shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

カラフル・ジブリ

2011-02-06 | TV, 映画, サントラ etc
 私は音楽に目覚めて以来長い間ただひたすらロック/ポップスを中心に音楽を聴いてきたので、クラリネットという楽器にはまったくと言っていいほど縁がなかった。しかし30歳台の半ばぐらいからモダン・ジャズをも聴くようになり、ジャズが最も美しかった50年代からだんだん時代を遡っていくうちに出会ったクラリネット奏者がベニー・グッドマン、1930年代のスイング・ジャズを聴く上で避けては通れない超大物である。しかし私は彼の “ピッ!” という耳に突き刺さるような高音にどうしても馴染めず、いつしかクラリネット入りの演奏を無意識に避けるようになっていった。
 クラリネットに対するそんな私の偏見を木端微塵に打ち砕いたのが日本人ジャズ・クラリネット奏者である鈴木章治の「鈴懸の径」という曲で、私は彼の演奏を聴いて初めてクラリネットという楽器の持つ柔らかい音色の魅力を知り、“クラリネットにもこんな演奏があるんや...” と目を開かれる思いだった。特にミディアム・テンポで美しい旋律の曲を奏でる時なんか、この楽器でしか出せないような雰囲気を醸し出しており、私はクラリネット・アレルギーを解消することができた。
 そして今、2011年、ジブリ祭りで色んなカヴァー盤を聴きまくっていた最中に出会ったのがこの「カラフル・ジブリ」だった。まず最初に目に留まったのがそのジャケットで、 “木漏れ日を浴びながら楽器を手に大きな木の下に佇むうら若き女性4人” というのが実にエエ感じなのだ。このカラフルというグループは音大出身の女性4人で結成されたクラリネット・カルテットで、例えるなら今年のお正月にビートルズ・カヴァーで取り上げた1966カルテットのジブリ版みたいなモンだろう。
 このアルバムは無理やりジャンル分けすれば私の苦手な “クラシック~イージー・リスニング” の範疇に入るのかもしれないし、クラリネット4本(1st、2nd、エスクラ、バスクラ)だけの演奏でアルバム1枚はさすがにキツイかなぁと思っていたが、実際に聴いてみるとピアノやドラムもちゃーんと入っているのでロック者の私でも違和感なく馴染むことが出来た。収録曲はもう何の説明も必要ないジブリ・スタンダードが12曲で、ジャケット通りのホンワカしたサウンドがジブリの愛らしいメロディーとバッチリ合っていて思わず頬が緩んでしまう。これほど中身の音を見事に反映したジャケットには中々お目にかかれない。
 で、その中身の音だが、まずは何と言ってもアルバム冒頭の①「やさしさに包まれたなら」、この柔らかなイントロを聴いただけで私の好きな癒し系クラリネットだということが一聴瞭然で、まさにタイトル通り、聴く者をやさしさで包み込むようなサウンドだ。クラリネット・カルテットの演奏というものは初体験だが、何か心が和むというか、木管楽器ならではのウッディな感覚が耳に心地良い。たまたま今日は春のように暖かい一日だったが、この曲はまさにそんなポカポカ陽気にピッタリの癒し系ヴァージョンに仕上がっている。
 この①に始まり、歌心溢れるプレイとそのアンサンブルの妙に唸ってしまう②「アリエッティズ・ソング」、ツボを押さえた絶妙なアレンジで脳内リフレインが止まらない③「風の谷のナウシカ」、珠玉の久石メロディーとクラリネットのウォームなサウンドの邂逅が生んだ名演⑤「君をのせて」、クラリネットだからこそ出せた素朴な味わいが心に沁みる⑥「カントリー・ロード」、コレを聴けばタタリガミの怒りも鎮まりそうな哀愁舞い散る⑦「もののけ姫」、のほほんとした感じのトボけた演奏が実にエエ味を出している⑧「トトロメドレー」、ハープをバックにメロディーを慈しむように吹くプレイが感動を呼ぶ⑨「いつも何度でも」、親しみやすいクラシックという感じの⑩「崖の上のポニョ」と、聴き所が満載だ。
 このアルバムはパンクやスカ・ヴァージョンとは違ってドライヴの BGM には向かないが(←なんせ毎日がモナコ・グランプリみたいなモンやからね...笑)、柔らかい陽射しを浴びながらブリリアントな午後をマッタリ過ごしたい時なんかにはピッタリの1枚だと思う。

Clarinet Kiki


Clarinet Nausicaa


Clarinet Princess Mononoke

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