shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Let It Be (UK 初回盤) / The Beatles

2016-08-13 | The Beatles
 私は政治や経済のことはサッパリ分からないし、そもそも何の興味もない。トランプがスベろーがメルケルが転ぼーが知ったこっちゃない。しかしイギリスのEU離脱だけは話が別で、ポンドとユーロの大暴落による相対的な円高は、私のように海外オークションで細々とレコードを買っている貧乏コレクターにとっては、普段なら高すぎてとても手が出ないような垂涎盤をゲットする千載一遇のチャンスなのだ。
 ビートルズのアナログLP蒐集家にとって、一口に垂涎盤と言っても、金パロやブッチャー・カヴァーといった定番の王道アイテムからシェル・カヴァーやエスキモー・カヴァーといった稀少盤、そしてUKパーロフォンのエクスポート盤のような超マニアックなアイテムに至るまで、ターゲットは人それぞれだろう。
私の場合は「レット・イット・ビー」の写真集付きUK初回版ボックス・セットがまさにそれで、以前からマト枝番 -2U/-2U で裏ジャケがレッド・アップル・ロゴの1stプレス盤を聴いてみたくてたまらなかったのだが、何と言ってもイーベイでの通り相場が $300~$500でユニオンの買い取り価格に至っては10万円という鬼レア・アイテム。所詮は “高嶺の花” と諦め、 -2U/-3U でグリーン・アップル・ロゴの2nd プレス盤で妥協していた。
 しかしイギリスのEU離脱による為替レートの大変動でポンドが暴落すればひょっとしてひょっとするかもしれない。私は万が一に備えて(笑)国民投票の1週間ぐらい前からイーベイをこまめにチェックし始めた。う~ん、やっぱり高いなぁ… 状態の良いブツを安く手に入れるにはかなりツキに恵まれないと厳しそうだ。当然ポンドの暴落はその必須条件である。
 そしていよいよ運命の6月24日がやってきた。午後の仕事を一通り終えてパソコンを開き、ヤフー・ニュースを見ると「イギリス、EU離脱決定」とある。 “やったー!” と小躍りしながら為替レートを確認すると、何と1ポンドが158円から138円まで20円も急落しているではないか! 確か半年前は180円台やったのに... まさに “しめしめ”、である。後はただ、良い出物に巡り合えるのを気長に待つだけだ。
 それから1ヶ月が経ち、ついにお目当ての「レット・イット・ビー」初回盤が £50 スタートで出品された。へ?何でそんなに安いん?と思って説明を読むと、箱が無い上に、写真集はコピーライトの訂正シールを貼った改訂版だから、ということらしい。まぁ由緒正しいコレクターなら間違いなく敬遠するのかもしれないが、箱なんてレコードを聴くのには邪魔なだけなので別にどーでもいいし、箱があればそれだけで値段が数百ポンドにハネ上がってしまうのだから私的には却ってこの方が都合がいい(^.^)  EXコンディションの -2U/-2U盤にこれまた状態の良い写真集が付いてこの値段なのだからコスパ的には最高だ。それからの9日間は値段が上がらないかと気が気ではなかったが、結局強力なライバルは現れず、私はついに念願のレッド・アップル・ロゴ盤をゲット。1ポンド137円で、送料込みでも8,800円だった。
             

 届いた盤はB③のごく一部で数回プチプチ音が入る以外は全く問題ナシで、実に深みのある良い音で鳴ってくれる。これが憧れのUK 1st プレスの音か...(^_^)  調子に乗った私は手持ちのUK 2nd プレス盤、そして Phil+Ronnie 刻印で有名なBell SoundのUS 1st プレス盤と聴き比べをしてみることにした。
 立て続けに3枚聴いての感想としては、まず第一にUK盤とUS盤の音作りの違いが鮮明になったということ。ジョンの「パワー・トゥ・ザ・ピープル」や「イマジン」のUS盤でも顕著だったように、このUS盤「レット・イット・ビー」でも Bell Sound のカッティング・レベルは高く、ハイ上がりで “とっても元気のいい音” なのだが、音空間は狭くてやや平面的に聞こえる。一方、UK盤の方は1stプレス も 2ndプレスも共に中域を中心にバランスよく安定した深みのある音だ。ショボイ音の国内盤を聴いて育った私の耳にはUS盤も決して悪くはないのだが、上には上があるということで、私の好みは断然UK盤の音だ。
 そして一番興味があったのがUK盤の 1stプレス(-2U/-2U) と 2ndプレス(-2U/-3U)の兄弟(?)対決。同じタイトルでマトリクス・ナンバーの違う盤を個人で比較できる機会なんてそうそうあるものではない。A面のマトは同じ -2U なので、枝番が1つ違うB面で -2U vs -3U の聴き比べをしてみることにする。
 同じ曲を数回ずつ繰り返し聴き比べてみたところ(←これって結構疲れます...笑)、やはり -2U盤の方が中低域が太く、各楽器の音の生々しさもめっちゃリアル。まるでビートルズがリスニングルームに出前に来てくれたかのようなリアリティー(←来るかそんなもん!)で、気分はすっかりルーフトップの特等席だ。特にB①ではベースの押し出し感が強烈で腹にズンズン響いてくるし、B②でもポールの極太ベースが演奏全体の躍動感をアップさせていて実に気持ちがイイ(^o^)丿
 ただしこれはあくまでも神経を集中して重箱の隅をつつくようなイビツな聴き方をした結果であり、普段聴きでは -3U盤でも十分すぎるくらいの高音質で、シャープなドラム音のキレ味といい、闊達に動き回るベースのグルーヴ感といい、US盤や国内盤を遥かに凌駕している。聞くところによると、マト枝番 -3UまでのUK初期プレス盤は真空管のアンプを使ってカッティングされていたとのこと。なるほどね(^_^)  今回の聴き比べの率直な感想としては UK 1st > UK 2nd >>> US 1st >>>>> 国内盤、といったところか。
 憧れの「レット・イット・ビー」UK 初回盤をついに手に入れることができ、この音をこれから先ずーっと聴いていけるのかと思うと嬉しくてたまらない。とにかく音に拘るビートルズ・マニアならB面だけでも大枚をはたく価値は十分にあると思うし、UK盤ならではの美麗コーティング・ジャケットを眺めて悦に入る満足感もUS盤や国内盤では決して味わえないものだ。イギリスさん、EUさん、ケンカしてくれて本当にありがとう! せっかくやからもっともっと揉めて £1=100円ぐらいにまで落ち込んでくれたらエエのにな...(笑)
The Let It Be Box Set

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