古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

半島を出よ(2)

2011-07-19 | 読書
『半島を出よ』読み終わりました。面白い小説でした。
福岡を占領した北朝鮮の部隊(小説では高麗遠征軍となっています)、政府のやるべきことは、この軍隊を攻撃・殲滅することでしたが、「高麗軍を攻撃すると、テロで日本全国のLNG(液化天然ガス)基地を破壊する」との風評に驚き、テロが入らないよう、九州と本州の間を封鎖してしまったのです。つまり政府は、高麗軍を攻撃せずに、九州を見捨ててしまった!
日本政府から要請がなければ高麗軍を攻撃することはない、というのが日米安保を踏まえた米国の立場。中国も韓国も、福岡に領事館の開設に動きます。領事館が開設されれば、開設した国々は九州の独立を認めることになる。
政府は、高麗軍と交渉を開始することもしない。問題を先送りしているだけ。

このとき福岡のイシハラ・グループを名乗る世の中をはみ出した不良たちのグループが立ちあがり、高麗軍が占拠するホテルを爆破して日本の危機を救うというのが、ストーリーです。
このイシハラ・グループのメンバーがすさまじく、さながら現代の梁山泊といった面々。
即ち、タテノは16歳。殺人用のブーラメンを繰る。シノハラは18歳。カエルやクモや毒ムカデを大量に飼育している。ヒノは、18歳。7歳の時、ノイローゼになった母親が父親を刺殺。13歳の時、福祉施設へ放火、4名が焼死。配管に詳しい。アンドウは18歳。13歳の時、同級生の女生徒を殺害して切り刻む。フクダは、23歳。手製爆弾のスペッシャリスト。タケグチは18歳。高性能爆弾のエキスパート。父親はリストラされた会社で自爆。トヨハラは17歳。12歳で新幹線をハイジャックして日本刀で車掌を殺害。
といった面々です。

作者はどういう意図でこの小説を書いたのか?私が一番関心を持った点ですが、小説家は作品で以って語る存在ですから、意図をダイレクトに語ることはありません。
でも、東北大震災と原発事故を経験した現在、05年の作品ですが、筆者が語りたかったのは「政府は国民を守る存在なのか?」という基本的な疑問ではなかったのかと思います。
特に原発事故以後の対応をみると、国民の生命・財産を守ることが政府の最優先すべき任務と、自覚しているのだろうか?と思ってしまいます。
増税の議論を聞く度,国民を守れない政府に、国民は税金を払う義務があるのか?そう思います。