古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

珊瑚と珊瑚礁

2012-01-23 | 読書
「珊瑚と珊瑚礁」について勉強しました。
本川達男著「生物学的文明論」(新潮新書)を読んだのです。
『サンゴは動物です。イソギンチャクの仲間の、ごく簡単な身体のつくりをした動物で、石の家を作り、その中に棲んでいます。この石の家は、サンゴが死んでも残り、それが固められてサンゴ礁という岩礁になります。』
 『サンゴ礁の水は透明で美しいのですが、これが実は大きな問題をはらんでいるのです。透明ということは植物プランクトンがいないということ。サンゴ礁や、それをとりまいている外洋の海水中には、栄養となるものが乏しいのです。事実、サンゴ礁のまわりの外洋には、それほど生物がいない。なのに、サンゴ礁には、ものすごくたくさん生物がいます。
 この謎を解いたのが日本の生物学者の川口四郎、1944年のことです。彼はサンゴの身体の中に小さな褐色の球たくさん含まれていることに気付きました。大きさは100分の1ミリ。この球を取り出して海水中で飼育したところ、形をかえ、殻を分泌して身に纏い、鞭毛という細い毛を二本生やして泳ぎ始めました。渦鞭毛藻という植物プランクトンでした。褐虫藻と呼ばれています。』
サンゴは動物、褐虫藻は藻類、植物です。サンゴ(という動物)の体内に植物プランクトンが共生していたのです。
『サンゴは褐虫藻が共生することで大きなメリットがあります。藻が光合成で炭水化物を作ってサンゴに与えてくれる。炭水化物だけでなく、必須アミノ酸も提供してくれる。
褐虫藻は、くれるばかりでなく、逆にいらないものをとりのぞいてくれる。
サンゴは動物だから、とうぜん排泄物を出す。これは窒素化合物です。これをこやしとして褐虫藻がもらいうける。だから、サンゴはトイレに行かなくてもよい。』
『サンゴが呼吸で吐き出した二酸化炭素を、褐虫藻が光合成で使ってくれ、逆に光合成でできる酸素をサンゴが貰う。サンゴは呼吸さえ、あえてしなくてもよい。』
褐虫藻の方は、安全な家に住まわせてもらえる利益があります。サンゴのマンシヨンは褐虫藻が光合成をし易い様に日当たりの良い方向に建て増しをしていく。そして褐虫藻のために、紫外線をカットしているのです。
もうひとつ、『サンゴは褐虫藻から栄養を貰い受けますが、その栄養の半分を粘膜を作る費用にあてています。サンゴは大量の粘膜を分泌して、体の表面をすっぽりと覆う。サンゴは海底にじっとしていますから、砂粒などのゴミが体の表面に降り積もる。体表に堆積物がたまれば、光が体の中に入りにくく、褐虫藻の光合成の妨げになる。そこで、体の表面を粘膜でラッピングしておき、汚れがひどくなったら、新しいフィルムに張り替える。
サンゴの体から剥がれ落ちた粘膜は、海水中をただよい、それを食べてバクテリヤが増える。バクテリヤは動物プランクトンの餌になり、動物プランクトンは魚の餌になる。だから、サンゴ礁の周りには魚が豊富になるというわけです。』
うまく出来ているものですね。