shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

24 Karat Hits / Elvis Presley

2014-07-06 | Oldies (50's & 60's)
 スティーヴ・ホフマンがリマスターを手掛けたDCC盤、特に90年代にリリースされたGZSシリーズのCDは分厚い中低域とエネルギー感に満ちた押し出しの強いサウンドが私の嗜好にピッタリで、ここ数ヶ月の間にガンガン買い漁って大音響で楽しんでいることは前にも書いた通り。DCC盤はポールのソロ作品を始めとして70年代の名盤がカタログの中心になっているのだが、50~60年代の音源の中にもホフマン・リマスタリングによって見事によみがえったアルバムが何枚かある。そんな中でも断トツに凄かったのがエルヴィス・プレスリーの「24カラット・ヒッツ」だった。
 このアルバムは1956年から1969年までのエルヴィスのヒット曲を集めたベスト盤で、DCC盤の売りの一つである24K蒸着ゴールドCDに引っ掛けて24曲が収録されている。選曲の方は相変わらず十年一日の如しで、初期の「ハートブレイク・ホテル」「ハウンド・ドッグ」「監獄ロック」「ラヴ・ミー・テンダー」から中期の「今夜はひとりかい」「リトル・シスター」「好きにならずにいられない」、そして後期の「イン・ザ・ゲットー」「サスピシャス・マインド」に至るまでお馴染みのナンバーばかりが選ばれているので、手持ちの2枚組ベスト盤CD「トップ10ヒッツ」とどこがどう違うのか聴き比べてみることにした。エルヴィスのCDはモコモコした音の盤が多いので、名匠スティーヴ・ホフマンのお手並み拝見といったところだ。
 CDの1曲目は「ハートブレイク・ホテル」だが、 “Well, since my baby left me ~♪” とイントロ無しでいきなりスピーカーから飛び出してくるエルヴィスのヴォーカルの生々しさにビックリ(゜o゜)  まるで目の前で歌っているかのようだ。彼の十八番である“ベイベー♪”の響きも実に艶めかしい。そしてそんなエルヴィスの歌声に絡んでいくビル・ブラックのウッド・ベースの何とカッコ良いことよ! 通常盤CDでは “ボン、ボン” と平面的に聞こえるベースの音がこのDCC盤では “ドスン、ドスン” と立体的に聞こえるのだ。更にエンディングのソロ・パートではウッド・ベースならではの “ブルン、ブルン” という響きがリアルに楽しめるのだからたまらない(≧▽≦)  物憂げなピアノが醸し出す神秘的な雰囲気も鳥肌モノだ。とにかくこのオープニング・トラックを聴いただけでDCC盤を買って良かったと思った。
ハートブレイクホテル


 因みにビル・ブラックが愛用していたウッド・ベースの現在の所有者は何とポール・マッカートニーだ。何でもリンダがビルの遺族からこのベースを手に入れてポールにプレゼントしたのだという。ポール・ファンには「ケイオス・アンド・クリエイション・アット・アビーロード」の30分過ぎあたりでポールが自慢げに紹介していたあのウッド・ベースと言えばピンとくるかもしれない。アップライト・ベースをつま弾きながら「ハートブレイク・ホテル」を歌うポールにシビレますわ...(^.^)
Paul McCartney on the Upright Bass


 3曲目の「冷たくしないで」もやはりイントロのベースが凄い。まるでヘビー級ボクサーのボディーブローのようにズンズン腹にくるこの感じは通常盤CDでは決して味わえないものだ。こういうウッド・ベースが聴けるのもロカビリーの醍醐味だろう。因みに私はロックだけではなくジャズも聴くのだが、ジャズの大きな魅力はロックのエレキ・ベースでは決して味わえないアコースティック・ベースのリアルな響きにあると思っている。
冷たくしないで


 凄い音がいっぱい詰まったこのDCC盤の中でも最も強烈なインパクトがあったのが4曲目の「ハウンド・ドッグ」だ。とにかく音の密度がハンパなしに高く、パワフルな音の塊がスピーカーから迸り出てくるのがたまらない(≧▽≦)  特にハンド・クラッピングの生々しさは凄まじく、スピーカーに対峙して大音量で聴いているとまるで往復ビンタで顔面をシバかれているようで思わず顔をそむけたくなってくるし、DJフォンタナの爆裂ドラミングも圧巻の一言だ。CDというメディアでオリジナルLPの持つ荒々しさをここまで表現できるとは、スティーヴ・ホフマン恐るべしである。
ハウンドドッグ


 このDCC盤はパワフルなロックンロールだけでなくロマンティックなスロー・バラッドも絶品で、13曲目の「今夜はひとりかい?」なんかもう通常盤CDとはヴォーカルのリアリティーが桁違い。こんな風に口説かれたら女性はイチコロやろなぁ... って思えるカッコ良さで、正直言って男の私でもグラッときそうなぐらい(笑)説得力があるのだ。23曲目の「イン・ザ・ゲットー」でもストリングスの響きが通常盤とは全く別物と言ってもいいくらいナチュラルで、エルヴィスの歌声の深みも月とスッポンほど違う。思わず頭を垂れて聴き入ってしまう歌と演奏だ。とにかくロックンロールであれスロー・バラッドであれ、スティーヴ・ホフマンがエルヴィスの魅力を極限まで引き出してディスクに封じ込めたこのDCC盤、エルヴィスをどれか1枚というなら迷わずコレだ!
今夜はひとりかい

インザゲットー
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