shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

手紙でも書こう / フランク・シナトラ

2012-02-19 | Standard Songs
 ポール・マッカートニーの最新アルバム「Kisses On The Bottom」の1曲目を飾り、その歌詞の一節が今回のアルバム・タイトルにもなったスタンダードの名曲「I'm Gonna Sit Right Down And Write Myself A Letter」(邦題:手紙でも書こう)は何を隠そう私の超愛聴曲。ポールがこの曲を取り上げてくれただけでもう嬉しくてタマラン状態のだが、せっかくなのでこのブログでも特集することにした。
 この曲は多くの映画に曲を書いているジョー・ヤング&フレッド・アーラートの1935年の作品で、 “ストライド奏法” を確立したジャズ・ピアニスト、ファッツ・ウォーラーの弾き語りで大ヒット、それから21年経った1956年にはビリー・ウイリアムズという男性シンガーのコーラル盤がミリオン・セラーを記録し、リヴァイヴァル・ヒットした。
 彼女からの手紙が途絶えてしまい、その寂しさに耐えかねた男が、“自分で自分宛の手紙を書いて彼女からの手紙だと思い込もう” という何ともユーモアとペーソスに溢れる歌詞で(←そういう意味ではポールのアルバム・タイトルになった A lot of kisses on the bottom, I’ll be glad I got 'em... 手紙の最後にはキスを一杯して、それを受け取った僕は大喜びさ... のラインはトホホを通り越して一歩間違えれば変態になってしまうが...)、失恋ソングでありながらカラッとした雰囲気を持った面白い歌なんである。だからミディアムからアップテンポでカラッと健康的にスイングするヴァージョンがこの曲にピッタリだ。
 私のこの曲との出会いはフランク・シナトラの10インチ盤「スイング・イージー」(←海外オークションのeBayで初めて買った思い出のレコード!!!)で、そのリラクセイション溢れる絶妙なスイング感にすっかり KO され、それ以来この曲が入ったレコードは必ずチェックするほど気に入っている。
 下に挙げた以外にも、ビング・クロスビー、ルイ・アームストロング、サラ・ボーン、ディーン・マーティン、ベニー・グッドマン、カウント・ベイシー、アート・テイタム、ベン・ウエブスター、ルビー・ブラフといったジャズ界のビッグ・ネーム達がこぞって取り上げているし、面白いところではボビー・ヴィーとベンチャーズの共演盤やリンダ・スコットのコングレス盤なんかにも入っている。それでは久々のスタンダード特集をどうぞ!

①Frank Sinatra
 私にとってこの曲の決定的名唱と言えるのが1954年にキャピトルからリリースされた10インチ盤「スイング・イージー」に入っていたシナトラ・ヴァージョン。ネルソン・リドルの絶妙なアレンジによるレッド・ノーヴォ風中間派サウンドに乗って軽快にスイングするシナトラの粋な歌唱はまさにザ・ワン・アンド・オンリーだ。又、1962年にリプリーズからリリースされた「シナトラ・ベイシー」ではニール・ヘフティによる高速アレンジでベイシー楽団をバックにダイナミックにスイングするシナトラが楽しめる。両方貼っときますので興味のある方は聴き比べてみて下さいな。
I'm Gonna Sit Right Down And Write Myself A Letter (Frank Sinatra - 1953 with Lyrics)

Sinatra in the studio 1962 I'm Gonna Sit Right Down & Write Myself A letter


②Nat King Cole
 私にとってシナトラと並ぶ男性ジャズ・ヴォーカルの最高峰がナット・キング・コールだ。コレは1961年にレコーディングされ、3年後の1964年にリリースされたアルバム「レッツ・フェイス・ザ・ミュージック」に収録されていたもので、分厚いブラス・サウンドでグイグイ迫るビリー・メイのアレンジで力強くスイングするキング・コールの歌いっぷりが圧巻だ。
Nat King Cole ::: I'm Gonna Sit Right Down (And Write Myself A Letter)


③Bill Haley & His Comets
 「ロック・アラウンド・ザ・クロック」でお馴染みのビル・ヘイリーによるこのヴァージョンは、古いスタンダード・ナンバーの数々をロックンロール・スタイルでアレンジした1957年のデッカ盤「ロッキン・ジ・オールディーズ」に収録されており、あまり話題には上らないが、私は結構好き。スタンダード・ナンバーとロックンロールの出会いが生んだ隠れ名演だ。
Bill Haley & His Comets - "I'm Gonna Sit Right Down And Write Myself A Letter" - 1958


④Boswell Sisters
 これは女性ジャズ・コーラス・グループの草分け的存在のボスウェル・シスターズが解散した1936年にデッカに吹き込んだもので、彼女達の爛熟期の歌声が楽しめる。私は基本的にノリの良いロックやポップスがメイン・ディッシュなのだが、こういうノスタルジックな味わいのほのぼのとした癒し系女性コーラスも大好きだ。特にボスウェル・シスターズのこのヴァージョンは他とは違ってヴァースの部分から歌っており、非常に珍しくて貴重なものだと思う。
Boswell Sisters - I'm going to sit right down (1936)


⑤Rita Reys
ジャズ・ヴォーカル・ファンの間で根強い人気を誇るオランダ人女性シンガー、リタ・ライスの代表作であるフィリップス盤「ジャズ・ピクチャーズ」の1曲目に入っていたのがこの曲。バラッドよりもアップテンポな曲が得意な彼女にピッタリの軽快なアレンジでのびのびと歌っているところが◎。バックの演奏も絶品で、夫君のピム・ヤコブズのスインギーなピアノも素晴らしいが、何と言っても “ブラッシュの名手” ケニー・クラークが生み出す強烈なスイング感が最高だ。
I'm Gonna Sit Right Down and Write Myself a Letter - Rita Reys

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6 コメント

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ノスタルジー (みながわ)
2012-02-20 22:28:33
shiotchさんこんばんは。
ポールのKisses On The Bottom届いたので聞いています。元歌で聞いたことがあるのはペーパームーンくらいでよく知らない歌が多かったのでちょっと参っていたのですが、今回のブログで興味が倍増しました。
ブログで紹介された中ではシナトラは一番かと思いきや一番気に入ってしまったのはボスウェル・シスターズです(やはりガールズグループ好きなようです)私が生まれるはるか前のグループだと思いますがなぜか懐かしい気持ちになるコーラスですね。
youtubeでいろいろ聞いて見たくなりました。
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エクスタシー (shiotch7)
2012-02-20 23:52:55
みながわさん、こんばんは。
ポールのUK盤、予定より早く届いて何かちょっと得した気分... 私も嬉々として聴いてます。
私はスタンダードも結構好きなのでブログで特集してみることを思いついたのですが、
お役に立てたようで嬉しいです。

で、ボスウェル・シスターズ、めっちゃエエでしょ!!!
私はディープなシスターズ・マニア(←何かちょっと恥ずかしい響き...)なので
女性の美しいコーラス・ハーモニーを聴いただけで夢見心地になっちゃいます。
それと、シスターズに限ったことではありませんが、
ロネッツといい、シュープリームスといい、キャンディーズといい、
ガールズ・グループは見た目のバランス上、3人組が一番エエですね。
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home (シュミット)
2012-02-21 20:52:25
こんばんは、シュミットです。先日たまたまラジオを聴いてましたら、マッカートニーの最新アルバムから一曲っていうことで、「home」という曲がかかりました。なかなか渋いなあって思ったんですが、もうアルバムをゲットされていましたか、さすがです。
マッカートニーが「手紙でも書こう」みたいな古い佳曲をいくつも歌ってるなんて、shiotchさんにはタマラン展開ですね。
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タマランです! (shiotch7)
2012-02-21 22:09:25
シュミットさん、こんばんは。
“スタンダード好きのビートルズ・マニア” の私にとっては仰る通りタマラン展開です。
しかも大好きなダイアナ・クラールがアレンジを担当し、ピアノまで弾いてるんですからね。
ブラッシュも満載ですし...(笑)

「Home」はベンチャーズが1stアルバムで演ってた曲ですね。
それにしてもホンマに渋い選曲のスタンダード・アルバムやと思います。
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コメントでも書こう(笑) (shoppgirl)
2012-02-27 10:56:48
shiotch兄さま、こんにちは。

「Kisses On The Bottom」の特集、楽しませて頂いています。

私もシナトラ・キング=コールが最高峰だと思います。
どちらも包容力があって、痺れちゃいます。

シナトラの聴き比べ楽しかったです。アレンジで違うものですね。
2つ目はレコーディングしてる??
曲が始まって“わぁ~!いい感じ”と思ったらやり直しでズッコケてしまいました。

シスターズ系好きですが
ボズウェル・シスターズは初めて聴きました。
懐古的な雰囲気が良かったです。
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吹いた... (shiotch7)
2012-02-27 21:33:04
こんばんは。
姐さんのタイトル、面白すぎ(笑)
こういうさりげない笑いのセンス大好きです。

「Kisses On The Bottom」特集、楽しんでいただけて嬉しいです。
最初は思いつきで1回限りのつもりやったんですけど...
姐さんにそうおっしゃっていただけるのなら
頑張っちゃうモンね~♪

シナトラの2つ目、面白いでしょ?
レコーディング現場の生々しさが伝わってくる音源ですよね。

晴れた日は縁側で昆布茶をすすりながらボスウェル・シスターズを聴く...
そんな老後に憧れてるshiotch7でした。
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