shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

【BN祭り③】At the Hickory House / Jutta Hipp

2023-08-06 | Jazz

 ブルーノート・レーベルの本流は2管3管のハードバップ・ジャズであり、ピアノトリオはどちらかというと傍流的な存在である。しかしそれらピアノトリオ盤のレベルは非常に高く、前出のパウエル「The Scene Changes」を始め、Horace Parlanの「Us Three」やSonny Clarkの「Sonny Clark Trio」など、珠玉の名盤が目白押し。今回取り上げる「Jutta Hipp at the Hickory House」(Vol.1とVol.2の2枚に分けてリリースされている)も知名度はやや低いものの、ピアノトリオ好きにはたまらないレコードだ。
 このアルバムは元々愛聴曲の「Dear Old Stockholm」目当てでCDを購入したのだが、いきなりA①「Take Me In Your Arms」の凄まじいまでのノリに完全KOされた。エド・シグペンの変幻自在のブラッシュ・ワークが生み出す強烈無比なスイングが超絶気持ち良くて私のスイートスポットを直撃したのだ。逆にA②「Dear Old Stockholm」はスウェーデン民謡である原曲通りのスロー・テンポな演奏でちょっと肩透かし。もう少しテンポを上げてパウエルの「イン・パリ」みたいにガンガン弾いてくれたらよかったのに... しかし収録曲の大半はミディアム以上の小気味よいテンポで軽快にスイングするピアノトリオ・ジャズが楽しめて言うことナシだ。続編といえる「Vol.2」も「Vol.1」同様の素晴らしさで、A①「Gone With The Wind」やB①「I Married An Angel」なんかもうエド・シグペンの “ブラッシュ・パラダイス”(笑)という感じで、ブラッシュ大好き人間の私は顎が落ちそうだ(≧▽≦)
Take Me In Your Arms - Jutta Hipp

Gone With The Wind - Jutta Hipp


 そういうわけで本当ならレーベル表記が Lexington の1stプレス盤が喉から手が出るほど欲しかったのだが、激レアすぎて(←おそらくあまり売れなかったのだろう...)めったに市場に出てこないし、出てきたとしても10万円超えという無慈悲な値付けがほとんどで、貧乏な私には到底手が出ない。ブルーノートには前回取り上げた「J.R.Monterose」を始めとして、グリフィンの「A Blowing Session」やソニー・クラークの「Dial S For Sonny」など、“50年代にリリースされた後、なぜか60年代には再発されず、70年代に入ってようやくUA表記で2ndプレス盤が出た” という恨めしいレコードが何枚もあるのだが、悲しいことにユタ・ヒップのこのライヴ盤もそんなコレクター泣かせの1枚なのだ。
 私はブルーノートが1966年にLibertyに買収された後の “Liberty”表記盤や “United Artists” 表記盤には強い偏見を持っていて、基本的には購入対象になりえない。しかし上記のような “UAが2ndプレスの盤” に関しては背に腹は代えられず、“70年代プレスでもモノラル盤やったらひょっとして大丈夫かも...” という希望的観測でもって何枚か購入。このユタ・ヒップ盤もそんな1枚で、RVG刻印はないものの私が予想していた以上の良い音で鳴ってくれてホッと一安心。音の鮮度や空気感のようなものはイマイチだが、モノラル音源特有のエネルギー感はそれなりに伝わってきて、もっと薄っぺらくてショボい音を予想していた私は “値段を考えたら上等やん...” と喜んでいた。
 それからかなり経って例の “プレミアム復刻シリーズ” がディスクユニオンから発売され、前回取り上げた「J.R.Monterose」と一緒にユタヒップ盤も購入したのだが、JR盤が “ハズレ” だったのに対し、2枚のユタヒップ盤は “当たり”。何よりもまず音の情報量がハンパなく、トリオのスイング感が加速されているように思えたほど。私が買った “プレミアム復刻シリーズ” には “ハズレ” が少なくないが、それはフラット・トランスファーによってRVGが得意とする2管3管のハードバップ・ジャズにかけた “音の魔法” が解けてしまったからなのではないかと思っている。逆にブラッシュ主体のピアノトリオには “プレミアム” の音作りが上手くハマったのだろう。
 ということで、今回の聴き比べは全く異なる音作りの方向性がそれぞれの音に反映されており優劣付け難い。このレコードにクリアネスを求めるならプレミアム復刻盤、モノラルらしいエネルギー感を求めるならUA盤ということになるだろうか。結果として2種類の異なった音作りで大好きなピアノトリオが楽しめるので、このユタ・ヒップ盤に関しては両方買って正解だったと思っている。もちろんチャンスがあればオリジナル1stプレス盤の音を聴いてみたいが、宝くじでも当たらん限りちょっと無理っぽいなぁ...
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