本では全く杞憂だ。

 財政破綻した国というのは、自国通貨でなく外貨建てで国債を発行していて、返済不能に陥った。

歴史上、自国通貨建てで国債を発行している国の財政が破綻した例はない。

 最近では、ギリシャやイタリヤなど、ユーロ加盟国の財政危機が問題化している。

これらの国々は、ユーロ建てで国債を発行しており、かつユーロの発行権を有していないから、

返済不能の可能性はありうる。

しかし、アメリカや日本が返済不能になることはありえない。

自国通貨建ての国債だから、いざとなれば自国通貨を発行して返済することができる。

 ただし、政府の債務は返済不能にならないが、地方自治体の債務は返済不能になることはありうる。

地方自治体には通貨発行権がないからです。

 通貨発行権のない地方政府には財政の制約が中央政府よりはるかに厳しい。

それゆえ、地方分権改革は、結果として財政支出を抑制する。

地方分権は、地方の自主性が尊重されるということで歓迎されてきたが、デフレ下に行うと、デフレを悪化させる政策になる。

インフレターゲット論について、筆者の以下の指摘は首肯される。

『金融緩和によって増大したマネーは、必ずしも国内の投資や消費に廻らない』

だから、金融緩和は、国債発行による公共投資の拡大とセットでないと、効果はない。



8.日本の失敗
振り返ってみると、橋本内閣も小泉内閣もそれ以後の政権も、デフレへの有効な対応策はとってこなかった。

TPPへの参加も、安価な農産品の流入や外資系企業の参入による競争の激化で、

国内に強力なデフレ圧力を発生させるであろう。

以上。