古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

日本政府の円キャリートレード

2007-11-16 | 経済と世相
 県体育館のプールで泳いで、帰途愛知県図書館に立ち寄りました。雑誌を見ていたら、野口悠紀雄さんがVOICE11月号に寄稿を寄せている。
 「円キャリートレード」についてです。この話題で2回ほど論じていますが、野口さんの問題提起「円キャリートレードが導く悪夢」も面白い。
【投機的取引を行っているのは、海外のファンドだけではない。じつは、日本政府がそれを上回る規模の投機的取引を行っている。大規模な為替介入を行った結果、100兆円を超す巨額の外貨準備が蓄積されているからである。これが、ほとんどドル建て債権なので、円キャリートレードと同じものである。つまり、円高になると巨額の損失が発生する。
 したがって、日本政府は是が非でも金利正常化と円高進行を食い止めなければならない。「円キャリートレードは投機的な取引なので望ましくない」といわれるが、じつは、日本政府こそが最大の円キャリトレードの実施者なのだ。
 こうして、日本政府は、「円高を望まない」という強いシグナルを市場に向けて発していることになる。つまり、「円キャリートレードは成功する可能性が強い」というメッセージを全世界に送っているのだ。】
【これまで外貨運用に慎重だった日本の個人も、このシグナルを見て、ついに外貨運用を本格的に始めるようになったようである。
『日本経済新聞』2007年3月31日の報道によれば、個人が保有する外貨建ての投資信託や預金などの外貨資産は、06年末に40兆円を突破し、生命保険会社の外貨資産より多くなった。20兆円を突破したのが03年9月なので、3年あまりで2倍になったことになる。】
【「国内で運用しても収益が上がらないから、海外に投資する」という状況は、決して望ましいものではない。なぜなら、それは祖国に対する信任の放棄だからである。・・・「キャピタルフライト」という事態は、これまで多くの人が予想しながら、現実のものにはならなかった。
 しかし、辛抱強い日本の国民も、ついに日本政府の経済政策に愛想を尽かし始めた可能性がある。】
【今回のサブプライムローン騒動は、現在の日本が抱えているこのような異常な金融構造が、何らかのきっかけで簡単に崩壊しうることを示した。
 アメリカにおけるサブプライムローンの債務不履行問題は終わったわけではない。・・・今後同じような問題が繰り返し起こる可能性が高い。また別の原因によって欧米の金利が低下しても、急激な円高と株価の下落という問題が生じる。
 深刻なのは、日本が金融政策を正常化するために金利を引き上げようとしても同じ問題に直面することだ。過去10年以上の異常な金融政策の継続によって、日本は金融を正常化しようとしても出来ない状態に追い込まれている。】
【金融のプロである日銀のスタッフは、このことを熟知しているのであろう。しかし、日本の産業構造が輸出産業中心から抜け出せないため、その利害に束縛されてこれまで円安政策を続けてきた。そして、それを利用した投機的金融取引が大規模に生じたため、袋小路に追い詰められてしまった。「金融を正常化しようとすれば円高になって日本経済が大崩壊する」という恐怖の前で、身動きができない。】
 今月も日銀は金利の引き上げを見送った。庶民の得べき預金金利は金融機関に流れ込み、そのお金は、金融機関のサブプライムローンによる損失を埋めるために使われています。