古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

消費税の引き上げ

2008-12-26 | 経済と世相
 「消費税の引き上げ」は、経済情勢の好転を前提として、11年度に行うと、与党の協議で決まったそうです。麻生総理が記者会見で、3年後の消費税率の引き上げを発表したので、そう決めないと、総理の面子に関わるのだろう。でも、そんなこと今決めたって意味ないと思います。3年後、麻生さんが総理である確率は極めて低い。自民党が政権の座にあるかどうかも疑わしい。

 それは別として、消費税のアップには、二つ大きな問題がある、と私は考えるのです。

 一つは、消費税を引き上げて本当に、財政は改善されるか?
もう一つは、年金制度との関連です。

 前者につては、実例がある。97年、消費税率は3%から5%に引き上げられた。ところが、97年度で約30兆円だった財政赤字は、98~99年と増加を続け、40兆円を越えてしまったのである。

『税収が増えれば、政府はその分使ってしまうのだ。その後、税収が減れば財政は悪化する。日本の財政はこれを繰り返してきた。だから、増税で財政赤字を削減することは期待できない。』(文芸春秋新年号、原田 泰氏)

 後者について。

 『しばしば政府は「将来の高齢化社会の深刻化に備えて、いまから消費税を上げておく必要がある」というレトリックを使うが、・・・確かに団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる15年後には、医療費などの負担増に対応して消費税を上げる必要があるだろうと、私も考える。しかし、それならば15年後に増税すればいいだけの話で、今から増税すべき必要はどこにもない。』



 『基礎年金は、すべて税金で賄うべきだ』という。そして『その財源として消費税を当てるべきだ』と言う。 経団連や同友会、連合、そして民主党も「全額税による最低保障年金」を唱えている。

 しかし、消費税を年金財源とする前に、整理しておかねばならない問題がある。

文芸春秋新年号で権丈慶大教授が寄稿しています。その要点は、

 『従来、年金未納者には年金支給はしない仕組みになっている。今後もそうなら、未納者は消費税の負担だけして年金を貰えない。未納者も貰えるということにすると、現在年収1千万円以上の人のうち11%が未納者だという(国民年金)。そういう人にも年金支給することに国民は納得するか。

 次に、年金受給世代は、すでに保険料を完納していたのが、今後は消費税で新たに負担を求められることになる。

 更に、サラリーマンの負担が確実に増える。従来、事業主が負担していた保険料の分が、今度は消費税に置き換えるからです。だから、雇用税という形で企業増税をしないと、企業に対する大幅な減税になってしまう(内閣府試算で3.7兆円)。』
 『そして、現行の制度では、経済的弱者には、保険料免除のしくみがある。今後は、そういった低所得者も消費税増税の税負担を強いられる。

 基礎年金を全額消費税にするもっと大きな問題点は、医療や介護に回すべき財源まで年金に回すことになってしまいかねないことだ。 

 消費税を議論する前に、現在の税収の中で、社会保障に回す比率を高めること。日本のGDPに占める租税社会保障の割合は、OECD30カ国中26位だという。(日本より下は、韓国、トルコ、メキシコ)。ちなみに米国は25位です。』

 いずれも最もな問題点です。「年金の財源が必要だから、消費税引き上げは止むを得ない」という議論には、注意が必要です。(続く)