shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ジョンの「ロックンロール」ルーツ特集②

2016-03-13 | Oldies (50's & 60's)
①You Can't Catch Me / Chuck Berry
 チャック・ベリーの「ユー・キャント・キャッチ・ミー」という曲は「カム・トゥゲザー」の元ネタとして有名になった曲である。ジョンが「ロックンロール」でカヴァーしたヴァージョンを聴いた時にはそのカム・トゥゲザーなアレンジ(笑)のせいか(←Aメロなんかそっくりやん...) “こりゃアウトやわ(>_<)” と思ったものだったが、その後かなり経ってからチャック・ベリーのオリジナル・ヴァージョンを聴いた時には、「マイ・スウィート・ロード」と「ヒーズ・ソー・ファイン」みたいな瓜二つのヴァージョンを想像していた私としては、確かに曲想が似ているところもあるにはあるがテンポの違いもあってか目くじら立てて騒ぐほど似ているとは思えなかった。
 しかし尊敬するチャック・ベリーへのオマージュとしてジョンがアダプトした歌詞の一節 “Here comes old flat-top♪” が仇となり、裁判で敗色濃厚と悟ったジョンが「ロックンロール」にこの曲の版権を持っているモーリス・レヴィ絡みの曲を3曲入れることで示談にするハメになったという経緯は皆さんご存知の通り。 かように “パクリ” と “オマージュ” の線引きというのは難しい(>_<)
 この曲はチャック・ベリーのデビュー曲「メイベリーン」から59年の「バック・イン・ザ・USA」までの21枚のシングルの内で全米ホット100にもR&Bチャートにもランク・インしなかった唯一の曲で(←もっとつまらん曲でもチャート・インしてるのに不思議やわ...)、あまり売れなかったせいか数あるチャック・ベリーのシングル盤の中で「カム・オン」(←ストーンズがデビュー・シングルでカヴァーした曲)に次いで入手が難しかったのがこのレコードだ。だから去年の秋に2ヶ月ほどeBayで網を張り、運良く BUY IT NOW で出品された直後にポチってピカピカ盤を$10.00でゲットできた時はめっちゃ嬉しかった。尚、この盤(Chess 1645)はオリジナルと同じくチェスの駒を描いたシルバートップのレーベル・デザインで再発されているのだが(←こーゆーの、ホンマに迷惑なんよね...)、オリジナル盤のB面は「ハバナ・ムーン」なのに対し再発盤のB面は「ダウンバウンド・トレイン」なのでコレクターの皆さんは騙されないように気を付けましょう。
Chuck Berry -"You Can't Catch Me" (From the 1956 film Rock, Rock, Rock!)


②Slippin' And Slidin' (Little Richard)
 「スリッピン・アンド・スライディン」のオリジナルはリトル・リチャードだが、一般に広く知られるようになったのはジョンが名盤「ロックンロール」でカヴァーしてからだろう。私のこの曲との出会いはもちろんジョンのヴァージョンなのだが、アルバム「ロックンロール」のA面を聴き終えて盤を裏返し、B面1曲目に置かれたこの曲が始まった瞬間にスピーカーから迸り出る怒涛のロックンロールにブッ飛んだのを今でもよく覚えている。それにしても何とカッコ良い演奏だろう! ノリノリで猥雑でド迫力... まさにロックンロールを歌うために生まれてきたようなジョン・レノンという男の真骨頂といえる必殺の名カヴァーだ。シングル・カットしたわけでもないのにプロモーション・ビデオまで作るという熱の入れようからもジョンがこのカヴァー・ヴァージョンの出来に絶対的な自信を持っていたことが分かろうというものだ。
 この「スリッピン・アンド・スライディン」はリトル・リチャードにとって「トゥッティ・フルッティ」に続くスペシャルティ・レーベルでの2枚目のシングル「ロング・トール・サリー」(Specialty 572)のB面に収められていた曲で、ビートルズは69年のゲット・バック・セッションでこの曲をジャムっており、彼らお気に入りのロックンロール・クラシックスの一つだったことが窺える。50年代スペシャルティ・レーベルで状態の良いシングル盤を見つけるのは難しいのだが、私はラッキーなことにVG++の盤を$7.00で買うことができた。
1956 HITS ARCHIVE: Slippin' And Slidin' - Little Richard (correct single version)


③Peggy Sue (Buddy Holly)
 バディ・ホリーはチャック・ベリーやリトル・リチャードと並んでビートルズに多大な影響を与えたアーティストである。そもそもビートルズというバンド名からしてバディ・ホリーのクリケッツにインスパイアされたものだし、彼らの “3コードをベースに、立って楽器を弾くバンド”というスタイルの源流はバディ・ホリー&ザ・クリケッツだったとポール自身が語っている。しかもポールは76年にホリーの楽曲の版権を取得し、バディ・ホリー・ウイークというイベントまで開催しているのだ。一方ジョンはアルバム「ロックンロール」で「ペギー・スー」をカヴァーし、イントロの雷鳴の如きドラミングやパワー・コードによる圧倒的なドライヴ感、そしてホリーの専売特許であるヒーカップ唱法を見事に再現し、ポールに負けず劣らずの “バディ・ホリー・マニア” ぶりを発揮している。
 このようにジョンやポールを夢中にさせたバディ・ホリーの一番の魅力はカントリーやR&Bのフレイバーを活かした軽快なロカビリー・サウンドにあり、時代の最先端を行くコンボ・スタイルでそのリズミックなポップ・フィーリングを表現した点に尽きると思う。そういう意味で、バディ・ホリー直系と言ってもいいエヴァリー・ブラザーズからもビートルズが多大な影響を受けたのは大いに頷ける話だ。
 バディ・ホリーのレコードはアメリカでは「ザットル・ビー・ザ・デイ」や「イッツ・ソー・イージー」のようにザ・クリケッツ名義のものはブランズウィック・レーベルから、「ワーズ・オブ・ラヴ」やこの「ペギー・スー」のようにバディ・ホリー単独名義のものはコーラル・レーベルから(←どちらもデッカの傍系レーベル)リリースされている。「ペギー・スー」(Coral 9-61885)のファースト・プレスではコンポーザーのクレジットにバディ・ホリーの名前が入っておらず、60年代プレス以降の盤から入るようになったというからややこしい。私が買ったのはオレンジ・コーラルの初版で、NM状態の盤が$5.00だった。
Buddy Holly, Peggy Sue (with lyrics).wmv