ジャズには様々なスタイルがあるが、私が最も好きなのはハードバップである。1940年代に隆盛を極めたビーバップではリズムセクションが単なる伴奏者として背後に押しやられていたのに対し、その発展形ともいえるハードバップではドラマーが前面に出てきてフロントのソロイストを猛プッシュ。彼らと丁々発止のインタープレイを行うことによって、演奏全体の熱量が大幅にアップし、黒人ならではの粘っこいグルーヴとの相乗効果もあって、まさにモダン・ジャズの王道とでもいうべきスタイルとして完成したのだ。もちろんウエストコーストや中間派の中にも大好きなミュージシャンは一杯いるが、手持ちのレコードの枚数を数えるまでもなく、私の中では “ジャズ≒ハードバップ” なんである。そして私がそれほどまでにハードバップにハマる決定打となったアルバムこそ、何を隠そうこの「Sonny Rollins Vol. 2」なのだ。
このアルバムとの出会いはジャズを聴き始めて2~3年ほど経った頃だったと思うが、それまでチェット・ベイカーやレッド・ガーランドといった “軽やかにスイングする” ジャズばかりを聴いてきた私にとって、「Sonny Rollins Vol. 2」というアルバムはまさに衝撃そのものだった。中でもとりわけインパクトがデカかったのがアルバムの1曲目を飾る「Why Don't I」だ。
とにかくこの曲ほどジャズの熱気を感じさせる演奏を私は他に知らない。ハードバップを体現するドラマー、アート・ブレイキーの豪快なドラミングに煽られてフロントのロリンズとJJジョンソン(トロンボーン)が吹きまくるという理想的な展開なのだが、私が特に好きなのは、ノリにノッたロリンズがドラムとのバースを間違えて吹き始めてしまい、すぐに別のアイデアを出してそれをリカバーするところで(←まるで何事もなかったかのように演奏を続けるブレイキーも凄い!)、これをOKテイクにしてしまうあたりに “細かいことは気にせずに大きなノリを優先する” というロリンズらしさが現れているし、そういったスポンティニアスでスリリングな展開が見事に音溝に刻まれているところがジャズの醍醐味だと思う。太いトーンで響き渡るロリンズのテナーや飛び散る汗が目に浮かぶようなブレイキーのドラミングはまさに “ブルーノートのヴァンゲルダー” ならではの音作りだ。
Why Don't I
続くA②「Wail March」も “これぞハードバップ!!!” と ! を3つも付けたくなるぐらい熱い演奏が展開されていて大好きだ。ブヒバヒ吹きまくるJJとロリンズを背後からプッシュしまくる鬼神ブレイキーの爆裂ドラミングがたまらない(≧▽≦) まさに “ジャズ界のジョン・ボーナム” と言っても過言ではない煽りっぷりだ。
Wail March
私が同じタイトルのレコードを何種類も買うのは超の付く愛聴盤に限るが、このレコードの場合も3枚所有している。まず最初に買ったのが60年代半ばにプレスされたと思しき “NEW YORK USA” 表記の盤で、大阪のレコ屋でニアミントなピカピカ盤を 12,000円で購入。更に Classic Records からバーニー・グランドマンのマスタリングによる 200g復刻盤が出た時にそれも迷わず購入。すっかり調子に乗った私は毒を食らわば皿までとばかりに 1stプレス盤もいったれと色々探しまくり、eBay France(!) でジャケットが G で 盤質が VG+ 表記の盤を €200でゲット。当時のレートで確か3万円ぐらいだったと思うが、ジャケットを犠牲にして盤質優先で高額盤を安く買うという手口はバド・パウエルの「The Scene Changes」の時と同じだ。
因みにこのレコードの真正1stプレス盤を見分けるポイントは、①センター・レーベルのアドレス表記が “47 WEST 63rd NEW YORK 23” で尚且つ NOTE の Eの下に ® マーク無し、②両面 Deep Groove 有り、③デッドワックスに手書きRVG + 耳マーク 、④裏ジャケ下の BLUE NOTE RECORDS の後に INC 無し、の4点だ。
肝心の音の違いだが、結論から言うと 1stプレスが圧倒的に素晴らしい。何よりもまず音の生々しさがハンパないのだ。“ブッ!” とスピーカーから転がり出るようなロリンズのテナーはまさに巨大な音の塊だし、ナイアガラ瀑布と呼ばれるブレイキーのドラミングのド迫力はもう言葉にできないほどのエグさで、まるでかぶりつきの特等席でこの熱気迸るセッションを聴いているかのような錯覚に陥ってしまう。ビートルズで言えば金パロの 1G盤を聴いた時の衝撃に近いだろう。ブルーノートのリアル 1stプレス盤はその人気と稀少性から最低でもウン万円、下手をするとその10倍いくケースも少なくないので通常は買おうという気すら起きないが、パウエルの「The Scene Changes」やロリンズのこのレコードに関しては苦労して手に入れて本当に良かったと思っている。
それに比べると60年代プレスの “NEW YORK USA” 表記盤の方は絶対的なエネルギー感と演奏の空気感でどうしても差をつけられてしまう。盤質がめちゃくちゃ良いのでヴォリュームを上げていけばそれなりに満足のいくド迫力サウンドが楽しめるのだが、それでもやはり紙一重、いや二重くらいの差がある。今のF1で言えば、フェルスタッペンとペレスぐらいの差(笑)は確実にあると思う。このタイトルはかなり売れたのか60年代前半だけでも何度もプレスされたようなので、“耳” マーク無しで RVG刻印も機械打ちの私のレコはおそらく “NEW YORK USA” 表記盤の中でもレイター・プレスにあたるのだろう。
最後にバーニー・グランドマンのマスタリングによる Classic Records 復刻盤だが、こいつは私の予想した以上に良い音がしていてビックリ。音の厚み・迫力とクリアネスが非常に高い次元でバランスした素晴らしい音である。F1に例えると(←他のスポーツはあまり詳しくないので申し訳ない...)開幕数戦調子の良かったアロンソのアストンマーチン、あるいはここ数戦の絶好調マクラーレンといったところか。決してレッドブル... じゃなかった、1stプレスの音にはかなわないにせよ、コスパで言えば №1だろう。敢えて点数化すると、1stプレス盤が100点満点として、耳なし60'sプレス盤が85点、Classic Records復刻盤が95点といったところ。バーニー・グランドマン恐るべしだ。
このアルバムとの出会いはジャズを聴き始めて2~3年ほど経った頃だったと思うが、それまでチェット・ベイカーやレッド・ガーランドといった “軽やかにスイングする” ジャズばかりを聴いてきた私にとって、「Sonny Rollins Vol. 2」というアルバムはまさに衝撃そのものだった。中でもとりわけインパクトがデカかったのがアルバムの1曲目を飾る「Why Don't I」だ。
とにかくこの曲ほどジャズの熱気を感じさせる演奏を私は他に知らない。ハードバップを体現するドラマー、アート・ブレイキーの豪快なドラミングに煽られてフロントのロリンズとJJジョンソン(トロンボーン)が吹きまくるという理想的な展開なのだが、私が特に好きなのは、ノリにノッたロリンズがドラムとのバースを間違えて吹き始めてしまい、すぐに別のアイデアを出してそれをリカバーするところで(←まるで何事もなかったかのように演奏を続けるブレイキーも凄い!)、これをOKテイクにしてしまうあたりに “細かいことは気にせずに大きなノリを優先する” というロリンズらしさが現れているし、そういったスポンティニアスでスリリングな展開が見事に音溝に刻まれているところがジャズの醍醐味だと思う。太いトーンで響き渡るロリンズのテナーや飛び散る汗が目に浮かぶようなブレイキーのドラミングはまさに “ブルーノートのヴァンゲルダー” ならではの音作りだ。
Why Don't I
続くA②「Wail March」も “これぞハードバップ!!!” と ! を3つも付けたくなるぐらい熱い演奏が展開されていて大好きだ。ブヒバヒ吹きまくるJJとロリンズを背後からプッシュしまくる鬼神ブレイキーの爆裂ドラミングがたまらない(≧▽≦) まさに “ジャズ界のジョン・ボーナム” と言っても過言ではない煽りっぷりだ。
Wail March
私が同じタイトルのレコードを何種類も買うのは超の付く愛聴盤に限るが、このレコードの場合も3枚所有している。まず最初に買ったのが60年代半ばにプレスされたと思しき “NEW YORK USA” 表記の盤で、大阪のレコ屋でニアミントなピカピカ盤を 12,000円で購入。更に Classic Records からバーニー・グランドマンのマスタリングによる 200g復刻盤が出た時にそれも迷わず購入。すっかり調子に乗った私は毒を食らわば皿までとばかりに 1stプレス盤もいったれと色々探しまくり、eBay France(!) でジャケットが G で 盤質が VG+ 表記の盤を €200でゲット。当時のレートで確か3万円ぐらいだったと思うが、ジャケットを犠牲にして盤質優先で高額盤を安く買うという手口はバド・パウエルの「The Scene Changes」の時と同じだ。
因みにこのレコードの真正1stプレス盤を見分けるポイントは、①センター・レーベルのアドレス表記が “47 WEST 63rd NEW YORK 23” で尚且つ NOTE の Eの下に ® マーク無し、②両面 Deep Groove 有り、③デッドワックスに手書きRVG + 耳マーク 、④裏ジャケ下の BLUE NOTE RECORDS の後に INC 無し、の4点だ。
肝心の音の違いだが、結論から言うと 1stプレスが圧倒的に素晴らしい。何よりもまず音の生々しさがハンパないのだ。“ブッ!” とスピーカーから転がり出るようなロリンズのテナーはまさに巨大な音の塊だし、ナイアガラ瀑布と呼ばれるブレイキーのドラミングのド迫力はもう言葉にできないほどのエグさで、まるでかぶりつきの特等席でこの熱気迸るセッションを聴いているかのような錯覚に陥ってしまう。ビートルズで言えば金パロの 1G盤を聴いた時の衝撃に近いだろう。ブルーノートのリアル 1stプレス盤はその人気と稀少性から最低でもウン万円、下手をするとその10倍いくケースも少なくないので通常は買おうという気すら起きないが、パウエルの「The Scene Changes」やロリンズのこのレコードに関しては苦労して手に入れて本当に良かったと思っている。
それに比べると60年代プレスの “NEW YORK USA” 表記盤の方は絶対的なエネルギー感と演奏の空気感でどうしても差をつけられてしまう。盤質がめちゃくちゃ良いのでヴォリュームを上げていけばそれなりに満足のいくド迫力サウンドが楽しめるのだが、それでもやはり紙一重、いや二重くらいの差がある。今のF1で言えば、フェルスタッペンとペレスぐらいの差(笑)は確実にあると思う。このタイトルはかなり売れたのか60年代前半だけでも何度もプレスされたようなので、“耳” マーク無しで RVG刻印も機械打ちの私のレコはおそらく “NEW YORK USA” 表記盤の中でもレイター・プレスにあたるのだろう。
最後にバーニー・グランドマンのマスタリングによる Classic Records 復刻盤だが、こいつは私の予想した以上に良い音がしていてビックリ。音の厚み・迫力とクリアネスが非常に高い次元でバランスした素晴らしい音である。F1に例えると(←他のスポーツはあまり詳しくないので申し訳ない...)開幕数戦調子の良かったアロンソのアストンマーチン、あるいはここ数戦の絶好調マクラーレンといったところか。決してレッドブル... じゃなかった、1stプレスの音にはかなわないにせよ、コスパで言えば №1だろう。敢えて点数化すると、1stプレス盤が100点満点として、耳なし60'sプレス盤が85点、Classic Records復刻盤が95点といったところ。バーニー・グランドマン恐るべしだ。