shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

My Bonnie / The Beatles

2016-08-20 | The Beatles
 イギリスでビートルズが “始まった”、いや、始まる “きっかけとなった” 記念すべきレコードは、トニー・シェリダンのバックバンドとしてハンブルグでレコーディングしたこの「マイ・ボニー」だ。 “ポリドール・セッション” と呼ばれるこのレコーディングは昔、安っぽいイラストのジャケットで「ビートルズ1961 ~ロックンロール・フォーエヴァー~」という国内盤LPで出ていたが、リード・ヴォーカルがほとんどトニー・シェリダンだということで触手が伸びず、結局ちゃんと聴いたのは「アンソロジー1」が最初だった。
 入っていたのは3曲で、秀逸なロックンロール・アレンジがインパクト絶大な「マイ・ボニー」、荒ぶるジョンのヴォーカルがたまらない「エイント・シー・スウィート」、ビートルズがシャドウズごっこに興じる珍インスト「クライ・フォー・ア・シャドウ」と、そのどれもが十分傾聴に値する好演で、 “トニー・シェリダン関連の音源もエエやん(^.^)” と、「アンソロジー」CDを聴きながらすっかり満足していた。
 そんな私が「マイ・ボニー」のオリジナル・シングル盤に興味を持ったきっかけは、先々月にビートルズ来日50周年記念としてNHKで放送された「ビートルズをつくった男」というドキュメンタリー番組だった。何でも初回放送は2004年とのことだが、私としては初めて見る番組で、“マネージャーとしてビートルズを支え32歳で死去したブライアン・エプスタインの生涯を劇作家マキノノゾミがたどる” という内容だ。
 この劇作家のオッサンがかなりのビートルズ好きで、アビー・ロードを始めストロベリー・フィールズやペニー・レイン、キャヴァーン・クラブといったビートルズゆかりの地を巡りながらエプスタインに思いを馳せるという流れで進行するのだが、そんな中で一番印象に残ったのが、当時エプスタインの店で「マイ・ボニー」を買ったというファンの女性(←御年60才のごっついオバチャン)宅への訪問だった。
 レコードを買ったのは17才の時だったと回想しながら彼女が取り出したのはオレンジ・スクロール・レーベルのポリドール盤で、ここ1~2年ほどシングル盤にハマってビートルズのUKシングル盤をほぼ手に入れた気になっていた私は思わず身を乗り出して画面に見入ってしまった。“これが当時のファンがリアルタイムで聴いていた「マイ・ボニー」のシングルか…” と思うと感慨深いものがあったし、年季の入ったプッシュアウト・センター型のシングル盤を見た瞬間に “これは絶対凄い音が入ってるやろなぁ... (≧▽≦)” という予感がしたのだ。私は是非とも自分の耳でこのレコードを聴いてみたい、という衝動に駆られた。
 そこで早速イーベイで検索してみたのだが、出品されてるのはアメリカのMGM盤がほとんどで、それ以外はドイツ盤と日本盤ぐらいしかなく、肝心のUK盤は薄っぺらそうなカラー・ビニールの再発盤しかない。アレってそんなにレアやったんか...(゜o゜)  しかも商品説明を読んでみると、「マイ・ボニー」には何と “German Intro” “English Intro” “No Intro” の3種類のヴァージョンが存在するらしい。
 このレコードは元々ドイツ盤(NH24673)がオリジナルなのだが序奏部分の歌詞がドイツ語で歌われている “German Intro” ヴァージョンなんて要らないし、MGM盤(K13213)はスローなイントロ無しでいきなりアップテンポで始まるという無神経な編集が気に入らない。もちろん日本盤やカラー・ビニール盤なんて論外だ。何としてもイントロ部分も英語で歌われている完全版をUK初期プレス盤(NH66833)の野太い音で聴きたい私は毎日イーベイをチェックしながらお目当てのブツが出るのを待った。
 それから10日ほどが経ち、ついにUK盤が出品された。初回盤の証であるオレンジ・スクロール・レーベルだが、何故かプッシュアウト・センター部分が無い。よくよく見ると4曲入りのEP盤(21610)だ。説明を読むと、イギリスへの輸出用にドイツでプレスされたものだという。イギリス用なので当然 English Intro だ。63年リリースの45回転モノラル盤ならさぞかしごっつい音が入ってるだろうし、「マイ・ボニー」だけでなく「暗い方は車道」まで入ってるなんて超お買い得だ。オークションは£15スタートだったが、私は5人のライバルを蹴散らして £24(3,240円)で落札した。
 届いたレコードの音はまさに “若さ溢れるエネルギーの爆発” そのもので、スローから一転アップテンポへと変わる瞬間に “ジャッ ジャッ ジャッ ジャーン!!!” と炸裂するギター・ストロークの何とカッコ良いことよ(^o^)丿  ヴォーカルがジョン・レノンだったらどんなに良かっただろうかとは思うが、「ザ・セインツ」で劣化版エルヴィスみたいな歌声を聞かせるトニー・シェリダンも「マイ・ボニー」では力の限りロックしているし、ビートルズのパンキッシュな演奏が生み出すエネルギーの奔流は聴く者を圧倒する。まさに “これがビートルズだ、文句あるか!” と言いたくなる極めつけのガレージ・ロックンロール。ひょんなきっかけでエエ買い物ができてラッキーラララだ。
The Beatles My Bonnie (mono) English intro