古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

上田篤さん(2)

2006-10-24 | 読書
 さて、本論の「一万年の天皇」です。後書きで、筆者はこう語っています。
【わたしは、(阪神・淡路大)震災をいろいろしらべた結果、「地震で死んだ人は
800人なのに、その5,6時間あとに、火災で死んだ人は4200人という大惨事になった原因は、大阪ガスが元栓を締めずにガスを流し続け、関西電力が各所の切れた電線を応急処置して電気を流したためあちこちで電流がショートしてガスに引火し火災をおこしたからで、それをゆるした行政当局の誤判断」と書いた原稿が没のされた・・。
 そういうマスコミに絶望したわたしは、しかたなしに『雑家』という月刊の「個人的政治評論雑誌」をつくって「阪神・淡路大震災」にとどまらず、日本社会のいろいろの分野の問題についてしらべ、自分なりの主張を書きつづけた。・・・
 そういう勉強をかさねてきて、わたしは日本の国をわるくしたのははじめは「政治家と官僚とマスコミだ」とおもったが、だんだん「学者が問題だ」とおもうようになった。・・・
 たとえばアメリカは現在の日本にとってふかい関係がある国なのに、アメリカの
片々たる情報は新聞・雑誌にいろいろ書かれているがその総体の研究となると
ほとんど見あたらない。だから「アメリカとはいったいどういう国なのか」ということがじつは庶民にもよくわからないのである。
 日本の文化人類学は世界中の未開社会の文化などをよくしらべているが、
現代アメリカの文化人類学は皆無にちかい。
 ところがそのうちに、そういう学問の体質はかならずしも学者の問題ではなく
「日本の歴史の問題だ」とおもうようになった。つまりある時期から、日本という国がまったくおかしくなってしまったのである。
 それはいわゆる「戦後民主主義の時代」をのみさすのではない。
 じつは140年まえの明治維新に決定的問題があったのだ。
 とすると、現代日本のさまざまの問題を解決するためには、明治維新にまで
さかのぼってもういちどかんがえなおさなければならない。・・・
 本書もそのひとつである。】
 「後書き」のあと「はじめに」を見てみる。
【昭和の敗戦後に日本の経済は成長したかもしれないが、反面、社会のモラルも
日本人の誇りも失われて、かつての日本では考えられなかったような奇々怪々な
事件がつぎつぎにおきる無責任社会となっている・・・問題の本質はここにある、
とおもう。】
【つまり現在の日本人から日本文化が失われたことだ。皇位継承問題をめぐる「迷走論議」は、はしなくもそのような問題の一端を露呈したにすぎない。
 明治維新を形容してよくいわれる「和魂洋才」とは、じつは近代史学者のあいだ
では明治10年までの話であって、それ以後は「洋魂洋才」あるいは「無魂洋才」になった、といわれている。】



上田篤さん

2006-10-24 | 読書
 本屋をのぞいたら『一万年の天皇』(文春新書)という新刊がでていた。
著者は上田篤さんです。早速買い求めました。何故購入したのか、話は30年ほど昔に遡ります。

 昭和52年、トヨタ自動車が創立40周年記念事業として、車あるいは企業についての論文を一般公募しました。一席の論文には200万円の賞金を出すというのです。
 「よしっ!チャレンジしよう」と「私の企業論」を書き綴り応募しました。
 余談ですが、当時はPC等という便利な文房具はなくて、すべて手書きですから
手間はたいへんでした。
 何しろ200万円です。そんなに簡単にGET出来るほど世の中甘くない。一席にはなれませんでした。が、「佳作」に入選しました。
 さすがにトヨタさんです。「佳作」にも賞金が出ました。50万円(税込みでは¥555、555)でした。
 30年前の50万円は、私の感じでは、今日の百万円以上の使いでがあった。この年はボーナスを一回余分にもらった思いでした。
 で、その時一席に入選したのが、当時阪大助教授の上田篤さんです。この上田さんの入選論文を読んで「やはりプロは違う。上田さんだけあって、「私よりは一枚上だ」
と感服しました。(この入選論文は、その後、中公新書として刊行されました。『くるまは弱者のもの』)
 この時、「上田篤」という名前が、私の脳裡にインプットされたのです。
 上田さんは「建築学」を専門とする学者ですが、その後京都大学教授となり(現在は京都精華大学名誉教授)、総合雑誌にかずかずの論文を発表する日本の論客の一人になりました。発表論文の内容からすると「建築学」というより「文明論」の専門家のように、私には思われます。
 トヨタの論文以後、上田さんの新刊は出るたびにチェックすることにしているのです。

 以上が本を買った理由ですが、悠仁親王の誕生で棚上げになった観がある「天皇の男系・女系論」、尊敬する上田さんは、どう述べているか、期待して読み始めました。

 この本、「後書き」と「はじめに」が一番面白かった。(続く)