shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

5150 / Van Halen

2009-08-26 | Hard Rock
 バンド内の人間関係悪化による分裂・解散というのは洋の東西を問わずよくあることだが、この傾向は特にハードロック系のバンドに顕著で、パープルを始めとしてエアロ、キッス、モトリー、ガンズ、ポイズンetc 、狭い世界の中で離れたりくっついたりを繰り返してきた。ロック・バンドではどちらかというと裏方的存在のベーシストやドラマーといったリズム隊にメンバー・チェンジがあっても余程のことがない限りバンド全体の音がガラリと変わってしまうなんてことは滅多にないが、バンドの顔ともいえるヴォーカリストの交代は一大事である。ハッキリ言って全く別のバンドに変わってしまうようなものだ。そうなると大抵の場合、ファンの支持を失ってバンドは失速していくものだが、このヴァン・ヘイレンはそのようなヴォーカリスト交代劇を乗り越えて更にパワー・アップしていった稀有なバンドである。
 彼らはアメリカのバンドでありながらそのデビュー・アルバムはまるでバリバリのブリティッシュ・ハードロックのようなテンションの高さを誇っていた。しかしアルバムを出すごとにアメリカナイズされていき、5枚目の「ダイヴァー・ダウン」に至っては人気は高かったものの、「ダンシング・イン・ザ・ストリート」や「ビッグ・バッド・ビル」、「ハッピー・トレイルズ」みたいな、とてもハードロック・バンド向きではないカヴァー曲(←デイヴの趣味で、エディは演りたくなかったらしい...)が入っていた。6枚目の「1984」からは「ジャンプ」が5週連続全米№1という大ヒットを記録したが、 “一緒にビッグ・ロックを楽しもうぜ、ワォー!!!” みたいなノリのノーテンキなアルバムで、初期のアルバムが持っていた緊張感が大好きだった私も “まぁアメリカのバンドやからしゃあないか...” と半ば割り切って「1984」を楽しんでいた。
 そんなヴァン・ヘイレンの余興演芸部門担当(?)というべき “腰振りデイヴ” が出したBB5のカヴァー「カリフォルニア・ガールズ」が元曲の良さとお色気ビデオのおかげもあって大ヒットしてしまい、ソロで十分やっていけるとふんだデイヴはついにバンドを脱退、エンターテイメント部門を失ったヴァン・ヘイレンはその後釜として正統派のロック・ヴォーカリスト、サミー・ヘイガーを迎え入れ、絵に描いたような “胸毛系のバンド(笑)”から “アメリカン・ロックの王道バンド” へと見事な変貌を遂げることになる。そんな新生ヴァン・ヘイレンの名刺代わりの1枚がこの「5150」なのだ。
 旧ヴァン・ヘイレンのアルバムにはオリジナル、カヴァー、そしてノヴェルティー・ソングという奇妙な構成のものもあり、それが中途半端な印象を与えていたが、この「5150」は全曲オリジナルでビシッとキメている。サミーの加入によって4人の目指すベクトルの方向性がピッタリ一致し、バンドとして進化・深化した証だろう。サウンド面でも「1984」から強まりつつあったメロディアスなハードロック路線を更に推し進め、そこにサミーのエモーショナルで力強い歌声が見事にハマッて素晴らしいニュー・ビッグ・V・サウンドが生まれたというわけだ。
 ①「グッド・イナフ」はサミーの “ヘッロウ ベイ~ベッ!” という第一声から始まる、いかにもヴァン・ヘイレンらしい攻撃性を持ったハードなナンバーで、バンドが一体となって突っ走る様がビンビン伝わってくる。アルバム冒頭から超ド級のパワーが全開だ。ファースト・シングル②「ホワイ・キャント・ジス・ビー・ラヴ」は全米3位まで上がった新生ヴァン・ヘイレンの大ヒット曲で、デイヴ時代のようなハチャメチャな派手さはないものの、逆に演奏の重心が下がってバランスの取れたサウンドになっており、ポップでもありヘヴィでもあるという二面性をホットなグルーヴ感で見事にまとめ上げている。このあたりのセンスの良さはさすがと言う他ない。③「ゲット・アップ」は「ホット・フォー・ティーチャー」を彷彿とさせる疾走系のナンバーで、エディのトリッキーなプレイが堪能できる。ドラムのアレックスもエエ仕事しとります(^.^) 
 カラッと晴れ上がったカリフォルニアの青空が似合いそうな④「ドリームス」は聴いてて爽快な気分になれるキャッチーな曲で、サミーのハイトーン・ヴォイスが炸裂し、エディのギターが暴れまわるという、ニュー・ヴァン・ヘイレンの充実ぶりを象徴するナンバーだ。⑤「サマー・ナイツ」はエディの変幻自在なテクニックが全開で、サミーのタメの効いたヴォーカルがめちゃくちゃカッコイイ。サビのメロディーといい、マイケル・アンソニーのバック・コーラスといい、これはたまらんなぁ... (≧▽≦) 尚、B'zの「リアル・シング・シェイクス」はこの曲への松本さんなりのオマージュだろう。
 ミディアム・テンポで単純なリフの繰り返しが快感を呼ぶ⑥「ベスト・オブ・ボス・ワールズ」はライブで最高に活きるノリを持った曲で、私はこのヘヴィーなグルーヴ感が大好きだ。聴けば聴くほどクセになるスルメ・チューンだと思う。⑦「ラヴ・ウォークス・イン」はプロデューサーであるフォリナーのミック・ジョーンズ(←この人選は納得いかへん!)の色が非常に濃いバラッドで、良い曲だとは思うが何もヴァン・ヘイレンがやらんでも...と思う。こーゆーのはフォリナーでやってくれ(>_<) ⑧「5150」はまずイントロの軽快なリフにウキウキワクワクさせられる。他のギタリストにはとても弾けないような独創的なフレーズのアメアラレ攻撃がたまらない。④と共にドライヴの BGM に最適なノリノリのナンバーで、まさにアメリカン・ロックの王道を行く1曲だ。⑨「インサイド」はあまりよく分からんのでパスです(笑)
 このように素晴らしい曲が一杯詰まった大傑作アルバムなのだが、唯一の不満はシンセサイザーを多用しすぎなこと。私はジャズでもロックでもシンセの軽薄な音が肌に合わないので、大ヒット曲「ジャンプ」の影を引きずっているのか、あるいはプロデューサーの趣味なのかは知らないが、できることならこのメンツでシンセ抜き、 1st アルバムみたいなバリバリのギター・サウンドを聴かせてほしかった... というのは贅沢な望みだろうか?

Van Halen - LIVE - "Best Of Both Worlds'

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