shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Let It Be 南アフリカ盤

2016-11-06 | The Beatles
 私は何事においても実際に自分の目や耳で確かめるまでは絶対に信用しない主義なのだが、一旦それが良いモノだと納得すれば今度はとことんまで極めないと気が済まない。「ラバー・ソウル」のUKオリジナル・モノ・マト1盤に衝撃を受けてからというもの、私は“ラウドカット”という言葉を聞いただけでパブロフの犬みたいに条件反射でモチベーションのスイッチが入る体質になってしまった(笑) 「ウィズ・ザ・ビートルズ」しかり、「バンド・オン・ザ・ラン」しかり、「エスキモー・カヴァー」しかりで、ラウドカット盤というだけでアドレナリンが出まくるのだ。
 ご存知のようにビートルズの公式オリジナル盤のうち、ラスト2枚の「アビー・ロード」と「レット・イット・ビー」にはモノラル盤が存在しない(←音の悪いブラジル盤とかは論外です...)。爆音好きの私はこの2枚もモノラルのごっつい音で聴いてみたいなぁ(←音楽的にはモノラルに超不向きやけど...)と常日頃から考えていたのだが、そんな折、ビートルズ・コレクターのサイトみたいな所で気になる内容の記事を発見。それによると、「レット・イット・ビー」の南アフリカ盤 1stプレスはマト枝番が -1/-1 で、何とUKのテスト盤に使われたスタンパーでプレスされており、以前このブログでも取り上げたUKボックス・セット付属の初回盤(-2U/-2U)よりも音圧が高いラウドカット盤の可能性があるというのだ。イギリス本国でボツになったスタンパーが海外に送られたというのはにわかには信じがたい話だったが、火のないところに煙は立たないともいうし、万が一それが本当だったとしたらえらいこっちゃである。これは何としても確かめなければならない(←何でやねん!)。しかし南ア盤は例の「ヘイ・ジュード」で失敗した過去がトラウマになっているのでどうしても眉に唾をつけて見てしまう。それにその時はまだ他に欲しい盤が山ほどあったこともあり、何やかんやで後回しになったまま私の記憶の中でいつの間にかフェードアウトしていった。
 それから何年も経った今年の6月、例のポンド暴落を機に「レット・イット・ビー」のUK盤ボックス・セット入手を画策した時に、その副産物(?)として “Let It Be South Africa One Box EMI” という商品タイトルで出品されていた南ア盤も私の網(“beatles let it be box” というキーワードで登録)に引っ掛かってきたのだ。おぉ、これはもしや、と思ってマトを確認すると YEX 773-1 / YEX 774-1 となっている。商品説明には “TOP AUDIO COPY”や“SUPERB SOUND REPRODUCTION”といった魅力的な表現が並んでおり、理性という名のブレーキを木端微塵に破壊された私は£12.99という安さもあって迷わず買いを決めた。
 私は“ホンマに「レット・イット・ビー」にラウドカット盤なんてあるんかいな...”と疑いながらも心のどこかで “もしあったら世界がひっくり返るなぁ(←そんな大袈裟な...)” とハラハラドキドキしながら届いたレコードをターンテーブルに乗せた。A①「トゥー・オブ・アス」のアタマの部分でジョンの例のジョーク “I dig a pigmy...” に続いてリンゴのドラムがさぞかしバシッ!!!とシャープに炸裂するのかと思いきや、力なくペシッという感じで思いっ切り肩透かしを喰らう。“リンゴ、眠たいんか!” と言いたくなるようなかったるい音で、ヴォーカルもギターもどこをどう聞いてもラウドカットではないし、ましてやマト-2Uを凌駕する生々しさなど微塵も感じられない。
 慌てて針を上げてUK初盤と聴き比べてみるとその差は歴然で、UK盤では音像が3次元的にパーッと広がって眼前に屹立するのに対し、この南ア盤では音が平面的でスピーカーにまとわりつくように鳴っており奥行き感があまり感じられない。低音はそれなりに出ているのでアンプのヴォリュームを上げてやるとB①②のようなロック曲ではポールのベースがボディーブローのように効いてきて面白いしB④のジョンのスライドギターもマッタリ感満点で楽しいのだが、やはり高域がスキッと突き抜けないために全体的にどんよりした脱力系(?)のサウンドになっているのだ。そういう意味では切れ込み重視で元気ハツラツな音を聴かせるBell SoundのUS盤とは対極に位置する音作りと言えるだろう。
 結局「レット・イット・ビー」南ア盤のラウドカット説はガセだということが判明したが、このアルバムが内包している “ちょっと疲れたビートルズ” 的な空気に浸りたい気分の時には合いそうな緩~いサウンドなので、同じ南ア盤の「ヘイ・ジュード」のように隣室行きにはせず、レコード棚のビートルズ・各国盤コーナー末席に置いておくことにした。それにしても「レット・イット・ビー」だけで一体何枚買うたら気ぃすむんやろ...

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