shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

さらばシベリア鉄道 / 大瀧詠一

2012-08-13 | J-Rock/Pop
 「さらばシベリア鉄道」特集の第2弾は早くもご本尊の登場だ。この曲の私的№1は何と言ってもリアルタイムでの衝撃が強かった太田裕美ヴァージョンなのだが、「ロンバケ」に収録された大瀧師匠によるセルフ・カヴァーも負けず劣らず素晴らしい。私がこの大瀧ヴァージョンを聴いたのはかなり後になってからだったこともあって最初は裕美ヴァージョンとの微妙な違いに少々戸惑ったが、繰り返し聴くうちにジワジワとその面白さが分かってきて “コレはエエわ(^o^)丿” と大いに納得、 “ドラマチックに歌い上げる感” が圧巻の裕美ヴァージョンとはまた違った魅力、すなわち抑制の効いたヴォーカルで寒風吹きすさぶシベリアの雪景色を連想させる大瀧ヴァージョンの素晴らしさに瞠目したのだった。
 私が大瀧師匠を心底凄いと思うのは、この曲を作ったこともさることながら、そんな自作曲の魅力を極限まで引き出す見事な器楽アレンジを施した点で、細部に至るまで凛とした雰囲気が横溢、まさに完璧と言ってもいいぐらいにピッタリとキマッているところに彼の天才を感じるのだ。裕美ヴァージョンも彼が渡したデモテープのインスト・アレンジがベースになっているというし、カヴァーするアーティストの多くもこの大瀧ヴァージョンのアレンジを踏襲しており、この曲はもうコレ以外考えられない!と断言したくなるぐらいの名アレンジだと思う。そういう意味ではエレキな歌心に涙ちょちょぎれる「スノー・タイム」収録のインスト・ヴァージョンも必聴だろう。
大瀧詠一 / 哀愁のさらばシベリア鉄道(SIBERIA) [インスト]


 話はちょっと逸れるが、この大瀧アレンジが神であることを逆説的に証明してしまったのが女性アーティストによるトリビュート盤「ア・ロング・バケーション・フロム・レイディーズ」収録の鈴木祥子ヴァージョンで、ゆるんだゴムひものようなヘタレなアレンジには正直ガッカリ(>_<) ヴォーカルが悪くないだけに余計に薄っぺらいバックの演奏との落差が浮き彫りになっており、せっかくの名曲が拷問に耐えているように響く。このアルバムはジャケットに魅かれて興味を持ったものの、 YouTube で試聴して一気に買う気が失せてしまった。「ロンバケ」ファンでこんなかったるいサウンド↓を好む人が果たしているのだろうか?
さらばシベリア鉄道 鈴木祥子


 話を大瀧ヴァージョンに戻そう。私が特に気に入っているのはロシア民謡も裸足で逃げ出しそうなその哀愁舞い散るメロディーをポップに料理しながらもピンと張り詰めた様な緊張感を保っているところで、風雲急を告げるようなイントロから始まって、様々な楽器が一体となって醸し出すドライヴ感が音楽を前へ前へと押し進めていく様は言葉に出来ない素晴らしさだし、何と言っても中間部の転調が最高にカッコイイ! ここでシフトアップしてエンジン全開、エンディングまで一気呵成に突っ走る感じがたまらんたまらん(≧▽≦)
 そんな名アレンジのバックの演奏と絶妙に溶け合った師匠のヴェルヴェット・ヴォイスもめっちゃエエ感じで、完璧にコントロールされたその歌声がメロウで気怠い雰囲気を巧く醸し出しているし、シベリアの澄んだ空気を想わせるクリアな音色のサウンドはこのクソ暑い季節に聴いても実に心地良く納涼効果も満点だ。この「さらばシベリア鉄道」という曲は日本が世界に誇るポップス職人、大瀧詠一が生んだ世紀の大傑作だと思う。
さらばシベリア鉄道/大瀧詠一【歌詞付】

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ロンバケと「シベ鉄」 (みながわ)
2012-08-14 07:32:02
shiotchさんおはようございます。
早くもご本人登場ですね。

私は「ロンバケ」はリアルタイムでLPで聞いたのですが。
ジャケットにひかれて購入したか、話題になっていて購入したか覚えていませんが(笑)、とにかく衝撃的でした。

当時は太田裕美バージョンを知らなかったこともあり、どうも1曲だけ毛色というか雰囲気の違う曲が入っていてなんか不思議な気がしたものでした。

それが「シベ鉄」なんです、お恥ずかしい話ですが、自分が年と取るにつれてこの曲が好きになったというか凄さが分かって来ました。

若い時に気が付かず、後から気がつくってことはありますよね、私にとってまさにこれがそうだったということです(でもやっぱり恥ずかしい)。

「ロンバケ」は今でも愛聴盤です、「シベ鉄」を含め全く色あせないのは凄いことですね。

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ロンバケの思い出 (shiotch7)
2012-08-14 19:37:37
みながわさん、こんばんは。
私は「ロンバケ」が出た頃にちょうどアメリカン・トップ40にハマり始めてて
邦楽からかなり遠ざかってましたので
ジャケットを知ってはいたものの、実際に聴いたのはかなり後になってからでした。
それもレコードじゃなくラジオから...
そう、私の初ロンバケはFMのエアチェック・テープやったんです(恥)。
仰るようにラスト1曲だけ浮いてる感じがして
コテコテ・スペクター・サウンドの「君天」や「カナリア」、「恋カレ」ばかり聴いてました。
大瀧版シベ鉄の面白さが分かってきたのはかなり経ってから...
この曲に限らず私の音楽ライフもみながわさんと同じ く “後から気がつく” パターンが結構多いです。
でもそれってしっかりと聴き込んでるってことですし、手持ちの盤で何度も新発見があるっていうのは
一粒で二度三度オイシイんですからお得なのではないでしょうか?
まぁいずれにせよ、ロンバケは後世に残るポップス大名盤ですよね。
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