shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

【 ラウドカット】ベネズエラ赤盤

2021-02-13 | The Beatles
 私がネットでレコードを検索している時に思わず目がいってしまう言葉がいくつかある。「1G」や「Factory Sample」などがそうだが、そんな中でも特に吸引力抜群なのが「ラウドカット」というパワー・ワードである。アホかと思われるかもしれないが、「ラウドカット」と聞くだけでまるでパブロフの犬のように条件反射でアドレナリンがドバーッと出まくるのだ。
 ラウドカット盤として最も有名なのはUK初回盤の「With The Beatles」(1N/1N)と「Rubber Soul」(1/1)だろうが、世界各国のレコードを色々と聴いていくうちに、UK以外の各国盤の中にも世間ではあまり話題に上らない “隠れラウドカット” 盤が存在することを知り、“おぉ、これもラウドカットやん!” と新たな発見に大喜びしたことが何度かある。
 先日、いつものようにB-SELSの日記を開くと“1962-1966(赤盤)ベネズエラ ラウドカット!!!” というタイトルが目に飛び込んできた。これって私の爆音好きを知っているSさんが「ラウドカット」に “!” を3つも付けて煽っておられるのだろうか?(←そんなアホな...) ウルグアイ以外の南米のレコードは音作りの面で私の嗜好と合わないケースが多いので普通ならベネズエラ盤なんてスルーするのだが、ラウドカットとなると話は別。しかも “2枚とも独自カッティングで大変音が良く大きいことに驚く” “盤は2枚ともEX以上で大変コンディションが良い” と書いてあるので音の方は大いに期待が持てそうだし、クソ高い送料を払ってようやく手に入れた盤が針飛びした... などという悲惨な体験をしなくて済むのもいい(←トラウマになっとるな...)。
 それと、そのレコードが「赤盤」というのも大きなポイント。人にはそれぞれ思い入れの強いレコードというのがあると思うが、私の場合、生まれて初めて買ったビートルズのレコードが「赤盤」であり、今の自分があるのは我が音楽人生の原点とでも言うべきこのレコードのおかげと言っても決して過言ではないのだ。そんな「赤盤」を大好きなラウドカットで聴けるチャンスをみすみす逃せるワケがない。
 ということでいつもならすぐにでもお店に飛んでいくところだが、実はその数日前から右膝が痛くて職場でもびっこを引いて歩いているぐらいなのでとてもじゃないが三条通りの長~い坂道をお店まで歩いていく気力はない。医者は死ぬほど嫌いだがこのまま放っておいてレコードが売れてしまっては元も子もないので仕方なしに整形外科を受診。“仕事に差し支えるので何とかして下さい。”と泣きつき(←まさかレコ屋に行けなくて辛いなんて言えへんわな...)膝に注射を打ってもらってようやく痛みがマシになったので、病院帰りに早速B-SELSへと直行。ご存じのようにB-SELSは雑居ビルの3Fにあるのだが、今までつかんだことのない手すりにつかまりながらえっちらおっちらと階段を上がり、ようやく3Fに辿り着くことができた。
 お店に入って “今日はベネズエラの「赤盤」を聴かせて下さい。” と言うとSさんは “???” という顔をされた。確かに最近は南ローデシアや南アフリカのモノラル盤ばかり立て続けに買っていたのにいきなり「赤盤」を聴かせてくれでは不思議に思われるのも無理はない。“ラウドカットと聞いてこの私が大人しくしてるわけないじゃないですか!” というとなるほどという顔をされ、レコードをターンテーブルに乗せられた。
 Sさん:これ、ホンマに音デカいですよ。
 私:なんかワクワクします。(A①「Love Me Do」のイントロが流れる...)うわぁ、音デカっ!!!
 Sさん:でしょ?
 私:これいつもと同じヴォリューム位置ですよね?
 Sさん:ええ、そうです。独自カットですけど、こんなラウドカットの赤盤なんて他に知らないです。
 私:僕もですよ。でも曲によってバランスが違いますね。
 Sさん:そうなんですよ。
 私:疑似ステ系の音はどうしても不自然さまで強調されてしまってて違和感があります。
 Sさん:確かに。
 私:A面ではA⑤「I Want To Hold Your Hand」が断トツに良いですね。ここから急に熱量が上がった感じがします。
 Sさん:B面気をつけて下さいね。いきなり凄い “ジャーン!!!” がきますから。
 私:(B①イントロ爆裂...)ひょえ~、これはエグい...
 Sさん:でしょ? 実はこのレコードはレーベルのデザインが通常盤とは逆なんです。だから初めてかけた時にグリーン・アップルの面に針を落として「Love Me Do」がかかると思って油断してたらいきなり「A Hard Day's Night」の “ジャーン!!!” がきたんでビックリしました(笑)
 私:ハハハ... 確かに「Love Me Do」のノホホンとしたイントロを待ってていきなり「A Hard Day's Night」の“ジャーン!!!”が爆裂したら腰抜かしますわ。しかも予想もしてないラウドカットで...(笑)
 Sさん:そうなんですよ。あの時はホンマにビックリしたなぁ...(苦笑)
 私:それにしてもこの「A Hard Day's Night」、めっちゃエエですやん!
 Sさん:気に入っていただけましたか。
 私:もちろん!!! B②「And I Love Her」やB⑥「Yesterday」もアコギをつま弾く指先に力強さを感じますし、B③「Eight Days A Week」のノリもハンパないです。A面と違ってこのB面はどのトラックも文句ナシですね。
 Sさん:ベネズエラ、独自路線を貫いてます。
 私:C面もエエ感じですね。日記に書いてはったように盤質もエエですし。
 Sさん:全体的に左チャンネルの音の方が強いので、曲によっては右チャンネルのヴォーカルやコーラスが埋もれがちになりますね。ただ、ベースは強烈です。
 私:D面いきなりD①「Nowhere Man」エグいです。それにしてもD面の曲の配列は見事としか言いようがないですね。自分は「赤盤」で育ったようなもんなんで、未だに「In My Life」の次は「Girl」、そして「Girl」の次は「Paperback Writer」の方がしっくりくるんですよ。
 Sさん:なるほど。
 私:いやぁ~、これめっちゃ気に入ったんで買いますわ。今日はホンマに無理して来てよかったです。脚引きずって歩いてきた甲斐がありましたわ。
 Sさん:えっ、どうされたんですか?
 私:膝関節症とかいうのになっちゃいまして。実は今日注射うってもらって何とかお店に来れたんですわ。
 Sさん:脚引きずって注射うってまでレコード買いに来る人なんていませんよ(笑)
 私:ここにいてますやん(笑) ビートルズ聴いてたら痛みなんて忘れますわ。私にとってはビートルズが最高の薬なんです。
 Sさん:ハハハ、shiotchさんらしいですわ。