shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Early Best / Clementine

2010-06-01 | World Music
 21世紀に入ってすっかり定着した感のある “クレモンティーヌのオシャレなカヴァー路線” のめぼしいところは大体出尽くした感があるので、前回の「コンティノン・ブルー」に引き続き、今日も “まだ日本制作サイドの手垢にまみれていない” 頃の作品を取り上げたい。彼女はデビュー当時ジャジーなアルバムを何枚か出しているが、それ以外にもフレンチ・ポップスやボサ・ノヴァなど、幅広いジャンルの楽曲を歌っていた。この「アーリー・ベスト」は彼女の父親が設立したオレンジ・ブルー・レーベルにレコーディングした作品を中心に未発表ライヴ音源なども収録した初期音源ベスト集で、彼女の盤の中でもかなり気に入っている1枚だ。
 彼女のボッサ路線は90年代後半に「クーラー・カフェ」(1999年)、「レ・ヴォヤージュ」(2000年)、「カフェ・アプレミディ」(2001年)という “ボサ・ノヴァ3部作” で結実することになるが、この盤にはクレモンティーヌ・ボッサの原点とも言える2曲③「イパネマの娘」と④「おいしい水」が収録されている。ヴォーカリストとして見た場合、彼女はあまり声量があるタイプではなく、歌い方もやや一本調子になりがちなのでボサノヴァを唄うにはうってつけなのだが、③ではそんな彼女の歌唱スタイルとゆったりした曲想とがバッチリ合って、リラクセイション溢れるヴァージョンに仕上がっている。
 そしてこのアルバム中最高のトラックが④だ。スタン・ゲッツの名演「オ・グランジ・アモール」を彷彿とさせるテナーのイントロに続いてスルスルと滑り込んでくるクレモンティーヌのクールなスキャットがめちゃくちゃカッコイイ!!! メロディーに酔い、歌声に酔い、演奏に酔いしれているうちに3分40秒があっという間に過ぎ去っていく。大好きなクレモンティーヌの中でも三指に入る名唱だと言い切ってしまおう。エンディングも粋やねぇ... (≧▽≦)
 オシャレ路線の曲では彼女の代表曲の一つといえる①「ジェレミー」がいい。ジョディー・フォスターが出演したカフェラテ CM のバックに流れていたこの曲、「雨音はショパンの調べ」を思わせる、まさに洗練を絵に描いたようなフレンチ・ポップスだ。②「イッツ・ア・シェイム」(ヨーロッパ・ヴァージョン)は元々スピナーズがスティーヴィー・ワンダーの作曲・プロデュースでモータウン在籍時に発表したソウル・バラッドで、何度も聴くうちに心に沁み渡ってきて気がつけば病みつきになっているというタイプのスルメ・チューンだ。この曲は多くのアーティストによってカヴァーされているが、そんな中でもこのクレモンティーヌ・ヴァージョンは彼女の持ち味を活かした見事なアレンジで最上の作品に仕上がっていると思う。
 ドリス・デイで有名な⑦「ケ・セラ・セラ」はクレモンティーヌの声質にバッチリ合っており、まさに選曲の勝利といいたくなる1曲。低~く伸びるベースがサウンドをビシッと引き締めているところも◎だ。彼女の大好きなリッキー・リー・ジョーンズの⑨「イージー・マネー」はリッキー・リーと化したクレモンティーヌのヴォーカルと浮遊感溢れる不思議なバックのサウンド(←ここでも重低音ベースが効いてます!)が溶け合って実に快適なヴァージョンに仕上がっている。⑩「エル・マニセロ」は後にアルバム「クーラー・カフェ」でサンバっぽくテンポを上げて再演されることになるが、ここではミディアム・スローでゆったりと歌っており、絶妙なリラクセイションを生み出している。ホンマに気持ちが和むなぁ...(^o^)丿
 後半は自宅倉庫から発見されたという秘蔵ライヴ音源で、マイケル・フランクスの⑪「ダウン・イン・ブラジル」、アントニオ・カルロス・ジョビンの⑫「十字路」、ガーシュウィンの⑬「ス・ワンダフル」、セルジュ・ゲンスブールの⑭「クーラー・カフェ」、ベン・シドランの⑮「チャンセズ・アー」の5曲を収録。特にガーシュウィンの名曲をボッサ・アレンジで聴かせる⑬が実に斬新で、この路線で色々なスタンダードをボッサ化してくれたらエエのになぁと思わせる素晴らしいヴァージョンに仕上がっている。とまぁこのように名曲名演が一杯詰まった「アーリー・ベスト」、初期のクレモンティーヌは何はさておきこのアルバムから、と自信を持って言える1枚だ。

おいしい水


森永カフェラッテ ジョディ・フォスター

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